南アフリカ共和国:ジンバブエ人難民に対する人命軽視の継続 MSF、新しい報告書『避難所も医療もない:南アフリカ共和国におけるジンバブエ人の医療・人道ニーズ』を発表

2009年06月02日掲載

国境なき医師団(MSF)は本日発表した報告書「避難所も医療もない:南アフリカ共和国におけるジンバブエ人の医療・人道ニーズ」において、暴力、性的暴力、苦悩、劣悪な生活環境と必要不可欠な医療へのアクセス欠如が、南アフリカに避難した数千人のジンバブエ人の置かれた状況を表していると警告する。

ジンバブエと南アフリカにおける昨今の展開は、多くのジンバブエ人が命懸けで南アフリカへ逃げ出す状況にほとんど変化をもたらしておらず、国境を越えたジンバブエ人を待ち受ける日常的な生活環境の改善につながってもいない。MSFは南アフリカ政府と国連機関に対し、南アフリカ社会の狭間で弱い立場に置かれたジンバブエ人が個々に抱えている人道上のニーズに、早急に対処するように訴える。

南アフリカにおけるMSFの活動責任者、レイチェル・コーエンは語る。「ジンバブエが正常化しつつあるという主張に反して、数千人のジンバブエ人が経済破綻、食糧不足、政情不安、医療制度の完全な崩壊を逃れて南アフリカへと越境し続けています。切実に必要な避難所を見つけるかわりに、彼らは南アフリカへの途上と南アフリカ国内で耐え難い苦難にあっています。」

2007年以来、MSFは南アフリカに避難したジンバブエ人を対象に基礎一次医療を行うほか、二次医療機関や専門医療機関への患者の搬送、暴力の被害者や流行性疾患の患者に向けた緊急医療、特に性暴力の被害者を対象としたサービスや、保護者の同伴がない未成年のケアを行っている。MSFの医療チームは、国境付近にあるムシナ町と、数千人のジンバブエ人にとって安全地帯であるヨハネスブルクのセントラル・メソジスト教会において、毎月4~5千件の診察を行っている。

南アフリカにおけるMSFの医療コーディネーター、エリック・ゴメール医師は語る。「私たちは毎月、ヨハネスブルクとムシナ町で数千人のジンバブエ人を診ています。彼らは、病気にかかり、負傷し、心の傷を負い、社会から取り残されています。ほかに頼れるところがないため私たちのところに来ているのです。私たちの診療所に来る人の多くはHIVや結核といった慢性疾患にかかっており、また暴力による怪我を負っています。多くは越境の際に受けたレイプや性的暴行によるものですが、南アフリカ国内で受けたものもあります。2008年にヨハネスブルクにある私たちの診察件数は対前年比で3倍になりました。ジンバブエ人が生き延びるために必要である最も基本的な医療すら常に受けることが出来ない状況を示しています。」

南アフリカ共和国憲法は医療とその他の必須サービスを受ける権利を法的地位に関わりなく、難民、避難民、移民を含めた同国内で生活する人全てに保証している。しかし現実には、ジンバブエ人の患者はその場で治療を拒否されるか、莫大な医療費を請求されたり、長く待たされたり、不適切な治療を受けさせられたり、治療不十分なうちに退院させられたりするなど、ジンバブエ人の多くにとって医療は手の届かないものとなっている。

ヨハネスブルクにおけるMSFのプログラム・コーディネーター、ビアンカ・トルブーム看護師は語る。「患者の話は衝撃的の一言につきます。妊娠中の女性、意識不明や危篤状態の患者、レイプされた6才の少女など全ての人が、緊急に必要な医療ケアを拒否されたのです。嘆かわしい事態です。医療倫理に反しています。そしてこれは南アフリカ共和国憲法で規定されている彼らの権利を脅かすものです。この悪夢ともいえる人命軽視に、終止符を打たなくてはなりません。」

MSFはムシナ町において、増えつつある性暴力の被害者の治療にあたっている。今年4月に治療を受けた患者の半数以上は集団レイプの被害者であり、そのうち70%は銃やナイフもしくはその他の武器で脅された状態で被害にあった。もう1つの懸念すべき傾向は、ジンバブエから保護者無しで越境してくる未成年の急増である。彼らは500km以上南下して、約4千人のジンバブエ人が毎晩寝場所を求めるセントラル・メソジスト教会にたどり着く。建物内部のいたるところで足の踏み場もないくらい寝ているか、教会の外の歩道で眠る。現在、保護者のいない子どもたちは150人を超え、7才~18才の子どもたちがセントラル・メソジスト教会に詰め込まれている。彼らは非常に弱い立場にあり、南アフリカにおける暴力にさらされている。しかし、これらの子どもたちが適切な援助と保護がなされることについて実効性のある解決策は見出されていない。

コーエンは語る。「MSFチームは日々、弱い立場にあるジンバブエ人の人道上のニーズを満たす面において、南アフリカ政府と国連機関の失策を目にしています。2009年4月、南アフリカ内務省は国内にいるジンバブエ人に対して法的地位を付与し、強制送還を止める制度を設立したと発表しました。これは、いやがらせ、逮捕、強制送還といった、南アフリカ政府が過去にとってきた政策から方向を転換する歓迎すべき施策です。しかし、これらの措置は、ジンバブエ人の生活を実質的に改善するところまではいっていません。唯一安全を確保できる場所は(警官出動や近隣の事業者による抗議活動などによって)脅かされており、社会の影として軽視されたままであり、不衛生な状態での生活を余儀なくされ、適切な援助や保護を受ける道を閉ざされているのです。」

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