イエメンで初の新型コロナウイルス感染者 MSF、行政当局に対応加速を要請

2020年04月13日掲載

中東のイエメンで4月10日、新型コロナウイルスの初の感染者が確認された。世界各地で感染者の報告が相次ぐ中、イエメンはこれまで全く感染者が報告されていなかった。背景には国内の検査体制不備があるとみられる。国境なき医師団(MSF)は、イエメンの複数の行政当局に対し、海外からの援助物資と援助スタッフの受け入れを認め、感染拡大防止策を加速するよう要請した。 

イエメン北部アムラン州ハミール郊外の国内避難民キャンプには数百の家族が紛争が始まった2015年から身を寄せる。密集した不衛生なキャンプでは新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される=2019年4月撮影 © Agnes Varraine-Lecaイエメン北部アムラン州ハミール郊外の国内避難民キャンプには数百の家族が紛争が始まった2015年から身を寄せる。密集した不衛生なキャンプでは新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される=2019年4月撮影 © Agnes Varraine-Leca

新型コロナ対策に追いつかない国内の医療体制

イエメンでは地域によって異なる行政機関や勢力が新型コロナウイルス感染症の対策をそれぞれ講じてきたが、5年に及ぶ紛争で国内の医療体制は崩壊し、満足な対策を行えていない。MSFも当局と連携して対応の計画を進めてきたが、追加スタッフや物資を現地に運べなければ、かなり限られた範囲でしか患者を受け入れられない。

国内の数少ない病院や診療所にも、集中治療態勢は整っていないため、最重症例の治療は難しい。どこも戦闘負傷者を治療し続ける一方で、その他の医療ニーズに応えているため、短期間でコロナウイルス感染症患者の治療はゆきづまる事態が予想される。

MSFは南部アデンと首都のサナアの両市で当局を支援し、新型コロナウイルス感染症治療センターを設置した。しかし現状ではこれら以外に国内に治療センターはほぼ皆無で、医療スタッフの給与に充てる資金すら足りていない。
 

最もリスクの高い国の支援が急務

MSFのオペレーション・マネジャーを務めるキャロリン・セガンは、「医療スタッフ用の保護具と検査キットを大至急イエメンに輸入して国内の医療機関と援助団体が使えるようにしていく必要があります」と話す。

こうした保護具と検査キットの不足は世界的な傾向だが、在庫分配にあたっては、イエメンのような国が最も高リスクであることを念頭に考慮されなければならない。またこうした国で感染が拡大しないよう、国際社会が強調して、人道援助従事者の移動に協力する必要がある。

セガンは「現地のMSFスタッフの90%がイエメン人であることはMSFの強みですが、スタッフは既に限界を超えて働いているため、継続的な追加支援が必須となっています。MSFはイエメン入りするすべてのスタッフに14日間の自主隔離を義務づけて感染拡大を防ぎます」と訴える。

新型コロナウイルス感染症は都市部・避難民キャンプのような人口密集地で急速に広まる可能性がある。イエメンでは郊外には医療機関がほとんどないため、検査や接触者追跡、隔離などの公衆衛生策も講じられず、対応は困難を極めるものと予想される。

MSFはイエメン国内13県で活動。2007年以来同国に常駐している。
 

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