ガザ地区:銃創患者の増加に治療が追いつかず——感染症や障害のリスクも

2018年11月30日掲載

中東パレスチナのガザ地区では、抗議活動中にイスラエル軍に銃撃された患者の増加が医療を圧迫している。複雑で重度の銃創を負った患者は数千人にのぼるが、治療は追いつかず患者は感染症や障害のリスクにさらされている。国境なき医師団(MSF)はイスラエルとパレスチナ当局に医療活動や患者搬送の自由を求め、周辺国や国際社会には資金援助や外科治療体制の提供を呼びかけている。
 

撃たれた脚の感染処置を受け次の手術に備える青年。脚は完治しないことがわかり希望も失っている © Alva Simpson White/MSF撃たれた脚の感染処置を受け次の手術に備える青年。脚は完治しないことがわかり希望も失っている © Alva Simpson White/MSF

今の医療体制では荷が重過ぎる

ガザ保健省によると2018年3月30日から10月31日の間の負傷者は5866人に上る。MSFはそのうち3117人を治療してきたが、大多数は実弾で脚を撃たれており、約半数に開放骨折があり、残りは軟組織を激しく損傷している。

このような複雑な外傷は適切な治療を受けなかった場合、障害が残る、もしくは感染症を引き起こすと脚の切断や死に至る場合もある。ガザには対応できる医療施設は限られており、適確な骨感染の診断もできないが、MSFは開放骨折患者のうち少なくとも25%は感染症に陥っており、全ての銃創患者のうち少なくとも60%は 追加の手術、理学療法、リハビリが必要とみている。また再建外科手術を必要とする患者の割合もかなり高いとみられるものの、感染症の処置が先に必要であり、10年以上封鎖に苦しめられてきたガザの今の医療体制には荷が重過ぎる。

MSFや他の医療団体は懸命に患者の治療に当たっているが、医療ニーズはそれ以上に大きく、活動の継続性も危ぶまれている。銃撃される人は増えており、事態に適切に対応しようとすれば、数千万ユーロ(約数十億円)の費用が必要だ。 

医療活動と移動の自由必要

パレスチナでMSFの活動責任者を務めるマリー=エリザベス・イングレスは訴える。「MSFは既にガザでの活動態勢を3倍に増やしていますが、外科診療、安全な抗菌薬投与、集中看護、長期にわたる理学療法とリハビリが必要な患者の数は圧倒的です。これほどの患者数は世界最高の医療体制でも対応しきれないはずで、ガザでは言うまでもありません」

MSFは現在260名のスタッフが4つの病院と5つの術後ケア診療所で活動しているが、ガザの医療施設には、医薬品や医療機器、専門の外科チームなど、さらなる支援と全ての患者が治療を受けられる体制が必要とされている。

「今必要なのはイスラエルとパレスチナ当局が医療従事者の活動と移動の自由を確保することです。そうすれば、ガザにいる医療団体は高度な治療施設を建設して人びとの治療に当たることが可能です。また当局には患者を速やかに国外医療搬送できるよう尽力してほしいと思います。さらに中東の周辺国や世界各国には、資金援助のほか、高度外科治療が可能な自国内の医療施設を融通してほしいと思います。数千の人びとがひどいけがをして、一生障害が残るという不条理を解決しなければなりません」 

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