エボラ出血熱の関連死は1200人以上に 不信と暴力行為で状況は悪化【情報まとめ】

2019年06月05日掲載

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)で流行が続くエボラ出血熱は、状況が悪化しており、2019年5月22日現在で1200人以上の関連死が報告されている。2019年2月にカトゥワとブテンボのエボラ治療センター(ETC)が襲撃を受け、国境なき医師団(MSF)は両市から撤退した。それ以来、MSFはETCを運営しておらず、エボラ感染確定患者への治療も行っていない。一方で、予防と、感染疑い例の治療活動には引き続き積極的に携わり、1次受入施設の運営と、エボラの影響下にある保健医療施設の支援を行っている。 

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止まない不信と暴力行為

2019年2月に襲撃されたカトゥワのエボラ治療センター © MSF2019年2月に襲撃されたカトゥワのエボラ治療センター © MSF

エボラ対策への不信は依然として続いており、暴力を伴う加害行為もおさまる気配がない。そんな深刻な情勢不安が流行抑止のための対策を阻み、進展に悪影響を及ぼしている。人びとはETCでの受診を避け、感染が拡大する恐れが増している。

5月上旬には軍と武装勢力との戦闘があり、4月にはブテンボ市で世界保健機関(WHO)所属医師が殺害された事件が起きた。こうした暴力と混乱のせいで多くの活動が中断している。流行の中心地であるブテンボ市とカトゥワ市では、感染者と接触した人、その接触した人と接触した人、そして最前線のスタッフへのワクチン接種が、担当チームの安全への懸念を理由にたびたび中断させられている。

MSFは活動の一環として、エボラだけでなく保健医療全般の体制を支援し、トリアージ(※)や感染予防・制御活動を実践・強化している。さらに、健康教育や、地元住民のエボラ対策への関わりを促進する活動もしている。そして、ゴマ市などMSFが運営している通常プロジェクトの現場で調査監視体制の強化も目指す。

※ 重症度や緊急度などにより治療の優先順位を決めること 

これまでの数字(2019年5月22日現在)

流行宣言以降の症例数合計:1877例(確定症例1789件、ほぼ確実例88件※)
死亡した人数:1248人(確定例1160件、ほぼ確実例88件)
治癒した患者数合計:490人
ワクチン接種を受けた人の合計:12万2695人

※ 「ほぼ確実」は、エボラ確定例と関連があったが専門施設外で死亡した例で、埋葬前に検査できなかった人。 

MSFの役割

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MSFは2018年8月1日の流行宣言以降、エボラ流行へ対応してきた。2019年5月現在、ETCの運営はしていないが、今回の流行では積極的な活動を続けている。今後の見通しについての議論も、内外で続いている。

MSFが活動の主な目標とするのは、流行地域の住民のニーズを見定め、エボラ以外の傷病のための保健医療を確保し、エボラ関連の活動を現在の保健医療体制に組み込むために、地域社会とより緊密に連携することにある。

地元での健康教育、感染予防・制御、隔離機能の確立に加え、地域の人びとを対象とした一般的な疾病の治療や給排水・衛生環境の改善など、エボラに関係のない援助も提供している。治安状況も見守っている。ETCの襲撃が起きたブテンボとカトゥワでの活動再開は、管轄当局との合意と安全性の判断によるが、今のところ安全とはいえない。

MSFは現在、流行地域である北キブ州とイトゥリ州で下記の活動を行っている。 

ゴマ市

MSFはゴマ市内のETCで緊急対応を支援している。調査監視の体制を強化するととともに、感染の疑われる患者の隔離に必要な機能を確保するとともに、地域一帯で健康教育と、地域住民の参加を募る活動も行っている。 

イトゥリ州ブニア、コマンダ、マンバサ

3市で、診療所と周辺地域の感染予防・制御を支援している。コマンダでは8診療所、ブニアは10診療と2つの総合中核病院、さらに、コマンダ、ブニア、ルワンパラの3ヵ所で地元密着型の感染予防・制御活動を行っている。

また、複数の1次受入施設で健康教育を行うとともに、地元住民と連携し、話し合いや現行の対応支援を行っている。ブニアの1次受入施設は、16床と確定患者用の隔離ベッド6床があり、5月10日までに235人の患者に対応した。コマンダの1次受入施設は20床で、対応した患者合計134人(4月12日以降は業務を休止している)。マンバサ総合中核病院では、隔離機能の導入を支援している。 

イトゥリ州ビアカト

診療所と周辺地域の感染予防・制御および給排水・衛生(トイレなど)を通じた予防活動を行っている。治療活動では、 4つの診療所で主要な疾患の治療、感染疑い例の特定・対応、採血を支援している。 

北キブ州ルベロ、カイナ、ベニ

予防活動として、各病院・診療所でトリアージ、隔離、感染予防・制御、健康教育を行っている。治療活動では、エボラ以外のケアの支援、およびエボラ検査の結果を待つ感染疑い患者への支持療法をしている。ルベロでは総合病院と5つの診療所、カイナの総合病院と、ベニの5つの診療所で支援を続けている。 

現地コミュニティとの信頼関係が必須

ブテンボの治療センターで、ご遺体を棺おけに入れるスタッフ © Alexis Huguetブテンボの治療センターで、ご遺体を棺おけに入れるスタッフ © Alexis Huguet

コンゴにおける今回のエボラ流行はおよそ10ヵ月続いており、流行地域の状況は悪化し症例数も増え続けている。5月22日までに報告された症例は1800例以上。エボラによるものであることが確認された死亡例は1160例となっている。特に懸念されるのは、疫学的状況の実態が見通せない点だ。エボラ対策への不信感と、それにかかわる治安状況の悪化により、通報があってもチームが迅速に現場入りできず、調査や接触者の追跡などでも、活動に大きな制限が生じている。

こうした状況を受けて調査監視活動はさらに弱まり、5月19日の週には、新規確定例の80%以上が、既存の患者と接触歴があったとして特定されず、追跡もされていなかった。この週はすでに相当数の新規症例が報告されていたが、実数はさらに多い恐れがある。

また、5月19日の週の新規症例の約半数が専門施設外での死亡例だった。これは、自宅またはエボラ専門治療施設ではない一般の保健医療施設で亡くなっているということだ。専門施設外のエボラ死亡例は大きな感染リスクを生むだけでなく、エボラ対策への不信感を改めて示すものである。 

地域の住民にエボラに関する健康教育をし、信頼関係を築く © Alexis Huguet地域の住民にエボラに関する健康教育をし、信頼関係を築く © Alexis Huguet

エボラ対策に携わる者と、地域の住民との間に信頼が築かれなければ、この大流行の終息は望めない。地元の人びとのニーズに耳を傾け、人びとが健康管理をする上での選択肢を作り、エボラ対策に、人びとが積極的に協力できるよう促していくことが重要だ。

エボラのケアを、地域で提供される総合的な保健医療に組み込まなければならない。そして、人びとの生存率を高め、感染リスクを減らすために住民のニーズに応え、信頼を得て、新規症例の早期発見を促すには、エボラ対策の関係者らが現地の診療所を十分に支援し、トレーニングや物資面での支援、感染疑い例の識別指導、検査結果を待つ人の隔離などを行っていく必要がある。 

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