エボラ流行から3ヵ月 現地ではMSFの対応が続く【情報まとめ】

2018年11月06日掲載

マンギナの診療所でエボラ対応の準備をするMSFの衛生専門家 © Carl Theunis/MSFマンギナの診療所でエボラ対応の準備をするMSFの衛生専門家 © Carl Theunis/MSF

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の北東部で続くエボラ出血熱の流行に、国境なき医師団(MSF)は対応を続けている。北キブ州とイトゥリ州のエボラ治療センターでは、感染患者の治療とともに、感染制御と予防、除染と消毒、トレーニングなどを通じた支援を進めている。8月1日にコンゴ保健省がエボラ流行宣言を出してから約3ヵ月。これまでの症例数やMSFの対応をまとめた。 

これまでの数字(2018年10月25日現在・コンゴ保健省発表)

合計症例数:251 件(確定例 216件、および ほぼ確実※例35件)
確定例のうち、死亡した人数: 162人(確定例 127件、および ほぼ確実例35件)
治癒者数合計:67人
活動中のMSFスタッフ:100人 (北キブ州とイトゥリ州のエボラ・プロジェクト)

※「ほぼ確実」は、この地域で亡くなった人のうちエボラ確定例と関連があったが埋葬前に検査できなかった人。
 

現在の状況

これまでに、北キブ州とイトゥリ州内にある10の保健区域(マンディマ、マバラコ、ベニ、オイシャ、ブテンボ、カルングタ、コマンダ、マサレカ、ミュジヤンエーヌ、チョミアでエボラの確定例、またはほぼ確実例が報告されている。

現地は今回の流行で2度目のピーク期を迎えている。流行の中心はもともとの発生地であるマンギナ村から大都市ベニに移り、10月に入って確定例が目に見えて増加。北キブ州では9月、症例数が減少していると見られていたが、現在、状況はより深刻になっている。

今回の流行でもうひとつ懸念されるのは、広い地域で散発的な流行が繰り返し起きている点だ。イトゥリ州の州都ブニアから60km南にあるチョミアでは、9月20日に新たな症例が発見されたほか、ブニアの東45kmにあるコマンダでも新規症例が出ている。チョミアの病院で亡くなった感染患者の一人はベニで感染したとみられ、そのまま数十キロ北へ移動していた。ウガンダ国境にも近いため、隣国に飛び火する恐れも強まっている。

コンゴ保健省と世界保健機関(WHO)の疫学チームは、ウイルスに接触した人の追跡調査と経過観察を続けている。ただ、調査は一筋縄ではいかない。感染地の人びとは仕事や家庭の事情で移動が多く、村から村へと渡り歩いている。そのため医療機関もいろいろな場所で受診する。エボラの疑い例と分かり治療センターに搬送されるまでに、2ヵ所以上の診療所を受診していることが多い。流行の始まり以来、特定された接触者は8000人余り。現在2700人以上が保健省による経過観察を受けている。

MSFのエボラ対応と役割

コンゴ保健省の要請を受け、MSFはエボラ対策の調整とともに、感染者の治療を担っている。また、防護服の装着方法や感染予防・制御、トリアージ※などの訓練と、疫学的調査・監視活動も支援している。

※重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること

隔離病棟と治療センター

マンギナの診療所で活動するMSFスタッフ © Carl Theunis/MSFマンギナの診療所で活動するMSFスタッフ © Carl Theunis/MSF

今回の流行を受け、発生地であるマンギナの診療所内に現地スタッフが急いで隔離室を設置したが、MSFはまずその改善に取り掛かった。疑い例と確定例を受け入れ、治療センターの建設が進む間、患者はここに隔離されて治療を受けた。その後、最初のエボラ治療センターを8月14日に開院。マンギナでの患者数減少と流行の中心が別の地域に移ったため、当初68床あったベッドを、現在24床に減らしている。

MSFはベニでも隔離室を設置していたが、これは保健省に移譲し、現在では治療センターとなって他NGOが受け持っている。

ブテンボでは、MSFが建設・運営する2つ目のエボラ治療センターが稼働を開始。ブテンボは約100万人が住む町で、ベニで感染してから移動してきた患者もいる。MSFはまず現地の病院内に隔離室を設置し、その後、エボラ治療センターを建設した。このセンターは9月20日に開院、MSFと保健省が共同で運営している。

ウガンダとの国境にあるアルバート湖付近、イトゥリ州チョミアでも確定例が出たため、MSFは10月12日に3つ目のエボラ治療センターを開院。現在、センターで働く保健省職員を訓練して専門技術を教えている。

北キブ州との境界に開設したマケケ一時滞在センターでは、疑い例を隔離してエボラウイルスの検査を行っている。ベッド数は7床で、陽性反応が出た患者はマンギナかベニのエボラ治療センターに移送される。マケケでコンゴ保健省と国際医療団体のInternational Medical Corps(IMC)がエボラ治療センターを新設したため、MSFのセンターは活動を終了した。

開発中の薬による治療

開発中の薬を使った治療がガイドラインに則って行われている © Carl Theunis/MSF開発中の薬を使った治療がガイドラインに則って行われている © Carl Theunis/MSF

エボラ治療センターでは対症療法を充実させている。経口あるいは点滴による水分補給、マラリアなど他にも感染している病気の治療を追加するほか、感染が確認された患者には、承認前の新しい治療薬をガイドラインに沿って勧めている。臨床医チームが随時、5つの候補薬(ファビピラビル、レムデシビル、REGN3470-3471-3479、ジーマップおよびmAb114)から治療薬を選び、患者、または家族へのインフォームド・コンセントで合意が得られた場合にのみ、対症療法に加える形で行われる。

この5つの治療薬はまだ臨床試験が済んでおらず、有効性は未知数だ。それでも、患者の回復につながる可能性があるため、保健省とMSF双方の倫理委員会の承認を受けた上で、厳格なプロトコルに従って使用されている。特に重視されるのは患者へのインフォームド・コンセントだ。正式な臨床試験の実施に関する協議は、現在も続いている。

感染予防と制御

エボラ治療センターでの治療に加えて、MSFは感染の予防と制御にも注力している。マンギナとベニで陽性例が出た医療施設では、除染・消毒作業を行い、さらにイトゥリ州でもマンバサとマケケ、ブニアからチョミアまでの地域で活動している。医療施設を訪問し、スタッフを訓練して適切にエボラ疑い例のトリアージを行えるようにするほか、隔離室も必要に応じて設置できるようにしている。

さらに、北キブ州とイトゥリ州内にあるMSFの全てのプロジェクトで、防護服などのエボラ対応備品を準備し、適切な衛生・感染制御ガイドラインを導入。患者を感染リスクから守り、流行拡大を防いでいる。

緊急チームの立ち上げ

エボラ対応は、いかに素早く反応して調査し、活動の体制を組めるかが鍵となる。そのためMSFは、医師、看護師、給排水・衛生活動の専門家で構成される緊急チームを編成した。9月9日には、陽性例の報告を受け緊急チームが北キブ州に派遣され、ルベロ近郊のルオトゥ村で症例調査を行うとともに、感染疑い例を受け入れるため、現地の医療施設内に小さな隔離室も建設した。当初報告された陽性の患者は、医療施設に入院後に自宅で亡くなったため、医療スタッフや家族への接触感染の恐れがあった。幸い、確定例はなかったため、MSFは9月27日にこの施設を保健省に移譲した。緊急チームは、チョミアで最初の確定例が現れたときも現場へ急行した。 

予防接種と健康教育

北キブ州からイトゥリ州への感染拡大防止のため、州境の地域で医療スタッフ、宗教指導者、埋葬人など、感染リスクの高い人に予防接種を実施。マンギナで暮らす住民はイトゥリ州へ行く人が多いことから、予防接種で州を越えたさらなる感染拡大の防止が期待されている。これまでに、感染リスクの高い360人がMSFによる予防接種を受けた。10月18日、MSFはベニでも感染リスクの高い人を対象に予防接種を開始した。こうした活動は地域社会との調整が重要となるため、MSFの健康教育チームが地域のリーダーと連絡を取り、エボラについて、地域の状況についての情報交換を行っている。 

疫学的調査と監視

MSFは、コンゴ保健省とWHOによる疫学的調査と監視活動の戦略決定をサポートしている。また、各現場の医療施設をスクリーニングしている。 

周辺国でも緊急事態に備える

ウガンダにいるMSFチームも、国境を越えて流行する事態に備えている。国境近くの小さな町ブウェラでは、隔離病棟用テントを設置。ウガンダの通常のプロジェクトでも、隔離病棟用テントを張った。また、MSFは南スーダン政府も支援してエボラが南スーダン国内で発生する事態に備えている。 

エボラ対応の課題

北キブ州のベニでは10月初めから症例数が激増した。新規症例の多くは他のエボラ患者の接触者リストに載っていない患者だ。ウガンダとの国境にあるアルバート湖地域に流行が広がっているのも懸念される。

現地で続く情勢不安により、流行の封じ込めが難しくなっている。ベニでは9月22日に襲撃事件が起こり、医療活動が全面的に停止した。この間は、エボラ患者の接触先の経過観察が不可能になった。また、危険で立ち入れない「レッド・ゾーン」ではエボラ患者の接触先を追うことは難しい。医療従事者に対する暴力もかなり深刻である。特に、感染制御のための安全な埋葬を行うチームは、埋葬方法が現地の伝統に反した形であるため、地域社会への説明が非常に難しい。

エボラ対応では、地域社会の信頼を得ることが重要だ。だがコンゴでは、長年の紛争により、住民の当局への不信感が根強くある。恐怖や抵抗を感じている人びとに対し、なぜエボラ治療センターに来ることが重要なのか、治療に来れば、愛する家族や友人を感染から守ることができると納得してもらうこともMSFの仕事だ。これは地域社会との良好なコミュニケーションを通じて初めて実現する。MSFは特に流行の中心となっているベニで、地域の信頼を得るための努力を続けている。

MSFのエボラ対応の流れ(10月25日現在)

7月30日

北キブ州ベニ/マンギナのエボラ疑い例について連絡を受ける

7月31日

ルベロで活動していたチームから、調査チームがコンゴ保健省に同行する形で現地に入り、調査を開始。  

8月1日

保健省がエボラ流行を宣言  

8月1~3日

保健省の基本計画に基づき、流行対応の準備をする。  

8月6日

隔離病棟をマンギナの拠点病院に設置。防護服装着方法や感染予防・制御、トリアージ※などの訓練を開始。(※重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること)  

8月7日

国立医生物学研究所の遺伝子解析結果から、流行しているウイルスが、最も致死率が高いザイール株であること、2018年前半に赤道州で報告された菌株とは異なることが確認された。 

8月8日

WHOの監督の下、流行に対応する医療従事者への予防接種が始まる。  

8月13日

 イトゥリ州マンバサで症例が発見され、MSFチームが現地に入る。

8月14日

エボラ治療センターをマンギナで開院。37の疑い例と確定例が同日に入院。設計当初ベッド数は30床だったが、すぐに68床にまで増床。必要であれば最高で74床まで増床できるようになった。地域の診療所と、そのほか確定例を受け入れた診療所の除染・消毒も行った。 

8月24日

マンギナの治療センターで基準に該当する患者に治療薬の提供を開始。  

8月28日

マケケに一時滞在センターを開院。  

9月2日

マンギナの南、ブテンボの町で疑い例が発見され、MSFが調査に入る。  

9月4日

ブテンボの症例が確定。 

9月5日

小規模な隔離センターの設置を始め、感染疑いの患者の搬送と、死亡例のあった地域の医療施設の除染を支援。 

9月8日

ブテンボで隔離センターを開院後、エボラ治療センター建設も開始。 

9月9日

緊急チームを北キブ州に派遣、ルベロ近郊のルオトゥ村で症例を調査。 

9月19日

マケケ一時滞在センターの活動を終了。 

9月20日

保健省と連携して、ブテンボにベッド数28床のエボラ治療センターを開院。 

9月22日

ベニで、ウガンダの民主同盟軍(ADF)とみられる勢力に攻撃を受け、少なくとも19人が死亡(うち14人は民間人)。エボラ対応が実質的に停止。 

9月24日

確定例2件の報告を受け、イトゥリ州アルバート湖付近にあるチョミアにチームを派遣。隔離室を設置し、保健省と共同でベッド数12床のエボラ治療センター設置を準備。 

9月27日

新規症例が出なかったことを受け、ルオトゥ村での活動を終了。 

10月12日

チョミアでエボラ治療センターを開院。 

10月17日

WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」にあたるか協議を開始。この時点ではPHEIC宣言は出さない決定。ベニで感染リスクの高い人医療従事者を対象にエボラの予防接種を開始。

10月20日

ベニでADFによるとされる攻撃が再発。 少なくとも12人が死亡。また、報道によると10人がこのとき拉致された。22日には全ての活動を通常通り再開した。 

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