2012年～2013年の紛争で束の間、国際社会から注目が集まったマリ北部。
その後は特に顧みられることもないまま、不安定な状況が続いている。
医療不足が深刻で、国境なき医師団（MSF）がマラリアの化学的予防治療を行っている。

マラリアはマリの風土病だ。5歳未満児の入院および死亡の最大の原因でもある。
2014年8月上旬から10月中旬までに、MSFがガオ州アンソンゴの16保健区で治療した子どもたちは3万8000人に上る。

さまざまな事情で、病院に来られない人びとがいる。
地域の保健担当者とMSFスタッフで構成した移動診療チームが、都市部から遠く離れた地域に出向き、診療を行う。

地元の診療所には、薬剤配給チームがスタンバイしている。
地域の母親たちが、子どもを連れて薬を受け取りにやってくる。

薬を受け取る際には、地域の保健担当者から母親に、薬の正しい飲み方が伝えられる。
服用回数を守らなかったり、勝手に服薬を中断したりすると、かえって症状が悪くなる場合があるからだ。

マラリアの化学的予防プログラムでは、スルファドキシン／ピリメタミン合剤とアモジアキンを併用する。
これらの薬を子どもが飲みやすいように砕き、水と砂糖と混ぜる。

薬剤配給チームがその場で、1日目の投薬を行う。
母親はその様子を見て、方法を学ぶ。
残り2日分は母親に託される。自宅で子どもに飲ませるのだ。

化学的予防プログラムの対象の子どもには、健康カードが発行される。
カード情報をもとに、スタッフはプログラム期間中（4ヵ月）の経過を追う。

地域の有力者もマラリアの化学的予防プログラムに積極的に参加している。
活動の立ち上げに協力し、住民への普及を促している。

今回の活動では、子どもの栄養失調などマラリア以外の病気の検査・治療も行った。
子どもの健康状態を総合的に向上させるためだ。