幼い娘が高熱と下痢、脱水も—途方に暮れる家族がたどり着いた小児病棟

2018年05月08日掲載

MSFの小児病棟に入院し治療を受けるバヤンちゃん
MSFの小児病棟に入院し治療を受けるバヤンちゃん

生後18ヵ月のバヤンちゃんは重度の脱水症状と下痢で、高熱も出ていた。1週間近く、ぐったりしてほとんど食べず、何か口にしても吐いてしまうため、両親は医師に相談することにした。バヤンちゃんは、レバノン東部のベッカー高原、ザーレにあるイリアース・ハラーウィー国営病院内で、国境なき医師団(MSF)が運営する小児病棟に入院した。

バヤンちゃんの一家はシリアから避難し、レバノンの難民キャンプで暮らしていた
バヤンちゃんの一家はシリアから避難し、レバノンの難民キャンプで暮らしていた

「重体になってしまい、お医者さんにバヤンを病院に連れていくよう勧められました。私立病院に連れて行くのは経済的に無理でした。うちは難民キャンプ暮らしで、主人は不定期の仕事しかなく、その給料では食べ物を買うのさえ足りません。途方に暮れて、娘のことがとても心配でした。ザーレにあるWAHA(女性と健康アライアンス)の診療所でイリアース・ハラーウィー病院を紹介してもらえたのです。

MSFは2017年からイリアース・ハラーウィー病院で小児病棟を運営する
MSFは2017年からイリアース・ハラーウィー病院で小児病棟を運営する

2017年3月、MSFはイリアース・ハラーウィー病院内に小児病棟を開設した。ここで、子どもたちは国籍を問わず無料で専門的な診療を受けられる。小児病棟には28床のベッドがあり、生後28日から15歳までの子どもが入院治療と緊急以外の外科手術を受けられる。

未熟児として生まれたモハメドちゃんは、転院を繰り返しイリアース・ハラーウィー病院にたどり着いた
未熟児として生まれたモハメドちゃんは、転院を繰り返しイリアース・ハラーウィー病院にたどり着いた

レバノンでMSFの活動責任者を務めるオードリー・ランドマンは、「ベッカー高原はレバノンの中でも最も援助が必要な地域のひとつです。レバノン国内にいるシリア人難民の3分の1にあたる、約50万人のシリア人難民を受け入れており、大半は女性と子どもです」と語る。

ベッカー高原には多くのシリア人難民が暮らしており、苦しい生活の中でまかなえる高度医療がない
ベッカー高原には多くのシリア人難民が暮らしており、苦しい生活の中でまかなえる高度医療がない

「この地方には、診療費を無理なく支払えるような2次・3次医療がなく、あるのは非常に高額な民間診療だけです。難民や、貧しいレバノン人は利用できません。MSFはザーレのプロジェクトを通じてこの格差を埋め合わせるため、外科や集中治療などの専門診療を無償で提供し、最も必要としている人が診療を受けられるようにしています」とランドマンは話す。

呼吸器の問題で治療を受けるアマラちゃんは、10人兄妹の末っ子
呼吸器の問題で治療を受けるアマラちゃんは、10人兄妹の末っ子

シリア人のラカドさんは、娘のアマラちゃんの治療のためイリアース・ハラーウィー病院の小児病棟に来た。アマラちゃんは生まれたときから呼吸器に問題があり、頻繁に入退院を繰り返したため、両親は多額の借金を抱えていた。「この病院で、MSFの無償の診療を受けられて本当に感謝しています。MSFがいなければ、娘の治療費を工面するため、また親戚からお金を借りなければならなかったでしょう」とラカドさんは話す。

MSFの小児科医がアマラちゃんを診察する
MSFの小児科医がアマラちゃんを診察する

MSFはこの病院の診療のほか、ザーレで小児の専門的な外来診療をWAHAと共同運営している。慢性疾患や内科・外科系の急性期症状による合併症を持つ子どもたちに、持続可能な治療を続けていくことが目的だ。

2017年以来、MSFはイリアース・ハラーウィー病院で無償の小児医療を行っている
2017年以来、MSFはイリアース・ハラーウィー病院で無償の小児医療を行っている

プロジェクト初年度は、MSFは2500件の救急診療を行い、975人の子どもが入院治療を受けた。そのうち35人は、2017年12月に開設された集中治療室で受け入れた。また2017年10月から2018年3月までの間に67件の手術を実施した。

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