【世界予防接種週間】6万キロの砂漠を走り、ワクチンを届ける。1万人の幼い命を守るために

2018年04月24日掲載

予防接種を受けるマリの赤ちゃん
予防接種を受けるマリの赤ちゃん

毎年4月24~30日は、世界保健機関(WHO)が定める「世界予防接種週間」。ワクチンの接種は病気から幼い命を守るのに最も効果的な方法ですが、世界では乳児の5人に1人が基礎的な予防接種を受けられていません。最寄りの病院まで徒歩で数日かかったり、紛争で避難していたり……医療へのアクセスが限られる地域では、予防接種を受けに行くのも一苦労です。

そこで国境なき医師団(MSF)は、へき地に暮らす人びとへワクチンを届ける活動に取り組んでいます。内戦による情勢不安が続く西アフリカのマリでは、砂漠地帯に暮らす子どもたちへの集団予防接種が始まりました。

熱帯でもワクチンを低温に保てるようアイスパックで冷却管理
熱帯でもワクチンを低温に保てるようアイスパックで冷却管理

広大なサハラ砂漠の南に位置する、マリ北部キダル州。ここに、医療施設から遠く離れた砂漠地帯で暮らす遊牧民族がいる。

MSFは2015年から同州で活動を開始。調査の結果、予防接種を何年も受けていない子どもが多数いることが分かった。そこで現地の保健当局と連携し、感染症を予防するためのプロジェクトに着手。2018年1月から、5歳未満児1万人を対象とした集団接種をスタートさせた。

広大なサハラ砂漠が広がるマリ北部
広大なサハラ砂漠が広がるマリ北部

命に関わる感染症であるジフテリアやはしか、百日咳、髄膜炎、肺炎、黄熱などの多価ワクチンをマリ国内で集団接種するのは初めての試みだ。

予防接種が必要な1万人の子どもを探し出して接触するために、チームはサハラ砂漠を車で6万km走破しなければならない。活動は困難を極める。

MSFの4WDで道なき道を行く MSFの4WDで道なき道を行く

マリで医療コーディネーターを務めるMSFのパトリック・イレンゲは「実現には大変な手間暇がかかります」と話す。「何よりもまず、ワクチンを調達しなければなりません。また、広大な砂漠地帯を動き回って孤立住民のもとへ赴くには、ロジスティクス面の下支えが不可欠です。気温が50度まで上がることもある場所でワクチンの温度を2~8度に保ち、(土地勘のあるドライバーから優れた医療者まで)大勢のスタッフを集めて運ぶのは至難の業です」

順番を待つ子どもたち 順番を待つ子どもたち

今回の集団予防接種は、マリで推奨されている予防接種スケジュールに沿って3段階で行われる見通し。はしか、黄熱、髄膜炎のワクチンは1回の接種で効果が得られるが、その他はそれぞれ3回に分けて投与しなければならない。1つの場所に定住せず数週間単位で移動する遊牧民族にとって、複雑な接種スケジュールに従うことはなおのこと難しい。

「予防接種が必要な子とどう接点をつくるかが問題になります。でも、ワクチン接種は人びとを病気から守るために最も効率的な対策なんです」(パトリック・イレンゲ)

集団接種は既に2回目の接種を終え、5月上旬に完了する見込みだ。

MSFは1985年からマリで活動。キダル州では、1998~2008年に産科プロジェクトを実施。2015年から活動を再開し、孤立した住民を対象に医療援助を届けている。現在はガオ州アンソンゴ、シカソ州クティアラ、モプティ州テネンクーおよびドゥエンザでも活動し、特に周産期・小児科ケアを強化している。

関連情報