丘の上に建つ新しい病院が、広大なロヒンギャ難民キャンプで人びとを見守る

2018年05月01日掲載

新しくできた病院で肺炎の治療を受ける生後5ヵ月の赤ちゃん
新しくできた病院で肺炎の治療を受ける生後5ヵ月の赤ちゃん

国境なき医師団(MSF)は2018年4月、バングラデシュ・コックスバザール県で、約70万人のロヒンギャ難民が身を寄せるクトゥパロン・バルカリ難民キャンプの中心部に病院を新設した。「丘の上の病院」と呼ばれるこの病院は、コックスバザールに連なる丘の上に建ち、誰もがすぐに見つけられる場所にある。

病院の場所は広大なキャンプの丘の上で、どこからでもよく見える
病院の場所は広大なキャンプの丘の上で、どこからでもよく見える

着工は2月上旬で、ひと時も無駄にすることなくわずか2ヵ月で建設された。この病院は患者100人を受入可能で、2017年8月25日にミャンマーで起きた殺りくをきっかけに、一斉に逃れてきた大勢のロヒンギャに対応するために作られた。

建築資材を現場へ運ぶスタッフ
建築資材を現場へ運ぶスタッフ

モンスーンの吹く季節に入れば、難民キャンプでは洪水や浸水の恐れがあり、人びとが必要な医療を受けることが極めて難しくなる。そこで、新しい病院は仮設ではなく、しっかりした作りの半常設の施設であることが求められた。建物はどれもコンクリートの基礎の上に鉄筋の構造でできている。

病院はコンクリートの基礎に鉄筋構造、周囲はフェンスで囲まれている
病院はコンクリートの基礎に鉄筋構造、周囲はフェンスで囲まれている

病院には、救急処置室1室、集中治療ユニット1つ、医療分析検査室1室、成人の入院病棟と小児の入院病棟、新生児ケア・ユニットを付属した産科、感染症患者の隔離ユニット1つ、重度栄養失調児のための集中栄養治療センターもある。栄養失調の子どもはごく少ないが、モンスーンの時期には増加が予想される。

2歳のアニサ・ビビちゃんは下痢症と腎臓の疾患疑いで治療を受けている
2歳のアニサ・ビビちゃんは下痢症と腎臓の疾患疑いで治療を受けている

この病院のMSFチームは、呼吸器感染症や下痢など難民キャンプでよく見られる疾病のほか、性暴力の被害者や外傷、呼吸器障害などの急患への処置も行う予定だ。手術が必要な時は、容体が安定したところで手術室のある病院に引き継ぐ。幅広い医療サービスを提供し、家族計画の相談に応じるほか、女性は月経調節法(※)も受けられる。

  • ※妊娠が確定する前の初期段階に子宮内容物を除去する処置

オープンした病院の病棟の様子
オープンした病院の病棟の様子

コックスバザール県でMSF緊急対応コーディネーターを務めるフランチェスコ・セゴニは「糖尿病、高血圧、慢性閉塞性肺疾患、ぜんそくなどの慢性疾患の治療もできます。これらは成人の最大の死因です」と話す。「慢性疾患の患者にとっては、必要に応じて入院治療が受けられることが重要になります」

MSFは3月末と4月上旬にも医療施設を開設し、コックスバザール県でより広く、入院治療を含む二次医療を提供できるようにしている。さらに「丘の上の病院」では、雨期に多いコレラやE型肝炎などの流行にも備える計画だ。

病院に供給する水をくみ上げるため、深い井戸が掘られた
病院に供給する水をくみ上げるため、深い井戸が掘られた

「洪水や、よどんだ水が溜まって、水と蚊に媒介される病気がいっそう広がりやすくなるでしょう。ロヒンギャの人びとはとても過密した環境で暮らしており、衛生条件も非常に悪いからです」と、セゴニは話す。

トイレは多くが浸水しやすい場所に掘られ、井戸も多くがかなり浅いために水が汚染されてしまう。MSFが150メートル以上の深さまで掘削した井戸もあり、そのうちの1基は「丘の上の病院」に水を供給しているが、キャンプ全体に必要な量の清潔な水を行きわたらせるには足りていない。

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