あなたの知らない難民危機——4万人が到着 いま、湖畔で起きていること

2018年03月22日掲載

早朝、ウガンダに向け船を出す避難者たち
早朝、ウガンダに向け船を出す避難者たち

アフリカ中央部、ナイル川に流れ込むアルバート湖。いま、この流域が難民大移動の舞台となっている。発端となったのは、昨年12月にコンゴ民主共和国北東部イトゥリ州で起きた部族間の抗争だ。2月に入ると激しさを増し、戦闘に発展。家は焼かれ、人びとは殺害された。2月下旬の時点で、推定2万人がイトゥリ州の州都ブニアに避難(OCHA調べ)。保護者のいない子どもや、戦闘で身寄りを失った人も多い。

国境なき医師団(MSF)のコンゴ緊急対応コーディネーター、フローラン・ウッツェーニはこう話す。「学校や教会に一時避難している人もいます。避難者の多くは女性と子どもで、食糧や水など最低限の必需品もなく、援助で命をつないでいます」

29歳のムルンバさん。武装した男たちに大型ナイフで首を切りつけられた
29歳のムルンバさん。武装した男たちに大型ナイフで首を切りつけられた

MSFは3つの診療所で感染症などに対応するほか、凄惨な暴力を目撃・体験して心の傷を負った人びとへ心のケアも行っている。また、病院の敷地内に設けられた一時避難所で給水装置やトイレ、シャワーを整備。毛布や石けんが入った救援物資キットや食糧も配布している。

アルバート湖を渡って隣国ウガンダへ逃れるコンゴ人難民も後を絶たない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、1月初旬以降の2~3週間で4万2000人がウガンダに到着。すし詰め状態で壊れかけの漁船やカヌーが次々にたどり着き、湖岸は膨大な数の難民であふれかえった。

マットレスを抱えて避難する女性
マットレスを抱えて避難する女性

湖を横断するには通常、約6~10時間かかる。ボートが転覆し、乗っていた人が溺死したとの報告もある。ウガンダの緊急対応コーディネーター、アーマド・マハトは難民の状況をこう説明する。「小さなカヌーを3日間こいで来た人もいました。難民は精神的トラウマを受けて疲れきった状態です。なかには、深い切り傷やけがを負っている人もいます」

難民が下船するのは、小さな漁村セバロゴの埠頭だ。難民の移動がピークに達した2月中旬には1日最大3000人が到着し、受け入れ態勢は限界を超えた。

湖岸のボートに寝泊りする少女
湖岸のボートに寝泊りする少女

到着した難民は現地当局と国連機関が運営するカゴマ収容センターで難民登録を済ませ、キャングワリ(マラタトゥ)ほかウガンダ中西部の難民キャンプに移動する。しかし、ピーク時には対応が追いつかず、足止めされた難民はトイレも給水設備もない湖岸に数日間~最長1週間とどまらざるを得ない状況だった。

カゴマ収容センターとマルタトゥ難民キャンプは大量に押し寄せる難民に対応しきれないでいる。人びとは故郷の暴力、その後の過酷な旅を経験したうえに雨期にさらされ、水や食糧も満足には得られず、ひどい衛生環境で生活している。2月中旬にはコレラの集団感染が起き、少なくとも30人が死亡した。

アルバート湖岸のコレラ治療センターで患者を診るMSF看護師
アルバート湖岸のコレラ治療センターで患者を診るMSF看護師

「状況は極めて深刻です。コレラはまだ増加傾向にあり、死亡率も高い。MSFは専用のコレラ治療センターで対応に当たっています。(コレラは水を媒介として感染するため)難民が清潔な水を使えるよう、浄水処理場の設置や飲料水のトラック輸送を行いました。同時にトイレの設置や疫学調査も進めています」(アーマド・マハト)

MSFはセバロゴの診療所内に50床のコレラ治療センターを開設し、埠頭の移動診療所から重症患者を搬送。また、カゴマ収容センター近くの診療所内にも治療センターを設置し、人口2万300人のマラタトゥ難民キャンプから患者を受け入れている。

MSFのコレラ治療センターで治療を受ける少女
MSFのコレラ治療センターで治療を受ける少女

コレラ流行で非常に厳しい緊急事態が広がりつつあるアルバート湖岸。一方、コンゴ・イトゥリ州の状況も先行き不透明だ。戦闘が再燃すれば、難民が再びウガンダに押し寄せる可能性もある。

「援助団体が立ち入れない危険な地域に、まだ多くの人びとがとどまっています。MSFは情勢が不安定な地域へ調査チームの派遣、医薬品の寄贈などの遠隔支援を行っています。孤立した避難者たちに援助を届けるため、私たちはあらゆる手を尽くします」(フローラン・ウッツェーニ)

MSFはコンゴ民主共和国ブニア町ビゴ、キンディア、ランバボの診療所で基礎医療を行い、過去2週間で外来患者2117件を診療。うち783件は5歳未満の子ども、349件は妊婦だった。また、イトゥリ州内の一時避難所では給水設備、トイレ20基、シャワー10台を設置し、救援物資キット1200組を配布した。

ウタンダのカゴマ収容センターでは子ども5263人にポリオとはしかの予防接種を、女性2160人に破傷風の予防接種を実施。週7日24時間体制の診療所を開院し、2月中旬以降2000人の患者に治療を提供した。この診療所では産前ケアと性暴力の被害者向けサポートも行っている。

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