患者はもう待てない。2つの新薬で結核治療に希望を灯す

2018年03月01日掲載

薬剤耐性結核の患者にとって新しい薬は大きな希望に

薬が効かない薬剤耐性結核(DR-TB)に感染した人にとって、治療の選択肢はごくわずかだ。2016年だけで1000万人が結核に冒され、そのうち50万人余りが、治療に用いられるリファンピシンとイソニアジドという最もよく効く薬に耐性を持つと見られている。耐性の強いDR-TBは、今この時代にも国際保健の大きな脅威となっている。

国境なき医師団(MSF)の医師にとっても、DR-TBはとても深刻な問題だ。薬剤耐性菌の患者を診療する方法は依然として限られていて、多くの場合、効果がない。つい最近まで、最も耐性の強い「超多剤耐性結核」の治療では7種類もの薬を使い、つらく副作用の強い治療を何年も続けて、ようやく5人に1人が治癒するという状況だった。

効果が高く副作用も少ない薬の誕生

2013年と2014年、デラマニドとベダキリンという結核新薬の初期の臨床試験で、有望な結果が出た。この2つの新薬がDR-TB治療に効果があるという根拠が示されたのだ。MSFをはじめ、結核と闘う専門家の間にも希望と安堵の空気が広がった。

MSFの結核顧問を務めるガブリエッラ・フェルラッツォ医師は語る。「治療法は限られており、長く険しく、大抵はむなしい道のりを進むことになります。医師たちは患者の前で手をこまねき、いら立ちに押しつぶされそうになっていました。そこへ突然、より高い効能と、副作用の軽減が期待できる2つの新薬が出てきたんです」

MSFは早くからデラマニドとベダキリンの可能性を認識し、複数の国で、治療の選択肢の限られた患者にこの2つの薬を提供できるよう模索していた。2013年には、コン パッショネート・ユース(※)制度のもとでこれらの新薬を使ってDR-TB患者の治療を開始した。その後、2つの薬は条件付きの使用承認を受け、さらに規制当局による最終承認を受けると、MSFは11ヵ国13件のプロジェクトに導入した。治療に関して難しい決断に臨む医師の支援にも乗り出し、新薬の安全な使用を監視するための体制も構築した。

  • ※ 人道的配慮から、生死に関わる病気の患者に対し、販売承認に先立って未認可薬の使用を認める制度

新薬の併用を進めるために

しかしまだ、薬剤耐性の強い患者にデラマニドとベダキリンを組み合わせて使うには、確固たる根拠や指針が乏しい。そこでMSFは2016年、治療の一環で2つの薬を併用しているアルメニアインド南アフリカ共和国の患者について、併用療法の安全性と、暫定的な有効性を計るためのデータを蓄積した。結果は有望で、薬剤耐性の強い患者23人中17人(74%)が半年の治療で結核陰性となり、治療の成功の兆しが見えた。目立った副作用は見られず、懸念されていた、心臓の電気活動への影響もなかった。

「実際の活動地でこのように有望な結果が得られて嬉しかったです。そして、2つの薬が心臓の電気活動に影響する懸念も打ち消され、いっそう安心しました。不整脈も原因不明の死亡例も報告されませんでした」。そう説明するのはMSFオペレーションズ・リサーチ・コーディネーターのペトロス・イサキディス医師だ。「この研究は世界の結核のまん延地のうち3ヵ所のデータに基づいており、2つの薬を併用する可能性について、具体的で実用的な見解を示しています」

2018年2月、医学誌『ランセット感染症ジャーナル』は、デラマニドとベダキリンを必要とする患者のために、結核治療プログラムでより広く併用療法を用いるよう研究所見を公表した。これらの薬を用いた2件の臨床試験は被験者の募集を始めているが、結果がわかるまでにまだ3~5年かかるだろう。

フェルラッツォ医師は語る。「患者には臨床試験を待っている時間などありません。活動地で得られた結果はとても有望で、2つの薬の併用が耐性の高いDR-TB患者にも安全かつ有効であると示しています。できる限り最善の治療を行うことは臨床および公衆衛生の責務でしょう。そして、今はデラマニドとベダキリンが私たちにとって最大の希望なのです」

MSFは30年余りにわたってDR-TB治療に携わり、NGOとしては最大規模で結核関連のケアを行っている。現在は、インド、中央アフリカ共和国、南アフリカ共和国、ウズベキスタンなど24ヵ国で通常の結核とDR-TBの患者を治療し、11ヵ国の保健省との協力のもと、デラマニドとベダキリンを用いた治療コースを提供している。

2017年7月までに、11ヵ国13件のMSFプロジェクトで合計1554人の患者が2つの新薬による治療を受け、そのうち1110人がベダキリン、444人がデラマニド、117人がその両方を投与された。MSFはまた、新しい治療法を模索するための2件の臨床試験にも参加し、効果的なDR-TB治療ができるよう新しい薬の成分の開発を促す活動も支援している。

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