マラウイ:HIVとともに生きる子どもたち。苦しみの先に見えた希望のひかり

2018年01月26日掲載

雄大な自然が広がるマラウイ
雄大な自然が広がるマラウイ

アフリカの大地を切り裂く巨大な谷グレート・リフト・バレー(大地溝帯 )、美しく雄大なマラウイ湖……大自然の絶景で知られる平和な国、マラウイ。しかし、その穏やかな地平線の背後には、日々の苦難が大きく立ちはだかっている。

アフリカ南東部に位置するマラウイは国際援助への依存度が非常に高く、保健・医療予算の7割を拠出金に頼っている。だが、2012~2014年に起きた汚職スキャンダルを受け、保健・医療分野への直接支援が、大きいもので半減した。2015~2016年には、さらに18%縮小。財源が激減し、救急車のガソリンや医薬品に充てる資金すら足りていない。

MSFの技術支援で、財源不足により老朽化した救急車を整備
MSFの技術支援で、財源不足により老朽化した救急車を整備

マラウイでは毎年2万8000人が新たにHIVに感染しているとみられ、2018~2020年には6万4000人がエイズで死亡すると予測されている。いまなおエイズが成人の主な死因となっているこの国で、国境なき医師団(MSF)は、進行したエイズ患者のケアや乳幼児のHIV検査に長年取り組んでいる。

HIV感染者は、エイズの発症を抑えるために、抗HIV薬(抗レトロウイルス薬=ARV)を一生涯飲み続けなくてはならない。 治療を続けられず、ARVが血中ウイルスの増殖を抑えられなくなると、結果的に治療が「失敗」に終わることも多い。治療を続けるのが難しいのは、社会的・経済的事情があったり、薬剤耐性が発現したりするためだ。サポートが不十分で服薬をやめてしまうこともある。

自宅前に立つグロリアちゃん。家族はキマメの販売で生計を立てている
自宅前に立つグロリアちゃん。家族はキマメの販売で生計を立てている

医療機関では症状の重いエイズ患者を特定の診察日に受け入れ、治療だけでなく、教育やカウンセリング、社会面の支援もしている。しかし、道路や交通機関が整備されていない農村部では、移動にかなりの費用と時間がかかり、検診に行くことすら難しい。

チラズル県の農村に暮らすグロリアちゃんは11歳。HIVで免疫機能がもともと弱く、結核に重複感染した。現在はMSFの海外派遣スタッフが定期的に自宅を訪問し、グロリアちゃんと家族の体調をチェックしている。

グロリアちゃんのレントゲン写真を調べるMSFの医師
グロリアちゃんのレントゲン写真を調べるMSFの医師

2016年にMSFが実施した調査によると、県立病院の入院患者のうちHIV関連は37%に上り、死因も54%がHIVだった。HIV陽性患者の死亡率は、そうでない患者の5倍に跳ね上がる。HIV患者の大半がARV治療を受けているものの、3割弱は免疫不全が非常に重症化してから来院するため、入院から48時間以内に死亡している。

MSFは現地保健省の職員を研修し、地域の中核病院と地元と の連携を強化しようとしている。病院と地域がよりよく連携できるようになれば、患者をもっと早く搬送でき、退院後3ヵ月の経過観察もしやすくなる。

「ティーン・クラブ」にはダンスを取り入れたプログラムも
「ティーン・クラブ」にはダンスを取り入れたプログラムも

多感な10代の若者にとって、HIV感染の現実を受け入れるのは難しい。両親をエイズで失った子の傷も深い。2016年に設立された「サタデー・ティーン・クラブ・スペース」は、10~17歳を対象に、交流事業や健康教育、カウンセリングを通してHIVとともに生きる若者をサポートしている。同じ境遇に置かれた仲間同士が絆を深め、互いに助け合えるような環境を整えることが狙いだ。

デボラさん(18歳)。HIVと結核の重複感染を抱えている
デボラさん(18歳)。HIVと結核の重複感染を抱えている

18歳のデボラさんは、母親のお腹の中にいる間にHIVに感染した。エイズの発症を防ぐための投薬治療は、生活に支障をきたすこともある。服薬や通院のため長期の旅行ができず、行動範囲は限られる。寄宿学校への入学も諦めた。「常に薬を飲むことを考えなければいけないし、友達に知られたらどう思われるか……」

しかし、カウンセリングを受けるうちに「HIV陽性だからって全て終わりってわけじゃない」と気づくことができたという。将来の夢はジャーナリストだ。「ちゃんと服薬を続けて、絶対に夢を実現します」

交流プログラムの一環として、同世代のHIV感染者とチェスを楽しむ
交流プログラムの一環として、同世代のHIV感染者とチェスを楽しむ

MSFはマラウイで18年間、HIV/エイズ治療・ケアの支援を続けてきた。現在は、安定した活動を現地保健省に引き継ぎ、若者など治療を続けにくい人たちのケアに注力している。

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