中央アフリカ共和国:国内外での避難90万人——MSFだからわかる現実とは?

2016年11月21日掲載

ムポコ避難難民キャンプでMSFが運営する診療所の
待合室で行列を作る人びと
ムポコ避難難民キャンプでMSFが運営する診療所の
待合室で行列を作る人びと

中央アフリカ共和国では2016年に大統領選挙や国民議会選挙などの国政選挙が行われた。その影響で、国際社会の一部には、中央アフリカ情勢が「平常」に向かいつつあると主張し、人道問題への対応を開発分野への対応へと段階的に移行していくことを正当化しようとする向きがある。

しかし、国境なき医師団(MSF)が活動地で日々向き合っている現実は、そうした動きとは全く異なるものだ。国民の多くが今も暴力と恐怖に捕らわれ、住居、食糧、飲用水、衛生設備、医療、保護といった最低限の条件さえ整っていない。

人口約490万人の過半数が人道援助を必要としており、いまだに約40万人が国内で避難生活を送っている。周辺国に脱出した人は50万人に上る(※)。危機が慢性化してしまうと、緊急事態が容易に起きるようになる。人びとの健康は損なわれ続け、治療のための保健医療インフラはさらに弱体化していく。この国はまだ「平常」とはほど遠い状況なのだ。

  • 出典:Commission of population movements(2016年7月)

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MSFが唯一の医療提供者に

MSFの診療所まで来院するだけでも大仕事だ MSFの診療所まで来院するだけでも大仕事だ

この国では公的保健医療制度が正常に機能しておらず、医療ニーズに関しても人道援助を頼っているのが実情だ。MSFが唯一の医療提供者として、地域医療を担っているケースも多い。既存の医療施設、特に都市圏外での医療人材の不足も深刻な課題だ。

その上、国民の大半が3つの壁に阻まれている。1つは物理的な壁で、劣悪な道路状況、通行止め、路上強盗などが挙げられる。2つ目は治療提供の壁で、訓練された人材や適切な医療インフラの不足が原因だ。3つ目は経済的な壁で、人びとの貧困と国家財政の疲弊の2つの側面がある。その結果、多くの人びとが基礎的な医療さえ受けられずにいる。

栄養失調児、前年を上回るペースで増加

MSFのもとで栄養失調とマラリアの治療を受ける子ども MSFのもとで栄養失調とマラリアの治療を受ける子ども

保健医療関連の指標は前年から横ばいか、さらに悪化へと向かうことを示唆している。例えば、MSFは2016年1月~6月で、すでに6700人の栄養失調児を治療した。年間で1万200人だった2015年を著しく上回るペースだ。国政選挙に伴う政界再編があったにもかかわらず、国内の保健医療と人道援助のニーズが減る気配はない。

MSFのすべての活動規模(支出額ベース)の中で、中央アフリカは2015年、コンゴ民主共和国、南スーダンに次ぐ3番目の大きさだった。一方、行政の財政出動や国際社会からの支援は、膨大な医療ニーズに見合わないほどわずかだ。

MSFの支援>各国政府の支援、でよいのか?

国家予算に占める保健医療費の割合は極端に小さい。保健省は、保健医療・栄養プログラム予算を年間約6000万ドル(約65億4800万円)と算出している。(※)

  • 出典:中央アフリカ共和国保健省『Les besoins de relèvement du système de santé en République centrafricaine』(中央アフリカ共和国における保健医療体制復旧の必要/2016年)

一方、MSFは2015年、中央アフリカの活動に、民間寄付者からの資金5500万ユーロ(約64億3900万円)を投じている。民間の人道援助団体であるMSFが単独で投入しているこの活動資金は、各国政府が人道支援プログラム用として中央アフリカに提供している資金を上回っている。

中央アフリカ政府、支援している国々、そして国際社会は、人道援助の手を緩めたり、優先度を引き下げたりすべきではない。残念ながら、この国の人びとの生命と健康と福祉が、人道援助団体と国外からの経済援助にかかっている。

保健医療ニーズに応えるためにMSFが求めること

  • 保健医療利用を阻む壁を直ちに解消すること

    治安の乱れ、資源の不足、不適切な保健医療政策が依然として大きな障害だ。人道援助ニーズはまだ充足されておらず、対応の継続が求められる。

  • 政府や各支援国からの資源を、現状の保健医療分野の人道援助・開発ニーズの反映と充足にあてること

    MSFの2015年、国内9県で17件の医療プログラム支援に支出した。合計金額は政府の保健医療予算を上回り、この分野について中央アフリカを支援している国からの単独出資額よりもかなり大きい。

  • 情勢が比較的安定している地域で、行政が保健医療制度などの構造的な問題に長期的に取り組むこと
  • 民間人の保護、人道援助の活動許可、保健医療従事者・施設の尊重、保健医療の利用の保障に責任を負うこと

    政府、武装勢力、国連中央アフリカ多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)といった国内の全紛争当事者に責任の負担を求める。

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