世界肺炎デー:ワクチン価格の引き下げが、子どもたちの命を救う

2016年11月12日掲載

11月12日は世界肺炎デーです。

肺炎は、日本でもがん・心臓病と並んで3大死因に数えられる"身近にひそむ危機"です。日本では肺炎で亡くなる人のほとんどが高齢者ですが、世界、特に途上国では5歳未満の子どもたちの主要な死因となっています。

世界の子どもたちを苦しめている肺炎(肺炎球菌感染症)は、予防接種を受けることで防げる病気です。ところが、2015年には約92万人の5歳未満児が命を落としました(WHO統計)。これは同年代の死亡数の15%を占めています。

こうした数字だけではピンと来ないかもしれません。国境なき医師団(MSF)の活動地で実際に何が起きているのか、中央アフリカ共和国で活動しているイラリア・モネタ医師が話してくれました。

「1歳半の男の子のことが気になっています」

自身が担当した肺炎の男のについて語るMSFのイラリア・モネタ医師 自身が担当した肺炎の男のについて語る
MSFのイラリア・モネタ医師

肺炎でしかも重度の栄養失調になっていた1歳半の男の子のことが気になっています。来院してきたときはひどく衰弱していました。すぐに入院となり、10日間で容体はかなり上向きました。

幼い子どもにはたとえ10日でも"長期入院"です。決してよいことではありません。ただ、この小さな男の子の回復は目覚ましく、歩み寄るといつも満面の笑顔で私の手をつかみ、注意を引こうとするまでになりました。そして間もなく退院することができたのです。

それから1週間後の昨日、経過観察のために来院した男の子を見て心配になりました。体重が大幅に減っていたからです。乳幼児には特によくないことです。具合が悪いこともすぐにわかりました。顔をのぞきこんでも反応せず、元気がなく、別人のようだったからです。

再入院させ、目を離さないようにしたいと思いながらもかなわず断念。あの子はこの町に住んでいるので、少なくとも遠くから来院する必要はありません。今日は来なかったということは、きっと無事に過ごしているのでしょう。そう願っています。

世界170ヵ国からの署名が製薬企業を動かした!

予防方法が確立されているのに、なぜ子どもたちは今も苦しんでいるのでしょうか。その理由の1つはワクチンの価格にあります。製薬企業のファイザー社やグラクソ・スミスクライン(GSK)社が製造・販売しているワクチンの価格が高すぎて、必要分を確保できない国や援助団体がたくさんあるのです。

国境なき医師団(MSF)はこの状況を変えようと努力しています。財政面の余裕がない途上国や人道援助団体向けに、肺炎球菌ワクチン(PCV)の価格を子ども1人あたり5ドル(約533円、全3回接種)に引き下げることを要望しています。

  • 動画に登場する数値は2015年時点のものです。
全世界から寄せられた署名で覆われたベビーベッド 全世界から寄せられた署名で覆われたベビーベッド

その実現に向け、全世界で活動地の子どもたちの状況を伝え、署名活動を展開。170ヵ国から41万6000筆以上寄せられた署名を、2016年4月、両社に届けました。

その結果、GSKは人道援助団体を対象に、PCVの価格を子ども1人あたり9ドルに引き下げることを発表しました。世界中で声をあげたことにより、状況を改善することができたのです。

一方、ファイザーからは"寄贈"の提案があったものの、価格そのものを引き下げることについては今も回答がありません。MSFは、ファイザーの英断を強く望みます。

また、1人あたり5ドルという価格目標に向けて今後も交渉を続けます。