熊本地震:避難所の人びとに最善の医療援助を

2016年04月22日掲載

夜間、体調不良を訴えた患者に対応する医師と看護師4月21日、白水仮設診療所にて 夜間、体調不良を訴えた患者に対応する医師と看護師
4月21日、白水仮設診療所にて

熊本地震の前震発生から1週間が過ぎ、避難生活中に亡くなった人を含む死亡数は59人に上っている。被災地では今も約9万人が避難生活を余儀なくされている。前例がないほどの頻度で余震が続いているうえ、前日までの大雨の影響による土砂崩れ、水道などのライフラインも完全復旧にいたっていない。国境なき医師団(MSF)の活動拠点がある南阿蘇村では現在もおよそ1500人(※)が避難生活を送っており、帰宅の見通しはたっていない。

  • 南阿蘇災害医療会議より

MSFはこの日、引き続き2チーム体制で活動、避難所に身を寄せる被災者の人びとへ医療援助を行った。

1班は早朝から大津町にある熊本体育館を目指した。前日の大雨による土砂災害を警戒し、隣接する南阿蘇村立野地区から72人が避難してきた場所だ。避難者の多くは高齢者で、これまでの1週間医療援助を受けておらず、慣れない避難生活に順応できていない人もいる。

MSFは避難者に体調や服用中の薬など足りないものはないかなどの聞き取りを行い、希望者にその場で診察と薬の処方を行った。診察を受けた70代の女性は、以前に膝の手術をした後、しびれと痛みどめの薬を服用してきたが、避難の際に持ち出すことができず1週間眠れない日々が続いたという。女性はその後、災害処方箋を受け取り無事に近隣の薬局まで薬を受け取りに行くことができた。

MSFの看護師の畑井智行は「住み慣れた家を地震で失い、着の身着のままで避難所にたどり着いた矢先、さらに大雨で別の場所に避難を強いられた人びとは疲弊しており、この生活が長引けば健康被害につながる恐れもあります。人びとがより安心して生活できる環境を整えることが急務となっています」と話す。

孤立地域の住民に医療援助を届ける

南阿蘇村でMSFの活動を指揮する幣原医師 南阿蘇村でMSFの活動を指揮する幣原医師

現地で活動の指揮をとるプロジェクト・コーディネーター、幣原園子医師は、「現地には援助のための物資や団体が多数入っていますが、個人と地域両方のレベルで先の見通しは立たず、住民の避難生活は今後しばらく続くものとみられます」と語る。

MSFは本震直後の4月17日に現地入りし、被災地の医療ニーズ調査を進めた。18日には菊池市と益城町で状況を調査。被害は大きかったものの、医療面でのニーズはほぼ対応されていることを確認した。

19日に入った南阿蘇村では、主要道路や橋の崩壊で地域が3つに分断されている状況を確認。白水地区では診療所の開設が必要として、医師と看護師を派遣して仮設診療所の開設と診療のサポートを始めたほか、長陽、久木野、白水地区に点在する各避難所をまわり医療ニーズを把握。急患対応とともに、中長期の視点に立った健康管理の啓発や慢性疾患への対応を開始した。

さらに、立野地区では医療援助が何も届いていないことがわかり、ここを拠点に活動を開始する決定をした。

幣原医師は、「この地域で中核的な医療を担っていた立野病院は、被災して機能を失いました。住民はもともと少ない医療へのアクセスを断たれただけでなく、一部の道路や橋が崩壊したことで、自由な移動も妨げられた『孤立』状態に置かれています。おもに途上国における緊急人道・医療援助を専門にするMSFが今回、熊本での活動を決めたのもこうした理由があります」と語っている。

避難所から避難所へ…大きなストレスに

20日、MSFは約150人が避難する立野地区で新たな診療所の開設を決め、地元企業の協力もありその日のうちにテント式の診療所を設置した。しかし、翌21日に南阿蘇村には大雨警報が発表され、土砂災害などの危険から立野地区に避難指示が出された。立野で避難する人びとは近隣の大津町にさらなる避難をすることになり、MSFは現在、避難先の大津での活動と、その後の避難計画に沿った対応を検討している。

幣原医師は、「ニーズは依然として確かではありませんが、高齢者も多く、自宅を失ったうえ、1週間の避難生活の後にさらに追い打ちをかけた避難所の変更で、ストレスはかなり大きいことが容易に想像できます。急性期医療を提供するのがMSFの強みですが、被災地で活動するほかの団体の存在を考慮したとしても、少なくとも1ヵ月は活動を続ける必要があると考えます。援助提供者の都合を押し付けるのではなく、地元自治体や医療従事者など、地域のサービス提供者が疲弊することなく活動を維持できるよう、また、家族や財産を失った人びとが尊厳を保ち、新しい生活を立て直せるように最善の方法を探していきたいと思います」と語っている。

今後、MSFは白水仮設診療所の運営を通じて、地区内にある複数の避難所で過ごす人びとの健康管理と医療ニーズの把握を継続して行っていく。また、地震後に避難した避難所からさらに別の避難所へ移動を余儀なくされた立野住民へのサポートも行なっていく予定だ。

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