エボラ出血熱:流行3ヵ国で症例減少——終息まで油断禁物

2015年01月27日掲載

MSFの治療で回復し、帰宅を果たした女性(左) MSFの治療で回復し、帰宅を果たした女性(左)

シエラレオネギニアリベリア、3ヵ国で、国境なき医師団(MSF)が運営しているエボラ出血熱の治療センター計8ヵ所の患者数は、現在、合計約50人となっている。新規の発症例は減少傾向にある。望ましい展開だが、ここで気を緩めれば、これまでの活動が台無しになってしまうため、油断は禁物だ。

MSFオペレーション・ディレクターのブリス・デ・ル・ヴィンヌは「症例数の減っている今こそ、流行対策の弱点を解消する好機です。新規患者の通報体制や、その患者と接触した人の追跡調査を大幅に改善しない限り、そう簡単に症例ゼロには至らないでしょう」と話す。

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すべてのウイルス接触者の特定を

世界保健機関(WHO)の1月第4週の報告によると、エボラ患者との接触が事前に把握されていた新規患者は、ギニアとリベリアでは全体の半数にも満たず、シエラレオネについては情報がない。デ・ル・ヴィンヌは「たった1件の症例であっても流行を再発させる恐れは十分にあります。エボラウイルスに接触した人を1人残らず特定するまでは、気を抜けません」と注意を促す。

エボラ感染者と接触した人を追跡するための情報共有は、流行地域の3ヵ国でもほとんど行われていない。この地域では国境を越えた往来が盛んなことから、未感染地域に感染が及ばないように、3ヵ国の疫学的監視体制の連携が求められる。その認識に基づく取り組みが行われていないのだ。

都市圏外は急速に改善、首都はなお危機に——シエラレオネ

MSFと保健省が住民たちに抗マラリア薬を配布した MSFと保健省が住民たちに抗マラリア薬を配布した

直近の2週間のエボラ症例数は、2014年8月以降で最も少なかった。カイラフン県など都市圏外の状況が急速に改善している。MSFは同県で6月下旬に活動を開始。健康教育、感染者と接触した人の追跡調査、状況観察に早い時期から重点を置いた包括的な対策や複数の他団体との協力が、感染制御に役立ったとみている。12月12日以降、新規症例は確認されていない。

一方、首都フリータウン、西部地域の地方県、ポート・ロコ県などでは大流行が続いている。MSFのエボラ治療センターの中で最も活動が盛んな施設はフリータウンのプリンス・オブ・ウェールズ高校の敷地内にあり、1月24日時点の患者数は30人。

首都のスラム地区は人口過密で、感染抑止が特に難しい。そのほかの場所でも、エボラ患者と接触した人の追跡調査が組織的に行われておらず、多くの調査対象者が自宅に強制隔離され、食糧や水が不足することさえある。こうした隔離策を恐れ、病気の家族の早期治療を控える世帯も出てきかねない。

MSF緊急対応コーディネーターのカルリーネ・クライエルは「2次的な問題として、公的保健医療体制が機能していないことが挙げられます。国内の保健医療従事者の10%がエボラに命を奪われました。医療施設は混乱に陥り、エボラ以外の病気の患者が必要な治療を受けにくくなっているのです」と指摘する。

1月第4週には、フリータウンの住民180万人がMSFから抗マラリア薬を受け取った。エボラ流行時の配布活動としては過去最大規模となった。

偏見おそれ治療を避ける人も——ギニア

MSFのエボラ対策についての講習を受ける住民たち MSFのエボラ対策についての講習を受ける住民たち

ギニアでも新規症例数が激減。しかし、全国33県のうち14県で現在も"流行中"とされている。新規症例は、状況が落ち着いたとみられていたボケ、ダボラ、シギリの各県などで報告されている模様だ。

疫学的監視のほか、健康教育や地域社会の動員も不十分で、現在も目立った進展は見られていない。MSF緊急対応コーディネーターのヘンリー・グレイは「保健医療従事者も回復者も偏見の対象になっています。人びとは治療を受けることに依然として及び腰で、エボラ治療センターに疑いと不安の目が向けられることも少なくありません」と明かす。

MSFは現在、国内2ヵ所でエボラ治療センターを運営している。また、疫学的監視、地域社会の動員、感染制御についての研修を実践。緊急対応チームを組織し、新たに発生したニーズの充足に取り組んでいる。

症例数は全国で5件のみに——リベリア

MSFが運営する「ElWA3」では患者が2人となった MSFが運営する「ElWA3」では患者が2人となった

リベリアのエボラ症例の減少は最も急速で、報告されている確定症例は全国で5件となった。2015年1月17日、首都モンロビアでMSFが運営するELWA 3エボラ治療センターでは、開設以降初めて、患者のいない日となった。1月26日時点でもわずか2人にとどまっている。

リベリアの公的保健医療は以前からぜい弱で、エボラ流行で大打撃を受けた。多くの病院が閉鎖されている。その一部は再開されたものの、エボラ感染のリスクを抑えること、一般市民の信頼を取り戻すことを達成するためには、感染制御が欠かせない。MSFは感染予防・制御について13医療施設を支援している。また、モンロビアでベッド数100床の小児病院の開設を進めている。

さらに、緊急対応チームが、移動診療や地元医療スタッフを対象としたトリアージ・感染制御の研修を提供し、地域の基礎医療の不足を補っている。2014年10~12月の期間には、モンロビア市内の約60万人に抗マラリア薬を配布し、マラリア感染被害の緩和を図っている。

今回のエボラ流行でMSFが治療した患者は延べ約5000人に及ぶ。これは、感染確定例全体の約25%を占める。また、リベリアでは英オックスフォード大学に、ギニアではフランス国立保健医学研究所(INSERM)に協力し、実験的治療薬の臨床試験の場を提供している。3ヵ国で活動中のMSFスタッフは合計4000以上に上る。

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