ヨルダン: 紛争被害者対象の再建外科を拡充——MSF新病院で無償提供

2015年01月14日掲載

MSFの再建外科プログラムで治療を受けるシリア内戦の被害者(2013年11月撮影) MSFの再建外科プログラムで治療を受ける
シリア内戦の被害者(2013年11月撮影)

国境なき医師団(MSF)は、ヨルダンの首都アンマンに、アラブ地域の紛争被害者を対象とした再建外科専門病院を新設し、間もなく患者の受け入れを開始する。被害者を無償で治療する病院としては最大規模だ。

同病院は、2014年6月から改修や増築を進めてきた。8階建てでベッド数は150床。MSFの建築、ロジスティック、医療各分野の各チームが、患者の治療にふさわしい設備と、健康や運動機能の回復のために適切な環境を備えた最高水準の病院となるよう精力を注いでいる。

MSFはアンマンの再建外科プログラムで、アラブ地域の紛争で負傷した人びとを治療してきた。重傷者の治療には時間がかかり、患者の自国での適切な処置が難しいためだ。MSFは、専門外科医療、理学療法、心理ケアを無償で提供している。本プログラムは2006年に始まり、イラク、シリア、イエメン、パレスチナのガザ地区、エジプト、リビアから合計3700人以上を受け入れてきた。患者は手術とリハビリの複合的な治療を受けるため、滞在期間は平均で半年、長ければ2~3年に及ぶこともある。

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多剤耐性菌の感染者にも対応

MSFが建設中の再建外科専門病院 MSFが建設中の再建外科専門病院

MSFがアンマンで提供している再建外科プログラムには、イラクやシリアなど紛争が続いている地域から患者が搬送されてくる。MSFではこうした医療ニーズへの対応について議論を積み重ねた結果、新病院に移転してプログラムを拡大することに決定した。紛争被害者とその介護者を対象とした援助の質を向上させる第一歩ともなる。

再建外科プログラムは、整形、形成、顎(がく)顔面の3分野の外科医療を継続する。新病院では労働条件や衛生条件などの環境も全面的に改善する。また、新たな外科医療分野を追加し、感染症患者の治療により適した環境を整える余地も広がる。

アンマンでMSF外科コーディネーターを務めるラシード・ファクリ医師によると、このプログラムでは、多剤耐性菌(※)への対応が課題となっている。患者の約半数が多剤耐性菌の感染症にかかった状態でアンマンにやって来るという。「新病院では、無菌環境や感染者を隔離する能力が向上するため、感染症例への対応を拡充できるでしょう」

  • 複数の治療薬が効かなくなっている細菌

複数回の手術からリハビリまで総合的に援助

紛争被害者には複数回の手術が必要となる場合があり、すべての手術が終わるまで滞在を求めることもある。こうしたケースも含めたプログラムの全活動が、設備の整った新病院に集約される。さらに、MSFが病院運営の専門的経験を深め、学術界との連携を進めるための新たな道を開くことも期待される。

ヨルダンとイラクを担当するMSF活動責任者のマルク・シャカールは「最終目標は規模の拡大ではなく、治療と患者の受け入れ態勢の向上にあります」と話す。新病院では、病床不足を理由に、継続的な入院治療が必要な患者を退院させる事態を回避できる。また、手術室も3室に増え、その機能も最善のものとなる。

シャカールは「MSFの本プログラムでは、負傷の治療だけでなく、運動機能を回復し、身体障害を回避することを目指して最大限の援助を行っていきます」と話す。

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