抗生物質耐性:中東地域の問題は深刻——専門家が対策の推進を提唱

2014年10月03日掲載

抗生物質耐性は世界規模の問題となっている 抗生物質耐性は世界規模の問題となっている

国境なき医師団(MSF)は、9月21日と22日、ヨルダンの首都アンマンで抗生物質耐性に関する学会「中東における抗生物質耐性─多剤耐性感染の予防と治療における知見」を開催した。学会には中東諸国の医療専門家、病院の医療スタッフ、学術研究者ら80人が出席、抗生物質耐性感染症が地域の公衆衛生の大きな脅威であるという見解で一致した。また、取り組み策として、各分野の意思決定者と実践者が解決策の模索と遂行にいっそう注力すべきという共通認識も得られた。

症例数は警戒水準に

同学会に集ったヨルダン、イラク、レバノンの学術研究者や公衆衛生関係者らは、中東地域で抗生物質耐性の症例数が警戒水準にあること、様々な医療サービスで抗生物質の乱用が広がっていること、感染制御活動が十分になされていないこと、各国の疫学的調査体制が不十分あることを説明。他方で、武力紛争から逃れようとする人びとの移動が、超薬剤耐性菌の拡大を加速させている可能性もあると指摘した。現在開発中の新しい抗生物質は少ないため、当面は既存の抗生物質の使用に注意を払い、治療やケアに起因する感染を防ぐ努力が重要と結論した。MSFも中東の紛争被害者や難民の治療に関する経験で得られたデータを発表し、同様の結論を述べた。

学会では、今後の対策に重要なステップとして、次の点があげられた。

  • 処方箋を必要としないOTC抗生剤の販売規制の拡大
  • 抗生物質を欲しがる患者を減らすためのPR活動
  • 気管支炎や一般的な風邪のような細菌性疾患ではない病気に抗生物質を処方しないための医療従事者を対象とした教育の向上
  • 病院における抗生物質耐性対策の確立
  • 公的資金による抗生物質耐性菌監視体制の支援

専門家のネットワーク必要

参加者の1人、英国カーディフ大学ヒースパーク病院の医学微生物学・抗生剤耐性学教授、ティモシー・ウォルシュ氏は「中東には専門家のネットワークが必要」と述べ、抗生物質耐性対策には専門家の連携構築が欠かせないと指摘する。また、フランスの世界反抗生物質耐性同盟(WAAAR)会長のジャン・カルレ医師も「この学会で始まった議論を、病院外での抗生物質使用の問題まで拡大することも重要になるでしょう」と、同様の連携の重要性を強調した。

学会出席者はさらに、適切な抗生物質の処方に関する意識向上の必要性と、明確な指針の重要性も指摘。アンマンのMSF外科プログラムで感染制御看護師モハメド・バセルは「抗生物質の処方箋乱発が一般化しています。さまざまな保健医療分野の専門家の協力を得ながら、周知活動を推進することも最優先事項の1つです」と述べている。

ヨルダンとイラクにおけるMSFの活動責任者、マルク・シャカルは「本学会がきっかけとなり中東地域の専門家の連携が、この問題に対する実践的な歩みへとつながることを願うとともに、こうした議論を続けていくための基盤も重要と考えます。MSFもこの問題に関する具体的な活動と協力を続けていきます」と話している。

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