エボラ出血熱:各国政府はなぜ動かないのか——MSF、再び緊急声明

2014年09月17日掲載

国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師が、2014年9月15日に、スイスのジュネーブで行ったスピーチの日本語訳です。

国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長 ジョアンヌ・リュー医師の声明

私は2週間前にニューヨークで、国連加盟国に対し、西アフリカで起きているエボラ出血熱の流行阻止に関する緊急声明を出しました。他にも米国疾病対策センター(CDC)、世界保健機関(WHO)国連など多くの機関・団体が、エボラ流行の深刻さを訴えています。

今年8月にエボラら治療センターを視察したジョアンヌ・リュー医師 今年8月にエボラら治療センターを視察した
ジョアンヌ・リュー医師

しかし、この2週間で、流行地域での活動開始を約束したのは、米国、英国、中国、フランス、キューバ、EUだけです。米国のオバマ大統領は、西アフリカにおける軍事・医療援助展開を発表する予定だと聞いています。MSFはその詳細をまだ把握していませんが、米国が手本となってリードしていく意思を感じます。他の国もこれに続く必要があります。

現在、流行地域での対応は危険なほど遅れています。だから私は、2週間前に出した緊急声明を繰り返さなければならないのです。

どうか現地に入ってください。エボラ流行を食い止めるには、もうわずかなチャンスしか残されていません。今すぐ、もっと多くの国が、率先して、大規模に、活動を展開する必要があります。しかもその活動は、明確な指揮系統のもと、連絡、調整、準備、実施されていかなければなりません。

リベリアの首都モンロビアでは現在、MSFのエボラ治療センターの前に行列ができています。家族に感染させず、安全に隔離してもらえる場所がほかにないからです。しかし、悲劇的なことに、MSFは行列を作っている人に「帰ってください」と言わなければならない事態が続いています。全員を受け入れる余力がないからです。感染者は自宅へ帰るしかなく、その結果、周囲の人に感染し、エボラ流行が拡大しています。こうした事態はすべて、国際社会の対応が足りないことが原因で起きているのです。

MSFは現在、スタッフ2000人が流行地域で活動しています。エボラ治療センターは5ヵ所を運営し、合計で病床数530床以上を受け持っています。また、流行地域への医療物資の提供は420トンを超えました。MSFにはもう、余力がありません。民間団体であるMSFが、なぜ単独で、流行地域での隔離病棟・病床の大半を提供し続けているのでしょうか。正直なところ、理解に苦しんでいます。

エボラの今後の拡大は予測できません。世界は今、未知のものに対応しているのです。確実なことは、統計で示されているエボラ症例数は全体のごく一部だということです。過去の流行と比べ、今回は異例の速さで感染拡大しています。いくつもの集落が滅亡しつあります。エボラ対応は、完全に、致命的に、不足しています。患者は今も急増しています。週を追うごとに、必要な対応はより複雑になっていきます。

もっと多くの国が、民事・軍事の資金や物資を投じ、医療チームを派遣してエボラを食い止める義務を果たすべきです。専門研修を受けたスタッフが大勢必要です。治療施設で患者を診療・看護する人手が必要です。物資搬入・設置の観点から、開けた土地に素早く、隔離病棟やテント式診療所を設置していくことも必要です。

今回のエボラ対策は、感染を抑え込めばいいというだけではありません。エボラで数千人が亡くなっている一方、それよりはるかに多くの人びとが、簡単な治療で治るはずの病気で命を落としています。医療機関が機能しなくなっているからです。医療機関の再稼働にも支援が必要です。

有効性があるワクチン製造に向けた努力も続けなければなりません。ただ、ワクチンは安全性、効率、生産・流通量が担保されている必要があります。実現するまでは、私たちはワクチンは存在していないものとして行動していかなければならないのです。

世界が前例のないエボラの大流行にどう対応していくか。これは歴史に刻まれる事態です。経済面、社会面、安全保障面において、流行地域だけでなくはるか遠くの地域にまで影響が及ぶ可能性がある危機なのです。

各国政府には、エボラ流行を抑え込む政治的かつ人道的な責任があります。責任を果たす唯一の方法は、人材・物資・資金を流行地域に送り、エボラの最前線で闘うことです。数ヵ国によって、最初の支援表明はなされました。より多くの国がこれに続いてください。急いでください。エボラを抑え込めるタイミングが、過ぎつつあるのです。

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