危機のベネズエラ 国境なき医師団が必要とされている

2019年07月30日

Marta Soszynska/MSFMarta Soszynska/MSF

食糧不足、大規模停電、断水、物価のすさまじい上昇——。南米ベネズエラの情勢は悪化の一途をたどっている。

「一般家庭も、保健医療施設も大きな影響をうけています。MSFが活動する地域の病院や診療所でも、長らく医療物資や人材が不足し、水道や衛生設備も適切に動いていません」。MSF緊急支援マネージャーのタラ・ニューウェルは説明する。

首都で

MSFは2016年から首都カラカスの地元団体や公共機関と協力し、性暴力などの被害者らに対し、心と身体の両面で治療をしてきた。2019年1~6月、メンタルヘルスに悩む1635人を治療し、327回のグループセッションを催し、性暴力に遭った患者100人を助けた。

6月、さらにどんな保健ニーズがあるか調査を始めた。また、首都カラカスにある中核病院バルガス病院(302床)でリハビリ部門を開設。保健当局と連携した活動で、2年かけて、人材の研修や物資調達などにも活動を広げる。 

広がるマラリア ボリバル州・スクレ州

マラリアのように予防できる病気も広がっている。ベネズエラの保健医療が機能していないのが原因で、流行を防ぐ対策を打てていない。

急速にマラリアが広がるのが東部ボリバル州シフォンテス。非公式の金鉱が無数にあり、人々が絶え間なく移動し、生活環境もよくない。ここに、マラリア対策プログラムの深刻な資源不足が重なって、マラリア拡大に拍車をかけている。

マラリアをめぐって、MSF は2018年から、約29万人の検査をし、患者約16万2000人を治療してきた。感染を防ぐため、蚊帳約7万6000張を配布。2019年2月からは、カリブ海に臨む北部スクレ州カルパノのマラリア研究所と協力し、症例の特に多い4地域で、物資を提供したり、データ収集を助けたりしている。また、健康教育をしたり、媒介生物対策をしたりするほか、医療スタッフの研修や、新規症例の判別・診断・治療支援にも携わる。 

蚊帳を配布するMSFスタッフら=2019年2月、ボリバル州シフォンテス Diana Puyo/MSF蚊帳を配布するMSFスタッフら=2019年2月、ボリバル州シフォンテス Diana Puyo/MSF

プライマリ・ヘルスケア アンソアテギ州

スクレ州の西隣アンソアテギ州では地元団体「フェ・イ・アレグリア」と連携。州都バルセロナ近郊にあるエル・ビドノという地域に暮らす困窮世帯向けに、プライマリ・ヘルスケアを提供している。地元の学校を拠点にしており、家族計画、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、性暴力、マラリアといった分野で対応できる。計756世帯が対象で、扱った件数は3547件にのぼった(2019年1~5月)。 

MSFはいま、武力衝突を含む、経済・政治・社会危機から起きる医療ニーズにも対応できるように態勢を整えている。また、国境を接するコロンビアやブラジルに逃げ込むベネズエラ移民らの医療支援にも乗り出している。

MSFは2015年からベネズエラで継続的に医療支援活動をしてきた。現在、首都カラカスのほか、ボリバル州、スクレ州、アンソアテギ州で活動。2016年~2018年、北東部のマラカイボでも医療を提供していた。MSFのベズエラでの活動はすべて世界中の個人からの民間寄付でまかなっている。  

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