「水が引くのを道端で待つしかない」感染症の広がりも パキスタン大洪水
2022年10月04日
8月末に大洪水によって国土の3分の1が水没したパキスタン。これまでに1500人以上が犠牲となり、被災者は3300万人にのぼる。洪水が引くまでには数カ月かかるとみられ、家を失った多くの人びとが食料や飲み水、避難テントなどを入手できない状況が続いている。
南西部バルチスタン州で緊急対応にあたる国境なき医師団(MSF)のコーディネーター、シャヒード・アブドゥラが現地から状況を報告する。
南西部バルチスタン州で緊急対応にあたる国境なき医師団(MSF)のコーディネーター、シャヒード・アブドゥラが現地から状況を報告する。
援助活動の難しさ 取り残される人びとも
多くの人びとが家を失い、道路の脇で過ごしています。そこでは蚊帳や衛生用品パック、食料などの援助物資が配られていますが、主要な道路から離れた場所に住む人たちは、洪水で移動できず、取り残されたままです。MSFは洪水が始まって以来、何の支援も受けていない人びとの元へ向かいました。そこで援助を行い、彼らが抱える健康上の問題を乗り切る手助けをしました。
水が留まったままだと体調不良が生じますが、状況の改善は見込めません。下痢やマラリア、皮膚病、目の感染症など、水を介してうつる病気の患者が増えています。
水が留まったままだと体調不良が生じますが、状況の改善は見込めません。下痢やマラリア、皮膚病、目の感染症など、水を介してうつる病気の患者が増えています。
課題は大きく山のようにあります──医師や看護師などの人材と医薬品の争奪戦が多くの地域で起きていて、洪水のせいで被害地域にたどり着くことも難しい状況です。私たちは救助に最善を尽くそうとしています。
泥壁の家屋が水に押し流され、ほぼ消え去ってしまったのを見ると、胸が張り裂けそうになります。
多くの場所で水位が高く、元の水位に戻るまで待つしかないのは、悲惨なものです。水の中に入って歩いたり泳いだりする人もいますが、多くの人は水が引くのをひたすら待つか、救助が来るのを待つしかないのです。
私たちが拠点とする町を出て小1時間ほど車を走らせると、そこはもう見渡す限りの水塊……地表から数メートルもの高さがある水です。町の中でも公共施設や地形に洪水の影響が見られます。
大勢の人がすべてを失い、道路脇に住んでいるため、清潔な水やトイレがありません。特に女性は、用を足すのに大変な苦労を強いられています。また、最高気温が50度に達する過酷な環境で、身を守ることも困難です。道端に座る人びとは、手編みのマットに布切れやビニールを重ねて日差しを遮るしかありません。
MSFの病院には、栄養失調で生まれた子どもが大勢います。以前からこの傾向は見られましたが、洪水によって悪化する可能性があります。すでに厳しい生活をしていた人たちが、さらに大きな打撃を受けているのです。
支援のニーズは膨大です。私たちは、ここにいて援助活動ができることをうれしく思います。
パキスタン洪水に対応中。ご協力をお願いします。
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