危険な場所へ行かずにすむ方法は? アイデアと工夫で生活を安全に

2018年10月09日掲載

「移動に車が使えない」「危険なので外出できない」「道が悪くて歩けない」など、医療・人道援助の現場では、さまざまな難題がある。国境なき医師団(MSF)のイノベーション部門は、援助が必要な人びとが直面している問題を解決するため、新しいテクノロジーだけでなく、すでにある物、またそれに手を加えたツールを試しながら、その問題を正しく理解して解決策を見つけ出している。 

命を救う「代用品」

植物の皮などから作られたバイオ固形燃料 (c)Igor G. Barbero/MSF植物の皮などから作られたバイオ固形燃料 (c)Igor G. Barbero/MSF

例えば、ナイジェリア北東部グウォザ。この地では紛争を理由に、車などの大きな乗り物が軍により禁じられている。そこでMSFチームは、現地で普及しているオート三輪「ケケ・ナペプ」を救急車に仕立てて使っている。またここでは、調理の際に「まき」の代わりに使う固形燃料も開発した。紛争下でのある問題を解決するために生まれたものだ。

「まきを探して軍の支配地域から出ると、人びとは反政府軍に襲撃されたり、拉致されたり、性暴力にあったりするのです」。MSFの避難民ユニットの責任者、アナ・サントスは話す。このユニットは、紛争や暴力を逃れて避難している人びとへの援助を担っている。開発した固形燃料は、 サトウキビや落花生の皮などのバイオ廃棄物を紙と混ぜ、押し固めて作るものだ。
 

固形燃料の材料は、 サトウキビや落花生の皮などのバイオ廃棄物 (c)Igor G. Barbero/MSF固形燃料の材料は、 サトウキビや落花生の皮などのバイオ廃棄物 (c)Igor G. Barbero/MSF

「現在、グウォザではおよそ600世帯ほどがまきの代わりにこの固形燃料を使っています。ここでは、ますます多くの人が自分で燃料を作るようになっています。危険な場所へ出る必要がなくなり、人びとは以前より安心して暮らせます」 

失敗に学び前に進む

車が使えない地域ではオート三輪を救急車にした (c)Nitin George/MSF車が使えない地域ではオート三輪を救急車にした (c)Nitin George/MSF

「失敗なしに生まれるイノベーションなどありません」と語るのは、MSFで技術革新を推進するイノベーション部門のシルヴィア・モリアーナだ。「ナイジェリアの固形燃料の開発は、人間を中心に置いたイノベーションの良い例です。今後は、ある地域でうまくいくと分かったものを別の地域でどのように展開するかが課題です」 

ナイジェリアでバイオ廃棄物から固形燃料を作る女性 (c)Igor G. Barbero/MSFナイジェリアでバイオ廃棄物から固形燃料を作る女性 (c)Igor G. Barbero/MSF

バングラデシュでは、雨期を前に特製ストレッチャーの開発を試みた。MSFのイノベーション部門がデザイナーに呼びかけて、ぬかるんだ難民キャンプでも移動しやすく、コレラ症例にも対応できる解決策を募った。

「アイデアは短期間で集まり、中には独創的なものもありました。しかし、十分に納得がいくものはありませんでした」とシルヴィアは話す。「手直しは避けて通れませんし、その解決策には既存のものに勝る付加価値があるかどうか、常に考える必要があります。これで医療活動がよくなるのか、患者が快適になるのか、現状をより理解できるようになるのか?」

簡単に答えられる問いばかりではない。どんな取り組みにも失敗のリスクは常にある。それでも、とシルヴィアは続ける。「失敗に学びつつ、前に進んでいかなければなりません」
 

関連情報