新年のごあいさつを申し上げます

2020年01月01日掲載

新年あけましておめでとうございます。

国境なき医師団(MSF)を代表して、旧年中に賜りましたご支援に心より感謝を申し上げますとともに、皆様の新年のご多幸とご健勝をお祈り申し上げます。

2019年、緊急事態への対応を含め、世界各地で医療援助活動を実施できたのは、ひとえに皆様の寛大なご厚意によるものです。いくつかの国でプロジェクトを完了するという喜ばしい展開があった一方で、他の多くの国々では、残念ながら、終わりの見えない人道危機によって緊急の医療・人道援助を要する状況が続いています。

アフリカのコンゴ民主共和国では、エボラ出血熱の流行が続きました。症例数は3000を超え、2000人余りが亡くなったと報告されています。状況は依然として深刻で、収束の見通しは立っていません。現地では反政府勢力と軍の対立が続いており、医療機関への襲撃も発生して、MSFの活動も一部撤退をせざるをえない事態に陥っています。

ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェールにまたがるチャド湖周辺地域では、武力衝突によって250万人以上が住まいを追われています。多くは難民キャンプや避難先のコミュニティに身を寄せていますが、貧困、食糧難、感染症の流行、医療体制の不備にあえぐ地域住民にとっても、大きな負担となっています。MSFは2019年、地域の複数の拠点で急患への対応やマラリアの治療、産科医療や集団予防接種を行いました。

カメルーンにおける小児医療援助 © Pierre-Yves Bernard/MSFカメルーンにおける小児医療援助 © Pierre-Yves Bernard/MSF

地中海では、紛争や迫害、貧困を逃れるため、大勢の人が欧州を目指す過酷な旅に挑んでいます。しかし安全とは言い難い旅の過程で人身売買業者の手に落ちる人や、リビアで不当に拘束され、暴力や搾取を受ける人が多くいます。MSFは2018年末に活動停止を余儀なくされた地中海での海難捜索・救助活動を昨年7月に再開。また、リビアの収容施設や、欧州側の難民キャンプで医療援助活動を行っています。

中東のシリアでは混迷を深める紛争が8年続いており、命を奪われた人びとの数は37万人を超えました。また、国民の半数にあたる約1300万人が住まいを追われ、国内外に逃れています。2019年10月以降は隣国トルコの軍事作戦に端を発する安全上の理由から、MSFは北西部での活動の大半を中止せざるをえませんでした。人道援助団体もたびたび攻撃を受け、活動が妨害される中、MSFは病院・診療所を運営または支援し、避難民キャンプを遠隔支援する体制を維持しています。

イエメンでは無差別爆撃と、物資や人材の慢性的な不足により、国内の医療施設の半数以上が閉鎖に追い込まれています。近年のコレラやジフテリアの流行と、戦闘の激化で、もとより深刻な人道危機状況は悪化しました。2015年の内戦ぼっ発以来、住まいを追われた人は300万人を超えています。2000万人が人道援助を必要とすると推定されるイエメンでの活動は、MSFの世界各地における活動の中でも最大規模となっています。

イエメンで手術にあたる滝上隆一外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSFイエメンで手術にあたる滝上隆一外科医 © Agnes Varraine-Leca/MSF

日本に近い南アジアのバングラデシュには、90万人を超えるイスラム少数民族のロヒンギャの人びとが竹製の粗末な家で避難生活を続けています。そのうち75万人以上は、2017年8月に祖国ミャンマーで発生した軍の襲撃を逃れてきた人たちです。避難先では移動も就労も制限され、人道援助だけが頼みの綱です。劣悪な生活環境が原因で感染症にかかる人も多く、MSFの診療所では2017年8月からの約2年で130万件あまりの診察を行いました。

政情不安が続く南米のベネズエラでは、政治的・経済的危機が市民の暮らしと医療体制に大きな障害をもたらしています。MSFは、薬・人材・機器の不足や給水・給電の問題など、把握できたニーズに合わせて、都市部と地方の両方においてプロジェクトを展開し、弱い立場にある人びとを襲う危機に対応しています。

以上のような緊急対応に加え、MSFは、はしかやマラリア、HIV/エイズ、結核、C型肝炎などの感染症の予防と治療を実施するとともに、紛争被害者や事故・テロなどによる負傷者を対象とした再建手術と心理ケア、また、妊産婦と新生児のケアなど、幅広い医療援助活動を行いました。

皆様のご支援とMSFに寄せてくださる信頼は、私たちの活動継続を可能にするばかりでなく、より多くの人びとに医療援助を届ける責任感を私たちに与えてくださいます。

今年も皆様とともに、MSFを支援してくださる方々の輪を広げられるよう、また、多くの方々に人道援助活動の意義を理解して頂けるように取り組んでまいります。
それがどこであろうと、その人が誰であろうと、医療援助を必要とする人びとに援助を届けるため、独立・中立・公平な組織として最善を尽くしてまいります。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

国境なき医師団日本
会長 加藤寛幸
事務局長 ジェレミィ・ボダン
 

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