「地面がむき出しの床に雑魚寝」過密な避難生活で感染症がまん延

2019年01月17日

エチオピア南部諸民族州ゲデオ地域の避難民キャンプ © Markus Boening/MSFエチオピア南部諸民族州ゲデオ地域の避難民キャンプ © Markus Boening/MSF

「数万人もの避難者がすし詰め状態で空き家に身を寄せ、地面がむき出しの床で寝泊りしています」こう話すのは、国境なき医師団(MSF)緊急対応コーディネーターのジョシュ・ローゼンスタイン。「劣悪な生活環境と清潔な水の不足によって、下痢や呼吸器感染、寄生虫症などの感染症がまん延しています」。 

緊急対応コーディネーターのローゼンスタイン © MSF緊急対応コーディネーターのローゼンスタイン © MSF

エチオピア各地で、武力衝突によって家を追われる人びとが急増している。避難者らが食糧、住居、医療など最低限の公共サービスを利用できるよう、MSFは継続的な対策を求めている。

2018年5月に発生した大規模な武力衝突を受け、MSFは7月から南部諸民族州ゲデオ地域とオロミヤ州グジ地域で緊急対応を展開。ロジスティックチームは衛生環境の整備をすみやかに開始し、清潔な水のトラック輸送や給水設備の修理・設置を行った。

緊急対応の開始直後、避難民キャンプにて。初動対応は清潔な水の手配が優先だ © Markus Boening/MSF緊急対応の開始直後、避難民キャンプにて。初動対応は清潔な水の手配が優先だ © Markus Boening/MSF

一方、医療チームは計11ヵ所の医療施設と移動診療11件を支援し、7~12月に約8万件の診療を実施。栄養失調児や性暴力被害者の治療、心のケアはしかの予防接種を行い、救援物資を配布した。 

グジの移動診療所で診察を待つ患者ら © Igor Barbero/MSFグジの移動診療所で診察を待つ患者ら © Igor Barbero/MSF

半年が過ぎ、避難者の健康状態が安定したことから、医療活動はエチオピアの保健当局と他団体に引き継がれることになった。

「深刻な病気は減少し、重度急性栄養失調児の数も減りました。雨期が終わり、感染症のリスクも下がっています」。エチオピアのMSF活動責任者モハメド・モーシドはこう説明する。緊急対応の終了に合わせ、MSFは一般的な病気の治療キットなどの支援物資を2ヵ月分寄贈した。 

MSFが支援するグジの診療所を後にする子どもたち © Igor Barbero/MSFMSFが支援するグジの診療所を後にする子どもたち © Igor Barbero/MSF

ゲデオ・グジ両地域の状況は改善したとはいえ、今なお多数の避難者が不安定な境遇に置かれ、キャンプや教会の敷地、親類や友人のもとに身を寄せている。また、民族間の緊張や暴力行為もいまだに散発しており、直近の数週間で新たな避難者も発生。予断を許さない状況だ。 

建設中の仮設テント前に立つ子どもたち。グジの避難民キャンプにて © Igor Barbero/MSF建設中の仮設テント前に立つ子どもたち。グジの避難民キャンプにて © Igor Barbero/MSF

MSFは今後も国内の状況を注視し、新たな暴力や健康状態の悪化、栄養失調の再流行などが発生した場合に、必要に応じて緊急対応できるよう体制を整えている。また、活動拡大に備えるよう他団体にも呼びかけている。

モーシドはこう訴える。
「国家、地方、地域レベルでの努力が肝要です——医療や住居、食糧など、避難者の差し迫ったニーズに応えるために」 

MSFは過去30年以上エチオピアで活動。国内全域で栄養失調、マラリア、急性水様性下痢といった緊急事態に対応してきた。国の保健当局・機関や他団体とも連携しながら、無償で質の高い医療を提供している。

今回の緊急対応では、ゲデオ・グジ両地域で病院2ヵ所、診療所4ヵ所、小規模医療施設5ヵ所、移動診療11件を支援。2018年7~12月には約8万件を診療し、重度急性栄養失調の5歳未満児約6000人を治療した。8月にはゲデオ州保健局の協力のもと、15歳未満の子ども10万3000人以上にはしかワクチンを接種。その他、心のケア、性暴力被害者の治療、必須援助物資の配給も行った。ロジスティック面では、8月からの5ヵ月間で清潔な水計280万リットルをトラック輸送した。

MSFはすべての紛争当事者や政党から完全に独立し、民族、宗教、性別、党派に関わらず支援を必要とする人びとへ医療援助を届けている。 

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