新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応【最新情報】

2021年12月20日
新型コロナウイルス感染症の患者のケアにあたるスタッフ(南アフリカ) © MSF/Chris Allan
新型コロナウイルス感染症の患者のケアにあたるスタッフ(南アフリカ) © MSF/Chris Allan

最新情報

10月15日掲載:新型コロナウイルス危機対応募金 受付終了のお知らせとお礼

2020年3月26日に開始した「新型コロナウイルス危機対応募金」の受付は、日本国内における資金調達目標額2380万ユーロ(約29億円)に達したため、2021年10年15日に終了しました。ご支援誠にありがとうございました。国境なき医師団が世界各地で現在も行っている新型コロナウイルス感染症への対応と、感染症拡大の影響に伴うその他の援助活動は、使途を指定しない一般寄付から必要な資金を充当します。

1月18日掲載:WHO推奨のコロナ治療薬 価格はジェネリック薬なら400分の1

11月29日掲載:新たな変異株でWTO閣僚会議が延期 いまこそコロナ知財保護の免除で世界の連帯を

11月25日掲載:ファイザー、新たなコロナ飲み薬でライセンス供与も「不十分で持続的ではない」

10月14日掲載:シリア北部:過去最悪の新型コロナ感染拡大──ひっ迫する医療体制

活動概要 世界70を超える国と地域で対応

対応の手順を確認するスタッフ(インド)<br> © Aahana Dhar/MSF
対応の手順を確認するスタッフ(インド)
© Aahana Dhar/MSF
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での感染拡大に伴い、MSFは各地で医療援助活動を行っている。これまでに、70を超える国・地域で新型コロナウイルスに関する援助を提供してきた。

医療機関における感染予防・制御に関する取り組みをはじめ、新型コロナウイルス専門の治療センターの設置、感染者の治療、感染予防のための健康教育など、幅広い活動を実施。特に、医療や衛生面で脆弱な環境に暮らす難民・避難民など、弱い立場に置かれた人びとへの支援に力を入れている。

また、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬などが、「世界の公共財」としてあらゆる人びとに公平に行き渡るよう、各国政府をはじめとした国際社会に訴えている。

新型コロナウイルス感染症への対応 5つの柱

①弱い立場に置かれた人びとを支える
過密状態のキャンプに暮らす難民や移民など、感染のリスクが高く、医療へのアクセスが限られた環境に暮らす人びとを支援。

②新型コロナ以外の医療課題への対応を継続
感染予防対策を十分に行い、母子保健やHIV、結核など、人びとが必要とするさまざまな医療ニーズに継続して対応。

③医療従事者の安全を確保
新型コロナウイルスやさまざまな医療ニーズに対応し続けられるよう、個人用防護具の提供などを通し、医療従事者を感染から防ぐ。

④高齢者など重症化リスクの高い人びとを守る
施設に入居している高齢者や、糖尿病やHIV、結核などの病気を患っている人びとなどを感染から守る。

⑤公平な分配を
新型コロナウイルスのワクチンや治療薬、診断ツールなどが世界で公平に分配されるよう、各国政府への対応を求める。

2020年活動ハイライト

マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 321万
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 778
新型コロナに関する支援を行った介護施設の数 983
医療機関で行った感染予防・制御に関する研修数 30万1000
新型コロナウイルスの患者の入院対応件数 1万5400
治療を行った、新型コロナウイルスの重症患者数 6000

異例の1年──2020年、パンデミックへの対応

新型コロナ病棟で治療を受ける女性<br> (ベネズエラ) © Carlos Becerra/MSF
新型コロナ病棟で治療を受ける女性
(ベネズエラ) © Carlos Becerra/MSF
2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、世界は深刻な危機に見舞われた。有効な治療法が見つからないまま患者が増え続け、個人用防護具や医療物資は猛スピードで在庫が減り、経済や医療体制の差を問わず各地で医療崩壊のリスクにさらされた。

2020年末までに全世界で8200万人余りが新型コロナウイルスに感染し、推定182万人の患者が新型コロナウイルス感染症に関連する理由で命を落としたとされる。

MSFは、2020年1月には最初の新型コロナウイルス感染症プログラムを開始し、3月からは世界各地で対応を急速に拡大。医療事情のもともと悪い国や紛争地域から、医療リソースの豊富な中高所得国まで、さまざまな医療従事者や地域社会とともに活動した。

医療機関を支援し、医療従事者を守る

病院の入り口での検温(中央アフリカ共和国)<br> © Adrienne Surprenant/Collectif Item
病院の入り口での検温(中央アフリカ共和国)
© Adrienne Surprenant/Collectif Item
MSFは、2020年に世界で770カ所余りの医療機関に新型コロナウイルス感染症の技術、研修、物資による支援を行った。多くの国で、感染予防・制御策を実施したほか、水の供給と衛生環境の改善、手洗い場の設置などを行った。

また、医療従事者をはじめ保健医療に関わる人びとを対象に、数多くの研修を実施。患者を安全に受け入れて治療する方法、患者の優先順序に従ったトリアージ区画を作る方法、病院での患者の流れを改善する方法などを研修で伝えた。

支援活動の一環として、現場の医療従事者へのカウンセリングや心のケアも行った。さらに156カ所の病院や治療センターで、MSFの医療チームが新型コロナウイルス感染症の患者を直接治療し、新型コロナ専用に4300床を上回るベッドを設置した。
 

新型コロナウイルス感染症患者のケア

重症患者を搬送(イエメン) © Jacob Burns/MSF
重症患者を搬送(イエメン) © Jacob Burns/MSF
世界中のMSFが支援する医療機関や治療センターで、新型コロナウイルス感染症の疑いのある外来患者の診療を約11万2000件行ったほか、約9万件の検査を行った。1万5400人余りの患者は入院が必要で、6000人余りの患者は呼吸サポートなど集中治療が必要な重症者であった。

最も診療数が多かったのが、バングラデシュ・コックスバザール県の難民キャンプにおけるプロジェクトで、2020年には感染疑い患者の外来診療を2万2000人余り対応。アフガニスタンや、ギリシャの島々の難民キャンプ、ベネズエラなどでも多くの患者に対応した。入院を必要とする重症患者の数が最も多かったのは、イエメンの1950件だった。

弱い立場に置かれた人びとのもとへ

シリア北西部での衛生用品キットの配布<br> © MSF
シリア北西部での衛生用品キットの配布
© MSF
MSFは、移民や難民、ホームレスに、シェルターや住居、隔離の場所を提供した。また、イタリアでは多くの刑務所でも支援活動を行った。

多くの介護施設では新型コロナウイルス感染症の感染率が高く、入居者やスタッフの心身の健康が急速に悪化していたため、MSFチームは欧州各国やブラジルなどの1000カ所近くの長期ケア施設で心理社会面のカウンセリングや心のケアを行いながら、感染予防・制御策の改善に努めた。 

検査ツール、治療薬、ワクチンの公平な分配を

難民キャンプの人びとに感染の検査を行う(ギリシャ)<br> © Enri CANAJ/Magnum Photos for MSF
難民キャンプの人びとに感染の検査を行う(ギリシャ)
© Enri CANAJ/Magnum Photos for MSF
MSFは、弱い立場に置かれた人びとのための国際保健アドボカシーのリーダーとして、パンデミック対策に必要な物資や機器の増産と、新型コロナウイルス感染症の検査ツールや治療薬、ワクチンの公平な分配に焦点を当てたアドボカシー活動を積極的に進めてきた。
特に、新型コロナに関する医薬品、検査ツール、ワクチンを通して利潤追求は行わず、各国政府が特許権などの知的財産権を一時停止することで、普及を徹底して価格を引き下げ、より多くの命を救うことを求めている。

2020年4月、複数の団体と世界保健機関(WHO)やGavi ワクチンアライアンスなど国際保健に関する組織が協力し、新型コロナの検査ツール、治療薬、ワクチンの公平な分配を目指す「ACTアクセラレータ」が立ち上げられた。

MSFはこのような枠組みを、新型コロナ関連の保健医療ツールの公平なアクセス確保への重要な一歩として歓迎する一方で、世界全体の分配に十分に対応ができないのではとの懸念も示している。
2020年末には数種類の新型コロナ治療薬やワクチンが実用化され、MSFは製薬会社、各国政府、Gaviワクチンアライアンスや世界貿易機関などの国際機関に向けて、公平な分配を呼び掛けてきた。

また、COVAXファシリティが調達したワクチンの一部を、紛争下の人びとなど取り残される恐れのある人びとのために確保する「人道的バッファ」の確立に向け、WHOが主催する関係諸機関による議論に参加し、深く関わってきている。 

海外派遣スタッフの派遣回数

ロックダウンや移動制限によって世界の輸送網が寸断された結果、MSFの新型コロナウイルス対応は困難に直面した。民間の航空便は長期間欠航していたため、MSFは人道目的のチャーター便を手配し、世界各地へとスタッフを派遣した。

活動国への出入国には、移動、検査、隔離期間などに時間を要したものの、4月から12月までの間に海外派遣したスタッフは約4000人に上り、2019年の同時期と比べて25%の減少にとどまった。8月にはチャーター便の本数が大幅に減ったためMSFスタッフの移動は再び制限され、7月以来、派遣回数が再び前年の水準に達したのは12月だった。  

新型コロナウイルス感染症関連物資の供給先および内訳

医療機器や新型コロナ関連医療ツールの世界的な不足、交通網の混乱、各国の一時的な輸出入制限によって新型コロナ対応に必要な物資の輸送・供給が困難になる中、MSFのサプライセンターは、3月から5月にかけて、個人用防護具、医療機器、医薬品、検査用品など、約1億2500万点の物資を梱包。中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イエメンなど、紛争や人道危機によって、現地での物資調達が難しい場所でのプロジェクトに向けて発送した。

新型コロナウイルスへの備えと直接的な対応のために用意された品は、MSFが世界各地で行う活動に使う物資の約44%を占めた。  

「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」の金額推移と寄付額上位国

2020年3月下旬、MSFは新型コロナウイルス感染症対応にかかる活動と、パンデミックの影響を受けた既存のプロジェクトの大幅な経費増加に充てるため「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」を設立。

2020年4月から12月までに世界35カ所のMSF事務局を通して集められた金額は、1億2100万ユーロ(約147億5000万円)に上った。米国、日本、スイス、スペイン、ドイツ、イギリスからの寄付が全体の3分の2を占め、特に個人からの寄付が多く寄せられた。 

「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」項目別および国別支出内訳

パンデミックが始まってから2020年末までに、新型コロナウイルス感染症対応に関連した総額支出は、1億1780万ユーロ(約143億6000万円)に達した。医療活動と人件費が支出額の70%余りを占め、次いで旅費・宿泊費、事務費、物流・衛生活動費に充てられた。

また、MSFインターナショナルが中心となって進めるプログラム支援活動や国際的な啓発活動、およびアドボカシーキャンペーンにも130万ユーロ(約1億5800万円)を支出した。

新型コロナウイルス感染症危機対応募金から支出した費用の大部分は、人道危機下や紛争地でのプロジェクトで生じたものである。MSFが2020年に実施した新型コロナ関連の活動のうち、規模・費用ともに規模の大きかったイエメン、コンゴ民主共和国、バングラデシュ、南スーダン、イラクでの活動が、総支出の4分の1を占めた。  

地域別情報

中東と北アフリカ

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに<br> 関する活動を実施(右写真:イエメン)
地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに
関する活動を実施(右写真:イエメン)
中東・北アフリカ地域は、すでに大規模な人道的危機、長期化する紛争、政治的不安定の影響を大きく受けており、避難生活を送る大勢の人びとなどが必要な医療を受けることができない状態にあった。

そこに新型コロナウイルスの感染が広がり、以前から医療システムが脆弱な状態の人びとにさらなる負担をかけることとなった。 
マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 106,900
感染予防啓発などの健康教育講座の実施数 34,806
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 47

(2020年9月~12月)

イエメン

イラク

レバノン

シリア

パレスチナ

避難民キャンプの移動診療所で子どもの健康状態を確認(シリア) © OMAR HAJ KADOUR/MSF
避難民キャンプの移動診療所で子どもの健康状態を確認(シリア) © OMAR HAJ KADOUR/MSF

アジア

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに<br> 関する活動を実施
地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに
関する活動を実施
2020年末には特にインド、インドネシア、バングラデシュ、ミャンマーで高い感染率と死亡者数の増加が報告された。MSFは、医療へのアクセスが限られている人びとへの支援と、医療機関のスタッフの保護に重点を置いて8カ国で活動した。 
感染予防啓発などの健康教育講座の実施数 143,700
マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 141,000
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 19

(2020年9月~12月)

日本

仮設診療施設で患者を診察したMSFスタッフ © MSF
仮設診療施設で患者を診察したMSFスタッフ © MSF

香港

アフガニスタン

ヘラートで重度の新型コロナウイルス感染症患者数が増加したことを受け、9月から一時休止していた治療センターでの受け入れを再開した。また、ヘラート地域病院でのスクリーニングとトリアージ活動を継続している。

ヘルマンドでは、新型コロナウイルス専門病院であるマリカ・スラヤ病院を支援。ブースト病院では、患者数の減少を受け、新型コロナウイルスのベッド数を減らす方向にある。

カンダハルでは、10月末に患者数が急増したことを受け、保健省の医療スタッフを対象に新型コロナウイルスに関する再教育訓練を実施した。また、新型コロナウイルスに感染またはその疑いのある多剤耐性結核患者の入院と治療のための隔離ユニットを設置した。(11月時点)

パキスタン

バングラデシュ

コックスバザールの病院でフェイスシールドなどの<br> 防護具を付けて作業にあたるスタッフ<br> © MSF/Daniella Ritzau-Reid
コックスバザールの病院でフェイスシールドなどの
防護具を付けて作業にあたるスタッフ
© MSF/Daniella Ritzau-Reid

フィリピン

カンボジア

インド

ウイルスの感染予防法などを伝えるMSFスタッフ(香港)© Shuk Lim Cheung/MSF
ウイルスの感染予防法などを伝えるMSFスタッフ(香港)© Shuk Lim Cheung/MSF

欧州

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに<br> 関する活動を実施(右写真:ギリシャ)
地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに
関する活動を実施(右写真:ギリシャ)
欧州の病院、介護施設、脆弱なコミュニティにおける主な活動は2020年5月下旬に終了したが、秋以降に欧州各地で第2の波が発生したため、新型コロナウイルスに関する活動の再開や開始をした。また、東欧や中央アジアの国々での活動を継続した。 
感染予防啓発などの健康教育講座の実施数 3,700
マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 15,250
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 21

(2020年9月~12月)

イタリア

スペイン

ベルギー

フランス

スイス

ギリシャ

キルギス

スペイン・レガネスでMSFが設置した臨時病棟 © Olmo Calvo /MSF
スペイン・レガネスでMSFが設置した臨時病棟 © Olmo Calvo /MSF

アフリカ

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに<br> 関する活動を実施(右写真:南スーダン)
地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに
関する活動を実施(右写真:南スーダン)
2020年を通して、アフリカでは世界的な数値と比較して新型コロナウイルスに関連した患者数と死者数は比較的低い水準で推移した。雨期が早まりサハラ以南のアフリカでマラリアの感染率上昇が懸念される中、新型コロナの移動制限により、抗マラリア薬の供給などの予防活動が滞った。新型コロナウイルスに関する活動と同時に、コンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱などの感染症にも対応した。 
感染予防啓発などの健康教育講座の実施数 101,700
マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 72,000
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 136

(2020年9月~12月)

コンゴ民主共和国

ケニア

MSFが実施する心理カウンセリングを受けに来た女性 © MSF
MSFが実施する心理カウンセリングを受けに来た女性 © MSF

ナイジェリア

リベリア

ⓒ MSF
ⓒ MSF
関連記事:

南アフリカ共和国

ギニア

ソマリア

エスワティニ

南スーダン

当初の想定よりも患者数が少ないことを受け、新型コロナウイルスに関する状況は危機的な段階を脱しつつある。MSFは国立公衆衛生研究所への支援を継続するとともに、首都ジュバで水と衛生の活動を行っている。

MSFはジュバ以外でも3カ所で新型コロナの検査施設を運営。陽性患者の隔離と治療を継続するほか、感染予防のための啓発活動および研修も推進していく。(11月時点)
 

チャド

マラウイ

コンゴ民主共和国でMSFが運営する新型コロナウイルス治療センター © MSF/Djann Jutzeler
コンゴ民主共和国でMSFが運営する新型コロナウイルス治療センター © MSF/Djann Jutzeler

北米・中南米

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに<br> 関する活動を実施(右写真:ブラジル)
地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに
関する活動を実施(右写真:ブラジル)
2020年9月から12月に新型コロナウイルスの感染者数および関連する死亡者数が最も多かったのはアメリカ大陸だった。MSFは、南北アメリカ11カ国の23のプロジェクトにおいて、医療従事者を支援し、遠隔地や脆弱なコミュニティにおいて医療支援を行った。 
感染予防啓発などの健康教育講座の実施数 10,455
マスクや衛生用品など個人用防護具の配布数 114,700
技術や物資の提供、研修などを行った医療機関数 92

(2020年9月~12月)

アメリカ合衆国

ハイチ

ブラジル

ホンジュラス

エルサルバドル

メキシコ

ボリビア

アマゾン川流域の新型コロナウイルス患者 より高度な治療が必要になり、救急車で州都へ搬送する © Diego Baravelli
アマゾン川流域の新型コロナウイルス患者 より高度な治療が必要になり、救急車で州都へ搬送する © Diego Baravelli

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)基本情報

新型コロナウイルスとは?

コロナウイルスはウイルスの大きな分類の1つで、様々な種類がある。大半は人間に無害だが、4種類は風邪を引き起こす原因として知られ、2種類は深刻な肺感染症の重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすことがある。 
 
新型コロナウイルスは2019年12月31日に中国の武漢で初めて報告された。このウイルスは、SARSの原因ウイルスと類似していることから、SARS-CoV-2と呼ばれている。肺の細胞だけでなく、他の呼吸器系の細胞にも影響を与えるものとみられている。

2020年2月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスが引き起こす疾患にCOVID-19という呼称を付けた。当初の症例は圧倒的多数が中国に集中していたものの、その後世界中に広まっている。3月11日、WHOは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を宣言した。

新型コロナウイルスの感染経路は?

新型コロナウイルスとそれによる疾患については今なお未知の部分が多い。ウイルスは人から人へと感染するが、症状が現れない人もいるため、感染経路を把握することが非常に難しくなっている。

WHOの説明によると、感染した人が咳をしたり、息を吐いたりした際に鼻や口から拡散する飛沫を介して伝染する。ウイルスに汚染された物質やその表面に触れ、その後、目、鼻、口に触れることで感染する恐れがある。また、ウイルスの保有者の咳や呼気から出た飛沫を吸い込んだ場合も感染する可能性がある。WHOは、症状の見られる人との間に3フィート(約1メートル)以上の距離を保つことを勧めている。 

新型コロナウイルスの危険性は?

高度に整備された保健医療体制であっても、入院の必要な患者が増えることで対応能力を超える恐れがある。MSFは、保健医療体制の脆弱な国での影響を懸念している。新型コロナウイルス感染症は、特に高齢者や持病を抱える人にとって危険だ。現在のところ、致死率は場所によって著しく異なっている。 

新型コロナウイルスの感染予防策は?

それぞれの人が自分自身だけでなく、他人も守ることが重要。新型コロナウイルスは、感染した飛沫を吸い込んだり、飛沫が付着したものの表面を触り、そのまま目、鼻、口を触れたりすると、口や鼻から人体に侵入する恐れがある。

そのため、入念な手洗いや適切な咳・くしゃみエチケットといった感染抑止策が、予防に効果的であり、大きな意味を持つ。手の衛生は特に大切で、水と石けんで頻繁に両手を洗うことが求められる。十分な量の石けんを使い、20秒以上かけて両手をすみずみまでよく洗う。目につく汚れがなければ、ジェル状のアルコール含有消毒剤も有効。

体調のすぐれない場合は自宅にとどまり、他の人との接触を避ける。咳やくしゃみの出る場合は、ティッシュペーパーやひじの内側で鼻と口を覆う。使用済みのティッシュペーパーは速やかにごみ箱に入れ、両手を洗う。

集団感染を抑え、新規症例と重症化を減らし、高リスクな人びとを守り、保健医療体制を維持する方法として、隔離措置や一定の対人距離の確保といった公衆衛生対策が効果的だ。

マスクや手袋などの個人用防護具の供給に支障が生じているが、保健医療従事者の需要を優先することが望ましい。 

© Olmo Calvo /MSF
© Olmo Calvo /MSF

国境なき医師団(MSF)とは

国境なき医師団は、紛争や災害、貧困などによって命の危機に直面している人びとに医療を届ける国際的な民間の医療・人道援助団体です。

・医療援助活動
活動地は、シリアやアフガニスタンなどの紛争地や、貧困により医療が不足している地域、自然災害の被災地、感染症が流行する地域など。医療を受けられない人びとのために、約4万7000人のスタッフが世界70カ国以上で活動を行っています。

・「独立・中立・公平」な立場
活動資金の9割以上が民間からの寄付に支えられていることにより、中立な立場での援助活動を実現。政治などの干渉を受けることなく医療を提供します。寄付収入や配分先などを掲載した、年間の活動報告書はこちら

・証言活動
医療援助だけでは人道的危機が改善しない場合、その現状を国際社会に広く知らせる証言活動もします。こうした活動が認められ、1999年ノーベル平和賞を受賞しました。

寄付控除、税制優遇措置

認定NPO法人である、国境なき医師団日本への寄付は税制優遇措置の対象になります。所得税、法人税、相続税、一部の自治体の住民税の優遇措置を受けられます。詳細はこちら 

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