このままでは100万人の大都市にもエボラが…対応を強化して抑え込みを

2018年11月29日

最初の症例が出たマンギナのエボラ治療センター © Carl Theunis/MSF最初の症例が出たマンギナのエボラ治療センター © Carl Theunis/MSF

エボラ出血熱が広がっている。コンゴ民主共和国(以下コンゴ)では、8月1日の流行宣言からわずか3ヵ月で300人以上の感染が確定され、215人の命が奪われた。コンゴで10回目にあたる今回の流行は、この国のエボラ流行史上最悪となった。国境なき医師団(MSF)は現地保健省や他団体とともに、流行拡大を抑えるため力を尽くしている。 

都市の大流行を抑えるために

ベニで開院した一時滞在センター © MSFベニで開院した一時滞在センター © MSF

エボラ流行の中心地は、最初の症例が発見された小さな町マンギナから人口42万人の都市ベニに移った。ベニではここ数週間で、エボラの新規疑い例と確定例患者が増え続け、対応が追いつかなくなっている。それを受け、MSFはベニでエボラの疑い例患者を受け入れる一時滞在センターを開院し、対応を拡大した。

MSFのプロジェクト・コーディネーター、マリー・バートンは、「10月に流行の中心地がベニに移って以来、市内で確定例がひんぱんに現れ、エボラ治療センターは満員状態になっています。新設した一時滞在センターは、治療センターの近くに建て、疑い例、確定例の対応をそれぞれ近くで行い、ベニで看護できる患者数を全体的に増やせるようになります」と話す。
 

一時滞在センターが開院した第1日目の夜 © MSF一時滞在センターが開院した第1日目の夜 © MSF

一時滞在センターは、広さ8000 m2のサッカー場に1週間で作られた。このグラウンドでサッカーをしていた若者たちが建設を手伝い、たびたび雷雨に見舞われながらも工事を続け、調達や整備面の困難も乗り越えてできるだけ早く工事を完了させた。

エボラ感染が疑われる患者は、この一時滞在センターに入院して、検査結果を待つ。健康状態によってはすぐにMSFの医療スタッフが治療を始める。確定診断が下りたら、陽性患者はエボラ治療センターに移され、陰性なら他の医療機関に移って、さらに治療を受ける。これまでは、感染確定例と疑い例はどちらもエボラ治療センターに入院し、病棟が分かれていただけだった。

一時滞在センターは、テントの代わりに個室を取り入れて、より適切に患者を隔離できるようにしている。仕切り壁には、透明で丈夫なアクリル製の大きいガラスをはめ、医療スタッフが常に患者を見られ、患者もお見舞いに来た家族や恋人に会うことができる。開院当初は16床だが、流行の状況に応じて48床までベッドを増すことが可能だ。
 

100万人が住む大都市にも

これまでに、エボラにかかった100人余りの患者が治療を受けて回復している。ただ、情勢不安で立ち入れない地域は対策が難しく、流行を封じ込めるには至っていない。

MSFの緊急対応責任者を務めるグウェノラ・セルーは、「流行の中心地がマンギナからベニに移ったため、制御はより難しくなっています。現在では、ベニの南にあるもっと大きな都市ブテンボで新規症例が増えています。この地域での対応を大幅に拡大しない限り、事態はさらに難しくなるかもしれません」と話す。

ベニの約3倍、100万人が住むブテンボでは、ここ数週間に目に見えて症例の報告が増えている。ここは商業が盛んな地域であり、ウガンダ国境はすぐ近くだ。この大都市が、流行の新たな「ホットスポット」になりつつあり、より多くの資金や人材を投じて動向を見ていく必要がある。
 

抑え込みのカギとなる地域社会

現地では流行の抑え込みが続く © Karin Huster/MSF現地では流行の抑え込みが続く © Karin Huster/MSF

エボラに対応するうえで重要なのは、地域との強い関係を築くことだ。しかし、現地では住民が頻繁に移動すること、致死率の高いエボラに強い恐怖を覚えていることも、活動を難しくしている。新規症例が出たときに治療センターへの報告をためらう人や、エボラで亡くなった人を、安全かつ尊厳のある形で埋葬するチームを受け入れ難く思う人もいる。

MSFでエボラ対策の緊急対応コーディネーターを務めるアクセル・ロンスは語る。「地域住民の信頼を得るため、対応に関わる全ての人が、より効果的にコミュニケーションをとる必要があります。エボラ治療センターでは実際、何十人もの患者が無事に回復しているのに、死亡率が高いため、治療センターは死ぬために行く場所だと思われる可能性もあります。早期に治療センターに入院すれば、それだけ回復のチャンスも高まります」

MSFは他団体とともに、定期的に24ヵ所の診療所を訪問して訓練を行うほか、物資を寄贈している。また、地域との定例会議も開いてエボラの感染と予防方法について情報を交換している。感染予防・制御の一環として、エボラの確定例が発見され適切な医療機関へ移送された後、発見された診療所の除染も引き受けている。さらに10月にはベニで、11月にはブテンボで、医療従事者のほか、エボラ患者と接触した感染リスクの高い人に予防接種を行った。
 

エボラ流行対応の最新【情報まとめ】はこちら⇒ 「広がるエボラ 症例数がコンゴの流行史上最大に
 

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