インドの製薬企業シプラ社がエイズ治療薬を安価に提供

2001年03月02日掲載

国境なき医師団(MSF)は2001年2月、インドの製薬企業シプラ社より、エイズ治療に用いる抗レトロウィルス薬の三剤併用療法を年間に患者一人当たり350ドルで提供できる旨の申し出を受けました。この価格は、これまで治療を受けられずにいた開発途上国のエイズ患者が抗レトロウィルス薬を入手するための第一歩となるものです。またシプラ社は、依頼があれば各国政府に直接年間600ドルで販売する意向を示しています。どの国に対してもいつでも対応でき、各国での医薬品の登録にも協力するとのことです。三剤以外の抗レトロウィルス薬についても低価格で販売する可能性が検討されます。

今回申し出のあった三剤は、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、ネビラピンであり、それぞれブリストルマイヤーズスクイブ社、グラクソスミスクライン社、ベイリンガーインゲルハイム社が米国他多くの国で特許を所有しています。しかし、特許によって保護されていないインドのような国もあります。

特許権は国毎の別々の権利です。国際特許権や世界中で一様に通用する特許はありません。特許によって保護されていない医薬品はジェネリック薬*と呼ばれますが、時にコピー薬と混同されることがあります。確かにジェネリック薬として製造される医薬品の中には品質が基準に満たないもの、偽造物もありますが、今回シプラ社が提供を申し出ている医薬品は、特許品とは異なった商品名、外観で製造され販売されています。

国境なき医師団は現在40カ国でエイズ対策を行っていますが、近日中に約10カ国で試験的治療プログラムを開始する予定です。治療薬は入手可能性、登録状況、価格などを考慮して選定していきます。購入した治療薬は、現地の援助プログラムで無料で行われるエイズ治療のためにのみ利用され、国境なき医師団が外部に配布したり斡旋することはありません。

現在欧米では三剤併用療法の価格は年間10,000~15,000ドルであり、開発途上国の人々には手が届かない価格となっています。世界で3600万人いるHIV感染者のうち、治療を受けられるのはわずか5%に過ぎず、9割以上が開発途上国に住み何の治療も施されないままでいます。エイズ対策を具体的に進めるには、開発途上国での医薬品入手状況を改善しなくてはなりません。そのために価格の適正化を促進することが肝要であることは、昨年12月に行われた感染症対策沖縄国際会議でも確認されています。ジェネリック薬*の導入はその具体的な施策のひとつとなります。医薬品は単なる工業製品としてではなく、人々の命を守るのに欠かせない国際公共財としてとして捉える必要があります。

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