2011年3月の勃発から9年、シリアの紛争はますます混迷を深めています。多くの民間人を含む死者数は58万人※1を超え、現在も増え続けています。
人びとの危機は、空爆や銃撃による負傷だけではありません。予防接種や医療を受ける機会の欠如から、本来なら予防や治療が可能な病気にも命を脅かされています。特に、女性と子どもを含む一般市民が犠牲となっています。
国際社会からの援助が届かないまま、多くの一般市民が、包囲された町の中で命の危機に直面しています。特に被害の激しい北西部には、400万人が生活をしており、また国内での避難民は610万人にのぼります。
医療施設や、避難民が身を寄せる学校や幼稚園は無差別爆撃を受け、援助物資の輸送も確実ではありません。国境なき医師団は、紛争当事者や関係各国に市民の保護を呼びかけながら、さまざまな手段を講じて、人びとの支援にあたっています。
国境なき医師団は、シリア国内で医療施設を運営・支援するほか、包囲地域の医療施設やシリア人医師に支援を届けています。増加し続ける国内避難民には毛布やテントなどの必需品を届ける活動を拡大しています。
国境なき医師団は、また、合計556万人もの難民を受け入れる周辺国でも医療を提供。ヨルダン、レバノン、イラク、トルコなどの難民キャンプで、シリアから逃れてきた人びとに医療を提供しています。
※1. NGOシリア人権監視団による。 ※そのほか国内避難民・難民の人数はOCHA調べ
助けを必要としている人びとに医療を届けるために、今すぐに、あなたのご支援が必要です。
国境なき医師団では、シリアに関連する活動について、完全なる中立性と公平性を確保するため、
民間の皆さまからの寄付金のみを活動財源としています。
シリアで活動した日本人スタッフの声 「日増しに高まる援助の必要性」 ![]() 私は2012年5月から2015年2月の間、4度にわたり合計20ヵ月、シリアのアレッポ県における活動責任者として医療・人道援助活動に従事しました。 シリアでは、国民のおよそ3分の1が避難民となり、そして今や国民の約半数が人道援助を必要としています。出口の見えないこの内戦の一番の犠牲者は、女性や子どもを含む一般市民です。 「スタッフの家族が空爆に巻き込まれて亡くなった」、「子どもたちは身体中、ノミやダニにさされ、皮膚炎が流行している」。これらは、現地で日常的に聞いた悪い知らせのごく一部です。 人びとは戦争ではなく、生きるために闘わなくてはいけません。運よく周辺諸国に逃れることができても、家族や友人を目の前で失くした子どもたちの心理的な傷跡は深刻です。大人たちは家族を養うための仕事を見つけることができません。 一方で、内戦下のシリア国内にとどまっている人びとの多くは、国外に逃れる術さえ持たない、貧しい人びとです。厳冬期、十分な暖房機器もなく、空爆や砲撃に怯えながら、乳幼児でさえ、凍えるような寒さに耐えるしかないのです。そんな中で雪を見ると、胸が痛みました。 シリアでは、医療・人道援助の必要性が日増しに高まっています。 |
シリア国内で活動する救命士の証言 「記憶から消えることのない光景が・・・」 ![]() "繰り返される爆撃にだんだん慣れてしまっています。しかし、やりきれない光景にも直面します。活発な男の子のものと見られる小さな手足が道に転がっていたことを忘れられません。 私たちはそういう光景をほぼ毎日、目の当たりにしているのです。忘れられる光景もありますが、記憶から消えることのない光景もあります。 私たちがどんな目に遭っても不思議はないことは、当初からわかっていました。それでも決心を固め、この職務を人道活動として引き受けたのです。私たちが投げ出してしまえば、危機的状況はさらに悪化するでしょう。" 国境なき医師団が支援している病院で働く救命士 AKさん |
国境なき医師団は、1971年にフランスで設立された非営利、民間の医療・人道援助団体です。世界各地での活動が評価され、1999年には、ノーベル平和賞を受賞。
シリアなどの紛争地や、感染症の流行地域、自然災害の被災地など世界約70の国と地域で医療援助活動を行っています。
活動資金のほとんどは、民間の寄付でまかなっています。これにより、権力からの影響を受けず、独立・中立・公平の原則に基づく活動を実現しています。
日本事務局は1992年に発足し、医師や看護師をはじめとする医療系スタッフのほか、物流や財務管理などを担う非医療系スタッフを活動地に派遣しています。
活動と財務の詳細を公開しています
国境なき医師団は活動と財務の透明性と説明責任を重視し、監査法人による厳正な監査を経た「会計報告書」を含む『年次活動報告書』を、公式ウェブサイトにて公開しています。>詳しくはこちら