国境なき医師団内の差別・人種主義について

2020年07月29日掲載

国境なき医師団(MSF)は、1971年の創設以来、独立・中立・公平という活動理念の下、世界各地で緊急人道・医療援助活動を行うとともに、活動地で目撃した人道危機を証言してきました。紛争や貧困、災害に至るまで、さまざまな要因によって生じる医療のニーズに応え、1人でも多くの命を救うことに努めています。

国境なき医師団(MSF)は人種差別を含む全ての差別を容認しません。差別と人種主義は、団体設立以来MSFが維持してきた価値観に反するもので、MSFは互いを尊重する行動と多様性の浸透を優先課題として長年積極的に取り組んできました。こうした取り組みには、多様性を尊重・推進し、誰もが活躍できる職場環境を構築する人事方針や行動規範の策定、憲章で規定された基本理念の遵守の徹底、また、差別を含むあらゆる種類の不正行為を、予防、発見、通報、対応するため、組織内外から通報できる体制などが挙げられます。

2020年5月に米国で起きたジョージ・フロイド氏暴行死事件に端を発する衝撃は全世界に波及し、多くの援助団体が内なる人種主義と差別との闘いについて、厳しく、そして真摯に向き合っています。MSFも例外ではありません。人種主義や差別の存在を認め、制度是正に向けて長年努めてきたにもかかわらず、取り組みに大幅な遅れがあることは否めません。また、MSF全体のガバナンス(統治)と権限バランスが団体の多様性を反映していないことも深く認識しています。

MSFは、人種主義に関する団体内での最近の活発な議論を、内部の変革を加速させる好機として前向きに受け止めています。団体内にあるスタッフ間の不公平が、患者に対する援助と透明性に、どのような影響を及ぼすかについて検証するとともに、MSF内に存在する偏見と障壁に対する全容理解と撤廃に向けてより一層取り組んでまいります。また、人種主義だけが私たちの直面する問題ではなく、ジェンダー(社会・文化的な性差)、宗教、生物学的性差、社会的立場を理由とした差別があることも認識し、これらの問題に真っ向から取り組んでまいります。

具体的にはMSF全体で以下のような変革を起こしていきます。

· 現地採用スタッフのガラスの天井(見えない障壁)の撤廃
· スタッフ間の報酬格差に対する取り組み
· スタッフが負うさまざまなリスクの検証
· ハラスメント、虐待、差別といったより広範な問題への取り組みの継続、とりわけ治療を受ける患者を虐待から未然に守り、万一被害に遭った際の通報の徹底
· 多くの活動国でケアの水準や質の低下が定例化してしまうなど、医療上の異なる基準が疑われる事例に対する厳格な審査

MSFという世界的ムーブメントの多様性が、団体のガバナンスに反映されるよう抜本的な対策に取り組んでまいります。MSFは誰もが医療・人道援助活動の在り方に貢献できる、これまで以上に多様で公平、公正な世界規模の団体となるよう努めてまいります。