国境なき医師団
 
さまざまなスキルが、命を救う力になる!
現地での“意外な”仕事をご紹介
日頃より、国境なき医師団(MSF)にご関心をお寄せくださり、誠にありがとうございます。
MSFの活動地では、医師や看護師が治療に当たっている……そんな印象をお持ちの方も多いでしょうか? しかし実際は、さまざまな職種のスタッフが重要な役割を担い、力を集結して命を救う活動に当たっています。今回はちょっと“意外な”職種の2人をご紹介します!

<疫学専門家>命を落とす人を減らすため。
危機の兆候をつかみ、データで示す!
西野恭平(にしの きょうへい)
2018年よりMSFに参加。南スーダンで医師として活動した後、バングラデシュ、ナイジェリア、南スーダンで疫学専門家として活動。そのほか、NGO Seedsの代表も務めている。

「疫学専門家」ってどんな仕事?
病気の発生原因や流行状態、予防を研究する疫学のスペシャリスト。集団発生した病気に対する活動内容の検討や、病気の流行する地域や患者の各種定量・定性調査を行います。
 
多くの命を救うために。
調査で、活動をより本質的なものにする
2018年末に、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプで疫学調査をした時のことです。なぜか新生児の死亡率だけ、同国内の平均と比べて2倍以上高いことが判明しました。キャンプ全体の死亡率は改善していたにも関わらず、です。
キャンプの母親と赤ちゃんは、妊娠中の間も出産後もずっと家にいて、検診を受けていません。低温に弱い新生児にとって、家の環境は良くない。家族が何らかの感染症にかかっている可能性もあります。また水と衛生の状態もひどく、劣悪な環境への対策が急務であることも、この調査で明らかになりました。
新生児は病院へ運ばれることなく亡くなっているので、病院施設内での活動だけではその実態を知ることができません。そこで疫学調査です。医師が病院に来られる患者さんを診る一方で、疫学専門家はその地域全体を対象とし、コミュニティの中に入っていくことで、病院の中からは見えない問題を明らかにしてデータで示します。さらには、客観的なデータを用いてその地域で何をすべきか優先順位を見出し、活動をより本質的なものにすることが役割だと言えます。

疫学調査の対象は感染症だけではない。子どもの上腕の太さを測り、栄養状態の傾向をつかむ調査も行った。
疫学調査の対象は感染症だけではない。
子どもの上腕の太さを測り、栄養状態の傾向をつかむ調査も行った。
今後取り組んでいきたいことの一つに、緊急援助の長期化に関する問題があります。紛争が長引くことで、難民キャンプや紛争地域での生活は数年以上に及びます。そこでは、感染症の発生や栄養失調などの急性期の問題に加え、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の割合も増加します。多くの緊急援助団体は慢性疾患への対応が十分とは言えず、一方で現地政府の保健医療システムに組み込まれることもない。その空白になってしまっている分野にどう介入していくか──。より積極的に考えていかなければいけない問題だと感じています。
●ナイジェリアの国内避難民キャンプの調査で明らかになったこととは?
●「国際医療を通じて平和構築に貢献したい」と思うきっかけとなった、アフガニスタンでのある出来事とは?
西野恭平のエピソードの続きを読む⇒コミュニティに入り「知らない」を知る



<現地広報>支援の輪を広げることで、
より多くの患者さんを救う!
趙 潤華(ちょう ゆな)
2014年よりMSF日本事務局の広報部に勤務し、2017年11月より海外派遣スタッフに転身。現地広報マネジャーとして地中海、パレスチナ、ウクライナなど7カ所で活動。

「現地広報」ってどんな仕事?
MSFの活動や、現場で起きている問題をより多くの人に伝えるために、患者さんやスタッフから情報を収集して記事として発信するほか、メディアによる取材の調整、イベントや記者会見の開催など、幅広い業務を担っています。
 
患者さんへのインタビューから、配信まで。
MSFの活動を「伝える」プロ
MSFの活動には、2つの柱があります。ひとつはご存じの通り医療活動、そしてもうひとつが「証言活動」です。
医療を届けると同時に、そこで何が起きているのかを多くの人に知ってもらい、国際社会に訴えていくこともMSFの重要な役割です。それによって支援の輪が広がり、さらに多くの命を救うことにつながっていくわけですが、その世の中を動かす源となるのが「証言」の力です。
現地広報の仕事は、活動地の状況を誰に向けてどんな手段で発信するかを考え、形にすることです。具体的には、広報戦略の策定、メディア対応、イベントや記者会見の実施、記事の発信などがあります。
記事の例を挙げると、患者さんやMSFのチームメンバーなどをインタビューして原稿にまとめ、写真やビデオの撮影も行います。

ナイジェリアにて。カメラを向けると子どもたちが「こっちこっち!」
制作したものは各国の事務局を通じて世界中で公開されるため、プレッシャーを感じることもあります。ただ、援助を届けている人びとに直接話を聞くことや、その言葉を世界に向けて発信していくことは刺激的で、誇りをもって取り組んでいます。
現地で働くことに関して「すごいね」と言われることがありますが、私はどんな仕事も等しく「すごい」と思っています。私自身はたまたま人権や人道問題に興味があり、どこで生まれてどんな背景があろうと、誰もが尊厳ある暮らしをできる世界がいいな、という思いが、仕事の原動力になっています。
●現地の活動で苦労したこととは?
●患者さんの取材では、申し訳なく思うことも……。そのとき思い起こす言葉とは?
趙潤華のエピソードの続きを読む⇒「こころ動かす“証言”の力」


スタッフが現地へ向かい、
活動できるのは、
皆さまのご支援があるからこそ。
どうか、これからも私たちの活動を支えてください。


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既に「毎月の寄付」にご参加いただいている方には重ねてのご案内となり、失礼いたします。国境なき医師団に対する継続的なご支援に、心より感謝申し上げます。
● 認定NPO法人である国境なき医師団日本への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。


ほかのスタッフのレポートも読んでみませんか?
疫学専門家、現地広報のほかにも、日本からはさまざまな職種のスタッフが活動地へと向かっています。公式サイトでは、スタッフたちが活動地で見た現実や、活動中に感じた喜びや苦悩をつづったレポートをご紹介しています。ぜひご覧ください!
>>活動レポート「世界の現場から」を読む


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