事務局からのお知らせ

虐待・搾取・ハラスメントのない活動環境の実現を目指して

2022年07月28日

 国境なき医師団(MSF)は、いかなる虐待やハラスメントも許さない活動環境づくりを推進しています。MSFの指導部は率先してこの問題に向き合い、虐待・ハラスメントの防止や問題発覚後の対応策の強化に取り組んでいます。また、全てのMSFスタッフには、MSFの行動規範憲章で規定された基本理念の遵守を徹底させます。

MSFは、虐待・ハラスメント撲滅に向けて行ってきた取り組み、課題、前年度に寄せられた容認できない行動の通報件数と内部調査の結果を声明として発表してきました。そして今年も、2021年の通報件数、および現在の取り組みに関する最新状況をご報告いたします。MSFは引き続きこの重大な問題に一丸となって取り組んでまいります。 (2020年度の報告はこちら

不正行為の通報体制

 MSFでは、あらゆる種類の不正行為を、予防、発見、通報、対応するため、組織内外から通報できる体制を以前から導入しています。全てのMSFのスタッフは、所属部門長や専用のメールアドレスをもつ窓口を通じて不正行為を通報するよう奨励されています。MSFの活動地においても同様に、不正行為の被害者や目撃者はMSFに通報するよう奨励されています。

MSFは団体内での意識向上を目指して全スタッフに通報体制の存在を周知しています。通報体制に関する情報はマニュアル化されているほか、ブリーフィング、活動地視察、研修等の際に伝えられています。さらに、虐待とその対応に関するオンライン教育ツールは定期的に更新・改善されています。

過去数年の間にMSF全体でこの問題に対して行われたさまざまな取り組みの例です。
・ 研修、活動地視察、調査を担う新たな役職の創設や人員増強
・ 問題解決に必要な対策を検討するためのスタッフ向けワークショップや個別相談の実施
・ ハラスメント、虐待、搾取の通報の仕方についてスタッフに提供される手引きの改善・周知・徹底
・ 活動地における患者や地域社会への啓発の強化
・ MSF全体でのデータ収集・共有

機密保持

 MSFが目指すのは、最大限の機密保持性の徹底です。被害者および内部通報者の身の安全や雇用、守秘的情報を守り、安心して通報できる環境を作ります。

不正行為が通報された際、MSFは被害者と内部通報者の安全と健康を最優先します。被害者には細心の注意のもと、直ちに心理ケアと医療ケア、法的なサポートを提供します。

事態を司法の手に委ねるべきか否かについて、MSFは常に被害者の判断を尊重しています。未成年に対する性的虐待が起きた場合には、MSFは司法当局への通報を基本方針としています。しかしその場合も子どもの利益と、該当する司法プロセスの有無を最優先しています。

2021年実態

2021年の通報・苦情の件数は、前年と比較して21%増加しました。昨年に引き続き、患者やその介護者、地域住民からの通報・苦情の報告が少ないという課題に直面していますが、数値の増加は、過少報告という長期的な問題への取り組みを進め、通報体制や手段に対する認識と信頼が高まっていることを示しています。

2021年は延べ6万3000人がMSFに勤務し、そのうち約90%が援助の現場で活動に携わりました。合計539件の苦情が申し立てられ、うち490件が活動地で働くスタッフから、49件が活動統括本部(オペレーション・センター、事務局など)から寄せられました。

活動地からの通報・苦情は、2020年の389件から、2021年は490件に増加しました。これらのうち、調査によって158件が虐待ないし不適切行為にあたる事態と確認しました(2020年は149件)。その中で102件が、性的虐待・ハラスメント・搾取、権力の乱用、心理的嫌がらせ、差別、身体的暴力など、何らかの形態の虐待です(2020年は82件)。合計54人のスタッフを、何らかの虐待を理由に解雇しました(2020年は40人)。また、事案の重大性に応じて、停職、降格、正式な文書による警告、強制的な研修など、他の処分も行っています。

102件の虐待のうち、67 件が性的虐待・ハラスメント・搾取で、2020 年の 55 件より増加しています。当該の事由で解雇されたスタッフは33人で、この数値も2020年の28人から増加しています。その他、心理的嫌がらせが9件、権力の乱用が16件、身体的暴力が4件、差別が6件、確認されています。

不適切行為が確認された事例は56件で、2020年の67件から減少しました。不適切行為にあたるのは、不適切な人事管理・人間関係、社会通念上不適切とされる行動、チームの団結を揺るがす行動、薬物やアルコールの乱用などです。

これまで通報が少なかった人びとからの通報数は、一定の増加が見られますが、まだ多くの課題が残されています。現地採用スタッフによる通報の数は、2020年の172件から、2021年は262件に増加しました。これは前年比52%の増加であり、通報の意識と通報体制への信頼が増加傾向にあるとも捉えられる一方、MSFの活動現場では現地採用スタッフが90%を占めているにもかかわらず、現地採用スタッフによる通報・苦情件数は全体の約半数しかなく、まだやるべきことがあります。

患者とその介護者からの通報は23件で、2020年の20件からわずかな増加でした。その他の外部関係者からの通報は67件で、2020年の27件から約150%増加しました。これは、物資の納入業者、メディア、現地のコミュニティリーダー、協力先パートナー、元MSFスタッフ、MSFの契約下にないスタッフ、アソシエーションメンバーなどからの通報です。患者とその介護者からの通報が依然として非常に少ないことは、MSFが虐待や不適切行動に対して責任を負うことを認識してもらい、弱い立場にある患者や地域住民がより通報しやすいように、既存の体制をさらに適応・改善する必要があるということです。

差別や人種差別に関する通報は32件で、2020年の41件から減少しています。 MSF全体で差別や人種差別に取り組んでいるにもかかわらず、通報は比較的少ない件数となっています。これらの問題に対処する努力を続ける中で、多様性と包摂性の推進を、問題行動の通報体制に組み込んでいく必要があります。

2020年以降、MSFは活動地からの通報とともに、世界各地の活動統括本部(オペレーション組織、事務局など)からの通報・苦情も集計しています。MSFの全スタッフの約11%が世界各地の統括本部に勤務しており、2021年は38の事務局から49件の事案が通報されました(2020年の37事務局からの55件通報と比較して微減)。

上記の通報・苦情のうち、調査によって19件が虐待、11件が不適切行為に当たる事態と確認しました。このうち13件が、解雇または厳重注意などの処分を受けています。

活動統括本部における通報・苦情のデータは、異なる法律や人事プロセスに関連しているため、団体内で完全に調整していない可能性があり、引き続き標準化する努力を続けています。

MSFは引き続き、虐待やハラスメントのない職場環境を実現・維持するために、また私たちが支援する人びとに危害を加えないために一丸となって取り組み、患者、MSFスタッフ、その他MSFと接するすべての人が、許容できない行為を通報できるよう、引き続き努力してまいります。

2020年実態調査結果の更新

情報の収集と集計方法を改善した結果、2020年の数値が更新され、活動地の患者および介護者による通報件数が以前の集計の23件より少ない20件であることが判明しました。また、不適切行為が確認された事例は2020年集計の68件から67件に、その結果、虐待または不適切な行為と確認された事案の合計は2020年集計150件より微減の149件でした。

さらに、2020年集計において、性的虐待、ハラスメント、搾取、権力の乱用、心理的嫌がらせ、差別、身体的暴力など、何らかの虐待を理由に解雇したスタッフの数は37人よりも多い40人であることが判明しました。

本報告の前年件数は更新済みの数値を用いていますが、昨年の声明には更新前の件数を残しています。また、2021年に通報のあった事案の一部は依然調査中で、今後件数が更新される可能性があります。

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