海外派遣スタッフの声

パレスチナ:今なお続く暴力の連鎖:金谷 大哲

ポジション
臨床心理士
派遣国
パレスチナ自治区
活動地域
ヘブロン
派遣期間
2016年6月~2016年12月

なぜMSFの海外派遣に参加したのですか?

生まれてくる国・環境は誰にも選べません。同じ地球に住む者同士、必要な医療・支援が得られず苦しんでいる人びとがいるなら、その人びとの助けとなりたい。その機会を与えてもらえるなら、その機会に感謝して地球上のどこへでも行こうと思い、応募しました。

派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

審査を受けて登録に至り、そこから初めての派遣(熊本地震緊急援助)までの期間は1ヵ月ほどで、その後、今回のパレスチナの任務が決まりました。出発直前まで特別なことはしていません。パレスチナについてリサーチしながら日本で通常通り心理臨床を続けていました。

今までどのような仕事をしてきましたか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

大学卒業後は企業で社会人経験を積み、その後、臨床心理学ワールドへ身を置き、資格を取得。精神科病院と総合病院で心理臨床を行ってきました。僕自身が在日外国人ということもあり、また企業に勤務していた間に海外出張も経験していたため、異文化交流には抵抗がありません。そのことと日本での心理臨床経験(主に精神科、小児および家族支援)はパレスチナでの援助活動にも大いに役立ったと感じました。

今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

ある日のグループセッションの様子 ある日のグループセッションの様子

パレスチナではイスラエル(ユダヤ人)の侵略・暴力が今なお続いていて、心身共に傷つき心理症状を呈するパレスチナ(アラブ人)の人びとが大勢いる悲しい現実があります。現地スタッフと我われ外国人派遣スタッフで構成する常時約20人のチームで活動していました。

日々の業務としては、オフィスもしくは自宅訪問によるアセスメントおよびカウンセリング、役場の一室でのグループ・カウンセリング、また、週末には現地の人形劇団と共に村々を回り人形劇を通して心理教育を行ったりもしました。侵略・暴力は具体的に言うと拉致、拷問、殺人、住居破壊などです。

これら悲惨な体験をした本人や目の当たりにした家族には、異常な体験後の正常な反応としての症状(悪夢、夜尿、混乱、怒り、集中力低下など)が生じることが多くあります。症状を明確にし、診断を行い、治療計画を立て、対象となる人々と共に治療目標を立て、セッションを開始し、短期間で症状を改善することが求められました。

派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

朝8時のセキュリティー・ミーティングで1日は始まり、短時間の打ち合わせなどをはさんで援助活動に入ります。1週間はオフィスに数日、フィールド訪問に数日で構成されていて、各自そこに担当するカウンセリング枠を組み込み管理していました。夕方に業務は終了しますが、記録や翌日のケースに向けての準備など行うため残業は必要でした。個人的には休日出勤もしましたが、必須ではありません。勤務時間外は同僚の外国人派遣スタッフたちと食材の買い出し、食事、運動(ヨガ、卓球)などして過ごし、休日にはセキュリティー上のルールを守りながら近場へ小旅行をして気分転換を図ることも出来ました。

現地での住居環境について教えてください。

帰国前日スタッフがサプライズで開いてくれた送別会 帰国前日スタッフがサプライズで開いてくれた送別会

6部屋ある一軒家を外国人派遣スタッフでシェアしていました。バス・トイレはもちろん共用ですが、各自寝室を与えられ、安定して睡眠時間を確保でき、とてもありがたく思いました。近所を歩くことは許可されていたので、スーパーを利用することも日常的に可能です。ほとんど雨の降らないパレスチナですが、店頭に並ぶ果物は非常に種類豊富で驚きました。一方、宗教上の理由からヘブロンでは豚肉やアルコールは販売されていなかったのですが、他に手に入る食材が多く、私は好き嫌いがなく大体何でも食べられるため、さほど苦にはなりませんでした。

活動中、印象に残っていることを教えてください。

正確な診断を行い、短期間の活動で心理的症状を軽減することが求められる中で、日本での経験だけでは不足していた方法を学び習得して提供できるようになるまでに少し苦労しました。他には、カウンセリングを行うために通訳スタッフ(英語⇔アラビア語)との共同が不可欠であることや、"時間を守る"という概念に関する温度差など、経験・文化との違いから学んだことも多くあります。

今後の展望は?

次の任務を待ちながら日本で心理臨床などの仕事を続けていくつもりです。英語だけでなくフランス語やスペイン語も話せると任務の幅が広がると聞くので、語学力の向上も視野に入れて過ごします。

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

いつも思うことですが、自由と選択には責任が伴いますし、その責任は人により異なります。MSFへの登録・任務は多くの面で決して容易な選択とは言えませんが、背負い、果たせる責任であればその自由や選択も尊重されていいのではないかと考えています。

MSF派遣履歴

派遣期間
2016年4月
派遣国
日本
活動地域
熊本
ポジション
臨床心理士