海外派遣スタッフの声

現場の仲間のために、そして患者のために:小口隼人

ポジション
ロジスティック・コーディネーター
派遣国
シリア
活動地域
派遣期間
2012年9月~2013年1月

なぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

2007年からMSFのロジスティシャンとして参加しています。今の私の一番の興味は国際緊急医療に携わるロジスティシャンとして働くことです。日本を含め世界のどこかで、さまざまな理由で緊急医療が必要とされたときに、1人でも多くの命を助けることができる仕事を将来もしたいと考えています。

2007年に初めて参加したときは、ロジスティシャンとしての知識や経験や自信がなく、このようなことは考えもしませんでした。しかし、今では、当時はなかったものが積み重なってきており、この新しい目標を持つようになりました。この目標に到達するために何をすればよいのかを考えながら、MSFの海外派遣に参加しているこの頃です。

今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

以前もこの「派遣者の声」に書いていますが、多岐にわたります。

  • 以前の投稿はこちら。

MSF以前は、引越しの配送員、Jリーグ警備員、銀行ATM清掃スタッフ、塾英語講師、温泉ホテルのフロント、傷害保険の営業、飲食店スタッフ、メディ ア関係、NGOのための募金活動、大使館スタッフなどが挙げられます。

どの仕事でも多くのことを学びました。特に、MSFでロジスティシャンとして働くことに直結する技術的スキルは、引越しの配送員時代に得た"荷物を効率よくトラックに積む"技術でした。

海外派遣で一番役に立っているものは、MSFでのロジスティシャンとしての職務経験です。派遣歴は今回のシリアも含め8回になりました(スーダン2回、コンゴ民主共和国、ハイチ、南スーダン、スリランカ、マラウイ、シリア)。活動国は7ヵ国に及びます。いずれの機会にもさまざまなことを学び、良かった点や反省点を次の海外派遣に活かすスタイルで続けています。

これは簡単に思えるかもしれませんが、実は簡単ではありません。MSFの医療活動の内容や環境は、派遣される国よって大きく異なることが多いためです。しかし、新しい発見、出会い、昔のMSFの同僚とどこかで再会することなどがあり、やりがいがあります。

このほか、MSF以外で海外経験が40カ国あり(主に旅行。留学や仕事で数ヵ国)、この経験も役に立っています。

今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?

ロジスティック・コーディネーターとして、激しい内戦が続くシリアに派遣されました。主に物資を供給したり、現地プロジェクトを訪問して問題解決を図ったりすることで、シリア国内でのMSFの医療活動をサポートしました。

シリアではご存知のとおり、2011年3月の大規模デモが内戦へと激化し、今も続いています。これに伴い、多くの人が紛争被害を受け、避難生活を送っています。そうした人びとへの医療・人道支援活動が必要とされている状況です。

MSFは、シリア国内に2012年6月、仮設病院を開設しました。そこで治療できない患者は、トルコへ移送することにしています。また、戦闘が激しいため、MSFが活動を行えないほど危険な地域もあります。しかし、そうした地域にもシリア人による仮設病院が点在しているため、そのサポートを行っています。一方、MSFが避難者に直接アクセスでき、その状況が把握できる場合には、主に毛布と主食のパンの材料となる小麦粉の配布も行っています。

私の仕事はロジスティックなので多岐にわたり"何でも屋"といったところがあります。今回の仕事で一番多く時間を費やしたのは下記の事柄でした。

  • 爆撃や戦闘に対するリスク・マネジメント ・シリア国内にあるMSFのプロジェクトへの物資の供給 ・MSFロジスティックのガイドラインの徹底
  • 具体的には、空爆が起きた際にはどのような方法で安全確保をするのか、現場のプロジェクトで働くチームを避難させるにはどのようなルートでどのような手段で行うのかなどです。

シリアの治安・戦闘状況は日々変化し、情報も錯綜していました。ロジスティックの業務を行いながら情報収集や分析にあたっていたため、とても大変でした。

シリア北部で物資の運搬を行うMSFのロジスティシャン

物資供給に関する業務は主に、海外から届く物資を通関させること、それを現場のプロジェクトまで輸送することでした。シリア国内では現在、車や発電機などに使う軽油が国全体で不足しています。そのため、シリア国内のMSFチームに、良質で安定した価格の軽油や他の資材などを輸送していました。

また、MSFロジスティックのガイドラインの徹底にはさまざまな事例があります。例えば、病院で使う水は井戸から引き上げた水を使っていましたが、当初は塩素消毒を行っていませんでした。そのため、消毒設備を設置し、役割分担を決めました。電気系統では、安全対策用のブレーカーやアースの安全確認を徹底しました。海外派遣スタッフが生活する住居の確保とメンテナンスもプロジェクトをサポートする上で大事な仕事でした。

週末や休暇はどのように過ごしましたか?

日本にいるときと同じように、時間を見つけてはサッカーをしていました。これが私の一番のストレス解消法&娯楽なので、派遣の際は必ずサッカーボールを持っていきます。今回も避難民キャンプに住んでいるシリア人の子どもたちとサッカーをしたり、トルコに避難してきたシリア人と地元のトルコ人とMSFの同僚を巻き込んでミニ・サッカーの試合を行ったりしました。

現地での住居環境についておしえてください。

宿舎は2階建で9室、キッチン・ダイニング、水洗トイレとお湯の出るシャワー室がそれぞれ2室ずつありました。洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、インターネット、各部屋にはベッド、イスと机、クローゼット完備で快適でした。食事はシリア人の元プロの料理人が作ってくれたので、とても美味しく、中東の食文化の多様性を楽しむことができました。

良かったこと・辛かったこと

良かったことは、限られた時間と資源、そして極度に治安が悪い中で、同僚の外国人スタッフや現地スタッフと一緒に、多くのロジスティックの仕事を達成することができたことです。

現場で働くロジスティシャンたちを後方支援し、「軽油などの物資が定期的にとどくので助かった。ありがとう」と言われたことが印象的です。国籍・宗教・民族・貧しい人やリッチな人などの垣根を超え、1つの目標に向かって働くことを再び経験できたことが良かったと思います。

MSFの活動では、最終的には職務経験・スキル・各自の仕事役割などでは理由付けできない"仲間意識"のようなものに動かされることが多くあると思います。現場のロジスティシャンは、同僚というよりは"仲間"でした。その仲間ために頑張り、彼らが現場でいい仕事をすれば、1人でも多くの患者さんたちを助けることができると信じて働いていました。「仲間のために頑張れた」というのは、1人1人がバラバラになっているように感じられる今の日本では、なかなかできない貴重な経験だと思います。

辛かったことは、シリアの惨状を目前にすることでした。人道支援も十分ではなく、内戦の平和的解決に対するシリア国内・国際的な努力も遅々として進みません。その間にも、多くの子どもや一般市民が犠牲になっています。派遣された当初は、シリアのどこかの町で犠牲になった犠牲者の数を聞くたびにいら立ちました。しかし、派遣期間の終盤になってくると、そのような犠牲者数も徐々に"数字"になっていく感覚に気づいたことも辛かったです。それだけ、"死"が日常化した毎日でした。

派遣期間を終えて帰国後は?

いつものように、日本に帰ってくると無職です!ただ、海外派遣中はほとんど持てなかった自分の時間が持てるので、好きなことをしています。仕事以外にもやりたいことは色々あるので、こういう時間が持てるのはありがたいです。

中学校時代からのサッカー友だちとサッカー&サッカーのテレビ観戦(今は高校サッカー選手権が熱いです)、部屋の整理、読書、ハイキング、飲み会など。2013年の3月くらいには心身ともに準備を整えてまたどこかの国で活動したいです。(※2013年3月からパキスタンに派遣中)

今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

MSFが活動を行う国では、私たちが日本では経験することのない困難に数多く直面すると思います。言葉、文化や生活習慣、法規制や人びとの気質がそれぞれ異なるからです。

しかし、あまり心配することはないと思います。困難も多い ですが、いろいろな素晴らしい人とも出会うことができるからです。お金持ちとそうでない人、日本人、外国人、信仰心が熱い人、無宗教の人など、さまざまな 人たちです。それらの人たちに支えられながら必死に解決策を考えていくことが大事だと思います。

このような現場で働くのは正直大変ですが、これがMSFで働く大きな魅力だと思います。

特別読み物「縁の下の力持ち、ロジスティシャンの仕事」(小口隼人)はこちら

MSF派遣履歴

派遣期間
2012年9月~2012年12月
派遣国
シリア
プログラム地域
ポジション
ロジスティック・コーディネーター
派遣期間
2012年4月~2012年6月
派遣国
マラウイ
プログラム地域
リロングウェ
ポジション
ロジスティック・コーディネーター
派遣期間
2011年2月~2011年9月
派遣国
スリランカ
プログラム地域
コロンボ
ポジション
ロジスティック・コーディネーター
派遣期間
2010年4月~2010年9月
派遣国
南スーダン
プログラム地域
北バハル・エル・ガザル
ポジション
ロジスティシャン
派遣期間
2010年1月~2010年3月
派遣国
ハイチ
プログラム地域
ポルトープランス
ポジション
ロジスティシャン
派遣期間
2009年4月~2009年11月
派遣国
コンゴ民主共和国
プログラム地域
北キブ州
ポジション
ロジスティシャン
派遣期間
2008年6月~2009年1月
派遣国
スーダン
プログラム地域
南ダルフール州
ポジション
ロジスティシャン
派遣期間
2007年5月~2008年3月
派遣国
スーダン・西ダルフール州
プログラム地域
西ダルフール州
ポジション
ロジスティシャン

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