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サイトトップ > 証言 > 「だれにも彼女の尊厳を奪うことはできません」

「だれにも彼女の尊厳を奪うことはできません」

(2009.8.24)

フィオナ・バスは、コンゴ民主共和国(以下「コンゴ」)北キブ紛争地帯の中心にある町、マシシの国境なき医師団(MSF)のプログラム活動していた看護師だ。彼女は、コンゴ民主共和国の東部で武装した男たちにレイプされたある患者について、次のように語った。

「だれにも彼女の尊厳を奪うことはできません」

彼らの目的は金品でした。北キブで銃を持った若者が手に入れられるものはいろいろありますが、そのひとつは時間、つまり、うろついたり、質問したり、観察したりする時間です。ある週のこと、結束のゆるい武装集団が、村の周辺をぶらついていていました。きっと腹を空かせて、収入もない連中だったのでしょう。彼らはある家族が牛を売ったという噂を耳にしました。彼らは様子を伺い、何気なく人に尋ね、計画を練りました。

金曜の夜、彼らはその家族を襲撃しました。彼らは父親を殴り倒し、息子たちに、行け、遠くへ行ってしまえ!と叫びました。そして母親には、娘の中でどの子がよいか、と尋ねました。彼らは、家族が所有していた金、財産、すべてを奪ったうえ、娘まで、村中が聞こえるような大きな音を立ててレイプしたのです。

彼らが順番に娘をレイプしているとき、ひとりが得意げにこう言ったそうです。『姉ちゃん、あんたのことは前に見かけてから、ずっと目をつけてたんだ。これで、もうあんたを欲しがる奴はいないだろうな』。彼らが去ってから、彼女は体をぬぐい、血を拭き取りました。彼らが空に向かって銃を撃つ音が聞こえました。父親は泣きました。どこにも助けを求めることはできませんでした。

翌日、彼女は友達と二人で畑仕事をしました。痛みがありましたが、家にはいたくありませんでした。家に帰る途中、待ち受けていたあのグループの男たちがこう言って彼女をあざけりました。『姉ちゃん、しゃべるんじゃないぞ。あんたの家を焼きたくないし、母ちゃんだって殺したくないからさ。親父もあれだけ殴ったら黙ってるよな』。二人はそこから走って帰りました。そして彼女は決心したのです。

私たちは教会にひとりでいる彼女を見つけました。私たちMSFの移動診療は、この近隣の村を週2回訪問しています。診療には経験を積んだカウンセリング技術を持つ看護師が同行し、レイプされた女性や子どもの治療をすぐに開始できるように、必要な医薬品とワクチンをすべてそろえています。準備はできています。過去の経験から学んでいますから。彼女は母親に、その日の朝に教会に会いに来てほしいと告げました。それは、彼女の願いを私たちが受け入れるかどうかの結論を、母親とともに聞くためでした。

彼女は決心して家を出て以来、水も食糧も持たず、一人で教会に2晩泊まっていました。村人たちが彼女に何か必要なものはないかと尋ねたところ、彼女はドアの向こうから、ない、ただ1人にさせてと答えたそうです。私たちは彼女に、HIVの感染リスクの低減処置、ワクチン接種、体の洗浄、鎮痛剤の投与といった治療を行い、彼女の話を聞きました。

彼女は、黙って涙を流し、背筋を伸ばして両手をひざのうえに組んで座り、一定の口調で静かに何時間も話しました。私たちは彼女の願いを聞き入れました。それは、武装した男たちが彼女は家族に捨てられたと信じ込み、家族の命に危険がなくなるまでマシシに行って、弱い立場の女性のための施設、ウェルカム・ビレッジに滞在したいという願いでした。打ち明けて助けを求めることで、彼女は自分の沈黙を彼らに納得させ、自制心と尊厳を取り戻すつもりだと、彼女は言いました。彼らはこれ以上、家族に危害を加えないでしょう。

彼らが彼女を脅迫し、操り、見下そうとしたにもかかわらず、彼女は知性と精神力があることを示しました。だれも彼女の尊厳を奪うことはできなかったのです。なぜレイプのことを話してもよいか、なぜレイプのことを話さなければならないのか、彼女はその理由を証明してくれていると思います。なぜなら、私たち人間は人格によって理解されるべきであって、私たちが何をされたかによって理解されるべきではないからです。そして、レイプ犯が脅し、破壊しようとしている地域社会の結束を維持しているのが、彼女が示したような勇気なのです。

私は、この事件の衝撃が今後彼女に与える危険性について、甘く考えてはいません。彼女は一生、毎日、事件ことについて考えるでしょう。しかし、私たちが戦争地帯の、社会と家族を分断するレイプの結果を真に理解したうえで、これらの話を共有するなら、悲劇を体験したのは自分だけではないことを被害者が知り、自身を再建できる社会を作ることができます。これらはゆがんだ紛争の日常的な現実です。でも、彼らは自分を恥じたり、孤立したり、自暴自棄にならなくてもよいのです。

これは、2009年2月に起こった事件である。MSFはマシシの町でベッド数170床の基幹病院を運営するほか、診療所1ヵ所を支援している。また、MSFはこの地域の交通の不便な数ヵ所で移動診療を行っている。

性暴力によって世界中で数百万人が被害を受け、女性、男性、子どもの人生が粉々になっている。

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