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ウバンギ川沿いの忘れられた人びと

(2010.3.11)

コンゴ共和国と中央アフリカ共和国(CAR)のウバンギ川沿いで暮らす何万もの難民家族が、食糧、避難所、医療の著しい不足に直面している。これらの難民は、隣接するコンゴ民主共和国(DRC)赤道州で昨年末に起こった暴力行為から逃れてきた人びとである。以来、10万人を超える難民がウバンギ川のほとりにたどり着いており、ここ数週間で新たに1万1000人以上が到着した。国境なき医師団(MSF)は川沿いの20ヵ所を超える場所で医療援助を提供している。

コンゴ民主共和国・赤道州の戦闘を避け、コンゴ共和国へ逃れてきた難民。(2009年11月撮影)
コンゴ民主共和国・赤道州の戦闘を避け、コンゴ共和国
へ逃れてきた難民。(2009年11月撮影)

難民の数と避難先の住民の数がほぼ同数に

ここ数週間にわたって、1万1000人を超える難民が、DRCでの暴力行為を逃れてコンゴ共和国へと押し寄せた。昨年10月にDRCの赤道州で起きた戦闘から4ヵ月が経ち、コンゴ共和国のアンフォンドの南に位置するリランガの、ウバンギ川沿いで暮らす難民の数は10万人を超えるまでに増えた。難民家族は、DRCの自宅から数km離れた全長500kmに及ぶ川岸に沿い、小人数の集団に分かれて点在している。

MSFは、CAR南部のモングンバからコンゴ共和国のアンフォンドにかけて、ウバンギ川沿いの20ヵ所を超える集落で、常設診療所および移動診療によって医療を提供している。このほかにも、医療スタッフが現地の診療所1ヵ所およびアンフォンドとモングンバの病院で活動している。深刻な合併症を起こしている患者は全員、病院に移送して治療を行っている。提供している医療ケアには、産前検診、栄養失調の治療、予防接種も含まれる。コンゴ共和国のベトゥ郡では1歳から5歳までの子ども1万人以上にはしかの予防接種を行い、CARのモングンバ郡では現在、生後6ヵ月から15歳の子どもに、集団予防接種を行っている。

昨年11月から今年1月にかけて、MSFは2万5000件を超える診察を行ったが、患者の大半(75%)は難民であり、最も多く見られた病気は急性の呼吸器感染だった。ベトゥ郡におけるMSFの活動責任者、カロリーヌ・ルソーはこう語る。
「難民の生活環境は、今でも非常に不安定なままです。こうした呼吸器関連の疾患は、避難所の不足と関係しています。マラリアの患者も大勢います。私たちは2500家族に蚊帳やその他の生活必需品を配布しましたが、まだすべき事は多くあります。一方、水の供給が改善されたことと石けんの配布によって、ここ数週間にわたり下痢の患者数は安定しています」

物資の配給は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および世界食糧計画(WFP)が中心となって準備されつつあるが、難民の基本的なニーズの一部をカバーするものでしかない。その理由は、約500kmにわたる川沿いに援助物資を輸送し、配給するにはかなりの資金や労力が必要となるという現実的な問題が立ちはだかっているためだ。適切な手段が利用できるようになるまで、難民の日々のニーズに対する援助を与えられるのは地元の住民だけである。難民の数は今や、元々恵まれない地域であるこの地の住民の数とほぼ同数に達しており、物資の状況は、ひっ迫している。

ルソーは語る。
「食糧の配給が不十分なため、難民は対岸の村にある自分の畑まで食糧を探しに戻らざるをえません。しかし、主要な町以外ではまだ治安が回復しておらず、特に女性は、こうした短い往復の間に暴力を受ける危険にさらされています。性暴力の被害にあった女性をこれまでに何人か治療しました。さらに、国境を越える人びとはDRC側とコンゴ共和国側の双方で税金を払わなくてはならないこともあります」

公式な「難民」認定を受けた人は皆無

MSFは、難民の子どもへの栄養失調治療やはしかの予防接種を行っている。(2009年11月撮影)
MSFは、難民の子どもへの栄養失調治療やはしかの予
防接種を行っている。(2009年11月撮影)

DRCの政府軍は現地で展開しているが、現地住民はDRC赤道州の状況は依然として危険であると考えている。国連によれば、自宅からは避難したが、赤道州内にとどまった6万家族の一部は、現在自宅に戻っているという。

MSFは昨年12月から、DRC赤道州のボムボマとマケンゴにある診療所で活動しており、難民と現地住民に対して、平均で週に1300件の診察を行っている。主な病気はマラリア、性感染症、呼吸器感染である。最近になって、ドンゴ州の南部に位置するイムスとエンイェレへの交通状況が改善した。MSFの医療チームが2月18日からエンイェレの状況を調査したが、状況は落ち着いており、この地域での戦闘から避難していた人びとの大半は帰還することができている。しかし、州のさらに南部、ブブルとボモンゴ付近の沼沢地では軍事作戦や衝突が今も続いている。

今年の1月初旬、MSFは赤道州での暴力行為から逃れた難民に対する保護を保証する必要があると警告を発した。MSFの疫学研究組織であるエピセンターが実施した、過去にさかのぼった死亡率調査によれば、昨年の10月28日から11月3日までの7日間で、赤道州における暴力行為が原因の死者数は1500人に上ると推定される。UNHCRは、直接的な暴力行為や十分に根拠のある恐怖を理由に国から逃れる人びとを保護するという任務を託されている。国境の反対側のコンゴ共和国では、UNHCRが数週間前から難民登録を始めた。「難民」という地位は、弱い立場にある人びとに基本的人権の尊重を保証し、迫害を受ける危険性がある国への強制送還を防ぐためのものである。しかし、この事態においては、これまでに公式に「難民」認定された人は1人もいない。

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