毎年推定350万人から500万人、6秒に一人の子どもが栄養失調に関わる原因で命を落としている。しかし、幼児期の栄養失調は栄養価の高い食糧を適切に食べていれば予防が容易な病気であり、現在出回っている栄養治療食で治療が可能である。
近年、幼児期の栄養失調に関する研究は大きく進んでおり、5歳未満児の最も重度の栄養失調を治療するために、タンパク質、ビタミン、ミネラルの豊富なそのまま食べられる栄養治療食(RUF)を提供する手法についても国際的合意が生まれている。それでは、今なお5500万人もの子どもたちが、この悲惨な病気に苦しんでいるのは、いったいなぜだろうか。
その答えの一つは、効果的な栄養治療プログラムに向けた資金援助の不足にある。
11月、国境なき医師団(MSF)はローマで開催された世界食糧サミットに先がけて、幼児期の栄養失調における資金援助の傾向、および食糧援助に関して詳細に分析した報告書を発表した。世界的に本来なら予防可能とされる死者は膨大な数にのぼるにもかかわらず、栄養失調撲滅に向けた世界の富裕国の拠出総額は、2000年から2007年までの7年間、横ばい状態にある。世界銀行は、発育不全の割合が極めて高い36ヵ国の栄養失調対策には118億米ドル (約1兆667億円)が必要であると算定しているが、実際に富裕国が行った資金援助は年間わずか3億5000万米ドル(約316億4000万円)にすぎない。
2005年から2007年にかけて、MSFは独自に1年あたり約4000万米ドル(約36億1000万円)─資金拠出国数ヵ国よりも多い額─を国連が推奨する、そのまま食べられる栄養治療食(RUF)を用いた治療法を主とする栄養治療プログラムに投じた。またこの他にも、5歳未満児の栄養失調が特に蔓延する国32ヵ国向けには、世界銀行の調べで7億米ドル(約632億6000万円)が必要であるとMSFはみている。
しかし、何十億ドルもの国際援助が「途上国への食糧援助・食糧安全保障」や「緊急食糧援助」に向けられている。MSFが詳細にデータを検討したところでは、この援助額のうち、幼児の栄養失調対策に直接投じられたのは、わずか2%未満だった。現在、食糧援助にあてられているこの数十億ドルの一部でも、5歳未満児に適した食糧調達のために再配分できれば、何百万人もの子どもたちの発育阻害、病気に対する抵抗力の低下、そして死亡という栄養失調の悲惨な影響を低減する上で大いに効果があるだろう。
また、食糧援助システムには非効率な手法が多く見られる。たとえば、アメリカ政府が行う現物支給による食糧援助は、現地で調達するよりも6億米ドル(約542億円)の費用が余計にかかる。さらに、他の大部分の国際食糧援助と同様、アメリカ政府の食糧援助はトウモロコシと大豆の粉(CSB)を用いた強化混合小麦粉が主体である。こうした食糧のわずかな栄養素は幼児には吸収されにくいため、栄養失調を予防する上ではほとんど役に立たない。
2008年には、MSFはおもに栄養価の高いRUFを用い、22ヵ国で30万人を超える栄養失調児を治療した。RUFは食糧援助システムで現在用いられる製品より高くつくものの、重度栄養失調の予防と治療に効果があり、大規模な人数に適用できる。援助が必須である何百万人もの子どもたちに適切な栄養を与えるプログラムに対し、利用可能な資金を増強しなければならない。そして、そのためにも緊急に必要な措置を講じなければならない。