MSF、11回目の「10の最も深刻な人道的危機」リストを特設ミニサイトにて公開

~治安の悪化と省みられない医療ニーズの増大を如実に反映~

国際的な医療・人道援助団体である国境なき医師団(MSF)は、本日「2008年、10の最も深刻な人道的危機」を特設ウェブサイト、
http://www.msf.or.jp/special/Top10_2008/
にて公開する。

コンゴ民主共和国(DRC)、ソマリア、イラク、スーダン、そしてパキスタンにおける一般市民を対象とした大規模な強制移住、暴力、満たされない医療ニーズ、さらにミャンマーやジンバブエにおける医療上の緊急事態、これらは、現在世界が直面している最悪の人道・医療上の緊急事態のうちの一部である。

特設ウェブサイト、
http://www.msf.or.jp/special/Top10_2008/
にて公開される本レポートには、紛争により影響を被った人々のもとに援助を届けることがいかに困難であるかが強調されている。

また、国際社会からほとんど関心が寄せられていない、HIVと結核の二重感染率の上昇や、年間500万人近い子どもの死の根底にある栄養失調を予防・治療するために必須である、緊急を要する取り組みの強化など、諸問題を取り上げている。

MSFの国際理事会会長であるクリストフ・フルニエは次のように語る。

「MSFの医療チームは世界中の危機に直面している地域の最前線で活動を繰り広げながら、極限の暴力、強制移住、治療可能であるにも関わらず省みられていない疾病や医療ニーズが人びとにもたらす医療及び心理的な影響について、自ら目撃した事実を証言しています。人びとの元に赴くことが大変難しい状況から、MSFが唯一、独立した団体として人命救援の援助を提供している地域もあります。この場合、MSFは治療を施すだけではなく、人びとの耐え難い苦しみやほとんど無視されることの多い基本的な人道援助のニーズに対し、目撃者として証言活動を行う重大な責務があります。」

2008年のリストに掲載された国々の多くでは、公平な人道援助への活動余地がかつてないほどに狭められており、被害による影響を最も受けやすい人びとへ援助を届けることが極めて困難になっている。

現在、援助団体は増大する治安リスクと、従来よりも危険で脅威にさらされた環境の中、活動を行っている。ソマリア、パキスタン、スーダンおよびイラク等の、事態がきわめて政治問題化し情勢が不安定な紛争地域においては、中立性と独立性に基づいて活動しているMSFさえ、増え続けている医療ニーズへの直接的な取り組みが制限されている。

2008年、ソマリアでは人道援助従事者に対する直接的な攻撃や脅しを含む暴力行為の激化にともない、MSFは外国人派遣スタッフを退去させるなど年内における活動を縮小せざるを得ず、パキスタンでは、年初に北西部で対ゲリラ活動キャンペーンによる空襲と空爆の巻き添えになった数十万の人びとが避難を余儀なくされた。

政府が健康医療政策を優先することを怠り、NGOの活動に疑念を抱いているミャンマーやジンバブエのような国々では、人道援助団体は提供可能な援助の種類が制限されるか、又は、計り知れない医療危機に自力で対処せざるを得ない状況に放置されるかのいずれかである。MSFがHIV/エイズ治療の主要な提供者になっているミャンマーでは、多くの人びとが深刻な医療不足により不必要に命を落としているにも関わらず、政府による自国民に対する支援策はあまりにも少なすぎる。

子どもの栄養失調危機を放置している政府もある。
2008年に多くのの子どもたちが急性栄養失調に苦しんでいたニジェールのマラディ県では、MSFに対し、子どもに対する栄養治療プログラムを終了することを強制した。このため、子どもたちは高い効果が実証されている治療を受けることができずにいる。プログラムの閉鎖は、栄養失調対策への世界的な取り組みが、今まで以上に大きな可能性を持ち、かつその必要性が増している時期と重なった。

フルニエ会長は続ける。

「人道援助団体は、現地の人びとの生命にかかわる重要な医療支援のニーズに十分に応えられずにいるのが実情です。MSFは「10の最も深刻な人道的危機」リストを発表することによって、戦争や紛争に巻き込まれ、医療危機の影響を受けている多くの人びとに対する、国際社会からの注目を高めたいと願っています。人びとへの、緊急を要する必要不可欠な医療ニーズはないがしろにされ、その声は届くこともないのです。」