結核は、毎年約170万人の命を奪い、9百万人が新たに発病している。HIV感染率の高い国、中でも最も高いアフリカ南部の国々では結核の感染者が増加している。結核はHIV/エイズ患者の最大の死因のひとつであり、過去15年で、HIV感染者の多い国では結核の新規感染例は3倍に増加した。HIV/エイズ患者は、非感染者と比較して結核を50倍も発病しやすく、世界のHIV/エイズ患者3300万人の約3分の1は潜伏結核に感染している。しかし2006年には、HIV/エイズ患者のわずか1%足らずが結核検査を受けたに過ぎない。
HIV/エイズ治療は世界的にかなり注目を集めているが、HIV/エイズと結核に二重感染している患者については、精度の高い診断ツールが欠如しており、また治療が複雑であることからその大半が見過ごされている。また現行の標準的な治療プログラムは治療の対象をどちらかの病気に限定しているが、それでは患者が二重感染している場合、また他の疾患にも感染している場合に対応できない。
HIV/エイズ患者に対する結核の診断は難しく、しばしば治療の遅れにつながり、死亡率の上昇へと結びつく。一般的な喀痰顕微鏡検査は1世紀以上も前に開発されたもので、HIV/エイズ患者の大半において結核を検出できない。痰のサンプルをプレートや培養液で培養する迅速培養法では、より多くの患者を発見できるが、検査の実施は非常に煩雑である。培養法はその複雑さから、患者の大半が生きる現実とは乖離しており、あまりにも多くの患者が適切な治療を適切な時点で受けることを妨げられている。
今日の結核治療法はそれ自体が時代遅れの複雑な手法であり、二重感染患者に固有の問題に適応していない。医療提供者はまず4種類の結核治療薬を使用しなければならない。時には嘔気や嘔吐、神経障害、肝炎などの副作用もある。次には患者が服用しているHIV/エイズ治療薬の効果に対して、結核治療薬が負の作用を与えないことを確認しなければならない。過去数十年間、広範に使用できる新たな結核治療薬は開発されておらず、薬剤耐性結核の増加が問題をさらに複雑にしている。
おそらく最も重要なのは、世界規模の資金拠出者と各国政府が、この迫り来る健康上の脅威と正面から取り組むために、新たな診断法と治療薬の開発に投資することである。国境なき医師団(MSF)は、結核治療薬、診断法、そしてワクチンの研究開発の大規模な拡大を求めている。HIV/エイズの活動家団体であるTreatment Action Group(TAG)によると、結核治療の新たなツール開発には約20億米ドル(約1758億円)が必要だが、2006年には推定わずか4億2900万米ドル(約377億円)しか投資されていない。