ハイチ:がれきの中の新しい命と直面する課題

2010年02月05日掲載

ハイチを襲った壊滅的な地震の発生直後から、重傷患者の治療や整形外科手術の膨大なニーズに対応するため、国境なき医師団(MSF)は休みなく活動してきた。また同時に、帝王切開などのより“日常的”な救命手術を含めた妊婦向けの緊急産科ケアも提供している。


地震による影響で妊産婦の病状が悪化

18歳のジェニーは首都ポルトープランスのシャンスレル地区にあるイザイ・ジャンティ病院で、地震発生後に出産した最初の女性たちの一人だ。彼女はMSFの介助を受けて、元気な男の子マイクを産んだ。その後、この病棟には次々と新たな患者が加わり、今では活気に満ちた、いつもの産科病棟の様相を取り戻している。

地震の前には、イザイ・ジャンティ病院は産科医療を専門としていた。だが、膨大な外科ニーズに応えるため、MSFはハイチ保健省の職員と協力して、整形外科手術、術後ケア、理学療法、心理ケアを含む幅広い医療サービスの提供を開始した。しかし、同病院は今なお産科医療の基幹病院でもある。MSFは1日平均12人の新生児の分娩を介助しているが、その40%以上が帝王切開である。

同病院のMSFの助産師、エヴァ・ド・プレッカーは語る。
「私たちは、心的外傷に起因する多くの未熟児を取り上げてきました。女性たちは子癇前症または子癇を発症した状態で受診に来ています。これはストレスによって悪化する重い病気です。ハイチでは地震の前から子癇の割合が大変高かったのですが、今回の地震による大規模な被害で、おそらく状況がさらに悪化したものと思われます」

子癇前症および子癇は、高血圧、過剰タンパク質、むくみを引き起こし、母子双方に発作、心不全、時には死をもたらす場合もある。帝王切開を含む質の高い緊急医療を提供することで、母子の命を救うことができる。

産科医療拡充の必要性

シャンスレル地区にあるイザイ・ジャンティ病院で出産した女性の一人と赤ちゃん。
シャンスレル地区にあるイザイ・ジャンティ病院で出産した女性の一人
と赤ちゃん。

ド・プレッカーはこう続ける。
「地震からほんの数日後には、病院の産科病棟は満員になりました。深刻な合併症を起こしている女性は、出産後の回復に通常より長い日数を要します。同時に、私たちの援助が必要な新たな妊婦と赤ちゃんのための場所を、さらに確保する必要があります」

週末にはMSFは病院の小さな備品室を追加の産科病室に改造し、ベッド数を18床から40床に増やした。しかし、新たな妊婦の受け入れを遅らせている原因は、既に入院している患者の回復期間が長引いているせいだけとは限らない。数千世帯の家族が路上で眠る生活をしており、多くのハイチ人女性には安全に出産しても子どもを連れて帰る家がないことも原因のひとつだ。

母親のジェニーが地震ですべて失ってしまったため、幼いマイクは厳しい将来に直面している。家が全壊し、家族の消息もわからないジェニーは、マイクの父親は地震で亡くなったと思っている。

ド・プレッカーは重ねて言う。
「マイクとジェニーは元気なので、通常ならば、もう退院しているはずです。しかし、頼るあてもなく、私たちは2人の受け入れ家庭を探しています」