
中央アフリカ共和国:健康へのメロディー―ご当地ソングで病気と闘う―
2009年12月28日掲載

中央アフリカ共和国北部のマイティクルでは、国境なき医師団(MSF)がアフリカ睡眠病の治療プログラムを実施している。ここで活動する、ファミリ-・ナース・プラクティショナー(医師に近い医療行為ができる資格をもつ看護師)で救急看護認定看護師の、キャサリン・エイミー・シスターマンの現地からの報告をお届けする。
「あなたの元気がマイティクルの願い」
マイティクルでMSFの看護師として活動を始めてから、5ヵ月が経ちました。私たちの医療プログラムは、反政府勢力支配下にある農村部で提供されています。MSFはここで唯一の医療提供者であり、分野に関係なく唯一の国際組織です。
私たちはここで主にアフリカトリパノソーマ症、別名アフリカ睡眠病の治療を行っています。この病気は簡単に言うと、ツェツェバエ に刺されることで感染し、死に至る危険性のある病です。もちろん、小児栄養失調、重度の脳マラリアなど、ほかにも数え切れないほど、多くの医療ニーズがあります。患者はMSFによる無償の医療を受けるために、長い距離を歩いて、時に丸木舟(小さな平底船)で川を渡ってやってきます。
私はここに来るまで、この国のことを何も知りませんでした。しかし、今ここに来てみると、これまで探していたものの多くが見つかり、それと同時に、これまで無意識のうちに探していたものも見つけることができて、喜びを感じています。ここの人たちは肉体的にも精神的にも、とても強いです。彼らと出産、病気、回復といった最も個人的な時間を分かち合える私は幸せです。この地方の言語は、ムベ語といいます。マイティクルの患者は歌が大好きなので、私はムベ語の短い歌を作りました。ここの人びとはみんな天性のパフォーマーで、人前で演じることを恥ずかしがる人はいません。
私たちの病棟では、マラリアにかかっていなかった栄養失調児がマラリアに感染する事態が発生していたので、私は毎晩患者に蚊帳を吊るように呼び掛けています。母親たちに蚊帳を使ってもらうため、私は「蚊が子どもにマラリアを運んでくるのよ」と声を掛けるようになりました。私がいつもそう繰り返して言うので、あるとき一人の患者がからかって同じセリフを教会のメロディーに乗せて歌ったのです。その後、私たちはこの歌に歌詞を付け加えました。
保健衛生活動は、ちょっとした楽しみがあると効果が上がります。そこで、人びとに楽しんでもらおうと、歌詞を考えました。最初の一行は、「蚊は子どもにマラリアを運んでくるのよ」です。次に「蚊に刺されると、アフリカ睡眠病になる。トリパノは重病、治療しないと死んでしまう」。そして最後の節は、「あなたの元気がマイティクルの願い。あなたの健康がMSFの望み」です。
地域にも広がる、子どもたちの歌声
私は、村でアフリカ睡眠病や栄養失調のスクリーニングをするときや、予防接種の登録をするときなど、地域でアウトリーチ*活動をする際に、この歌を教えています。人びとは短時間で終わるスクリーニングテストのために、列に並んで数時間待ちます。陽性の人は、病気をとてもまじめに受け止め、遠くから私たちの診療所へやって来て、治療のために1~2週間入院します。
*アウトリーチ活動:こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること。
地域でのアウトリーチ活動は、私が大好きな仕事の一つです。現地スタッフのチームも、自分の仕事と知識、そして仲間を助けているという事実に誇りを持ち、大いに仕事を楽しんでいます。また、村を訪問することは、以前患者だった人たちに会えるすばらしい機会でもあります。つい最近私たちは、6月に重いアフリカ睡眠病で神経疾患を発症していた幼い少年と1日を過ごし、一緒に遊ぶことができました。当時、少年の病状はとても重く、歩行が困難で発話障害もあり、朝から晩まで眠り続け、夜通し叫ぶという状態でした。だから、私たちは皆、少年のことをよく覚えていました。少年の父親は、隣のベッドの患者から文句を言われ、他の患者が眠れるように、夜間、息子を抱いて土の道を行ったり来たりしていました。でも、少年はもう治ったのです! 少年が他の子どもたちと走り回り、遊ぶのを見ることができたのです。父親はとても喜び、もう普通の男の子に戻ったと話していました。
一日が終わる頃には、少年と他の村の子どもたちは、私の保健衛生の歌を覚えました。子どもたちがこの歌を歌っているのを聴くと、いつも元気が湧いてきて、無駄なことは何もないという思いを新たにするのです。