マラウイ:ARV治療が支える、人びとの生きる喜びと生き甲斐

2009年11月20日掲載

マラウイ

ここ数年、抗レトロウイルス(ARV)治療が継続的な資金援助により拡大され、貧しい国に住む何百万人もの命を救っている。貧困にあえぎ、開発の遅れている農村部に住む人びとが、生きる喜び、生き甲斐のある充実した生活を取り戻すことができるようになった。マラウイの南部チョロ郡に住む何万人ものHIV/エイズ感染者と彼らを治療する医療従事者も、こうしたケースの一つだ。

国境なき医師団(MSF)の准医師、オレシ・エルマニ・パスラニが、これまでの5年間に自身が経験したこと、見たことを話してくれた。


ARV治療導入前は、ただ死を待つだけの日々

マラウイで活動するMSFの准医師、オレシ・エルマニ・パスラニ。
マラウイで活動するMSFの准医師、
オレシ・エルマニ・パスラニ。

「2003年にARV治療を始めるまでがどういう状況だったか、今でもよく覚えています。私たちには、HIV検査とカウンセリングを自発的に受けるように勧めることしかできませんでした。コンドームの使用を奨励し配布する、HIV/エイズ以外の性感染症を治療する、そこまでだったのです。多くの患者が終末期症状のために自宅で緩和ケアを受けていました。ARV治療がない中、できることはほとんどありませんでしたから、HIV検査を進んで受けに来る人は非常にまれでした。検査でHIV陽性と判定されることは、死刑宣告を受けるに等しいことだったのです」とパスラニは話す。

医療従事者は失望していた。できるのは、在宅ケアで患者の慢性疾患を治療し、終末期ケアを施すことだけだったからだ。パスラニは語る。「ただ看病するだけ、そして患者が亡くなる日を待つだけなのです。本当につらいことでした。HIV陽性とわかった人びとが、どんなに打ちのめされるかを見ることになるのです。ARV治療が始まるまでの時期は医療従事者にとって本当に厳しく、完全に意欲をそがれてしまうほどでした」

ARV治療導入で一変した人びとの人生と地域社会

MSFとマラウイ保健省が標準化したHIV治療を開発した結果、2003年にチョロ郡でのARV治療が拡大された。そして、その地域全体では、だれもが治療を受けられるようになり、何千人もの人びとの人生はもとより、地域全体の生活も一変した。2008年末までにはARV治療を受ける人数はさらに増加し、2009年もだれもが治療できる環境は維持されている。

「今では、HIV/エイズ感染者に気力があります。長い苦しみのあとに光が見えてきたのです。村々の人びとの中に希望がわいてきました。医療従事者も、ARV治療をすれば人びとの生活が変わることが目に見えてわかるのです。これまでベッドに寝ていた感染者がARV治療を始めるとします。6~7ヵ月後に市場や町の通りで同じ人を見かけると、すっかり変わっているのです。彼らには生きる喜びがあるのです」

とはいえ、HIV/エイズへの資金援助が早期に打ち切られる恐れがあり、アフリカ・サハラ以南諸国の最もHIV/エイズが蔓延しているエリアに住む感染者に影響が出るのではないかと、パスラニと彼の同僚は懸念している。

「ARV治療を継続し、さらに強化することが重要です。治療を制限していた頃に戻れというのでしょうか? これは生きていくための権利なのです。治療ができなくなれば、ARV治療がなかった頃よりも、さらにひどい状況になりかねません。また、地域社会と医療従事者が長年にわたり築き上げてきた信頼関係も崩れてしまいます」パスラニはそう訴える。