世界エイズデー 2006

2006年11月掲載

治療を受けていない人びとも生き続ける必要がある
–高価すぎて入手できないエイズ新薬–

国境なき医師団(MSF)は、国際機関がエイズ治療の新薬が高価である現状に対して真剣に取り組まないかぎり、途上国における治療を継続することができないだろうと警告する。世界保健機関(WHO)が改良された新薬の途上国における使用を推奨した最新のエイズ治療ガイドラインを発表してから5ヵ月が経過したが、途上国におけるこれらの新薬の入手援助に向けた具体的な戦略を未だに打ち出せないでいる。途上国では、依然としてこれらの新薬がほとんど入手不可能な状態が続いている。

治療を始めた患者に対してWHOが新たに推奨する投薬計画では、今日もっとも広く用いられている混合薬と比べて6倍もの費用がかかる。その上、抗レトロウイルス(ARV)薬治療を受けている患者は、治療薬への耐性や副作用のために、いずれ新薬への切り替えが必要となる。治療薬に対して耐性が生じた場合、患者は完全に新しい混合薬を投与されなければ、ふたたび病に冒されて死に至ることになる。この「第二選択薬」を用いた療法では、従来に比べ50倍もの費用がかかることになる。

MSF必須医薬品キャンペーンのディレクター、ティド・フォン・シェーン・アンゲラー医師は語る。「昨年の経験からわかったことが2つあります。まず、高い薬価に対して何らかの手を打たないかぎり、治療費は今後大幅に上昇していくだろうということです。そして、問題解決にあたって製薬会社に頼ることはできないということです。方針を抜本的に変えることが必要です。現在の薬価では、新薬入手のコストが治療プログラムを行き詰まらせるのは明らかです。しかし、政府も企業も国際機関も、この問題に取り組むための努力をほとんどしていません。」

現在、MSFは世界30ヵ国以上で65のプログラムを通じ、8万人以上の患者にARV治療を実施している。MSFの治療プログラムをもっとも長く実施している国のひとつ、南アフリカでのデータによると、5年間治療を続けている患者の17.4%が第二選択薬を用いた治療への切り替えを余儀なくされている。マラウイではMSFが1万1千人を対象にエイズ治療を実施しているが、推定ではそのうちおよそ1600人の患者が今後3年の間に新しい混合薬に切り替えなければならない。この切り替えには治療向け予算全体の70%が必要となる。

アンゲラー医師は言う。「安価なジェネリック薬が入手できるおかげで、途上国におけるエイズ治療は現実のものになりました。しかし、新薬のジェネリック版の継続的供給についても保証されなければ、治療プログラムは失敗するでしょう」。

2000年からのジェネリック医薬品競争により、エイズ治療の第一選択薬の中には、薬価が患者1人あたり年1万米ドル(約116万円)から130米ドル(約1万5千円)まで99%下がったものもある。それでも、インドのようなジェネリック薬主要製造国における特許障壁により、新薬の価格は高いままだ。コストに加え、途上国では新薬が市場で販売されない場合もある。

マラウイで活動するMSFのモーゼス・マサコワ医師は次のように語っている。「新薬の多くは私たちが活動している国では入手すらできません。製薬会社が優先的に登録してくれないからです。仮に入手できたとしても、富裕国で一般に使用されている薬を使えるまで何年も待たなければなりません。まったく受け入れがたいことです。」

テノホビルは富裕国でもっとも一般的に処方されるエイズ治療薬であり、WHOの推奨する薬剤のひとつでもある。米国では2001年に使用が認可されたが、製造したギリアード社は、途上国97ヵ国のうち、会社側の価格設定引き下げに見合った約15ヵ国でしか登録を実施しなかった。米国の製薬会社アボット・ラボラトリーズ社は、自国では自社製ARVの改良版である耐熱性ロピナビル/リトナビルの販売を1年前に開始した。しかし、改良版の新薬が熱帯性気候下での使用にはるかに適しているにもかかわらず、途上国ではいまだに登録された国は1つもない。タイやグアテマラなど、アフリカ以外の大半の途上国に対し、アボット社は患者1人あたり年2200米ドル(約26万円)という薬価を設定しているが、この額はこれらの国の平均年収をはるかに上回るものである。

本日幕を閉じたワシントンD.C.でのWHO、国連エイズ合同計画(UNAIDS)、世界銀行の高官レベルの会議では、医薬品特許が薬価を押し上げ続けているという現状が取り上げられることはなかった。

アンゲラー医師はこう続ける。「寄付金を高過ぎる薬品に浪費すべきではありません。薬価をできるだけ引き下げることが優先事項です。生命を救うエイズ治療がだれでも受けられるという状態が確実に現実化できるよう、国際機関、支援国、そして企業は方針を見直さねばなりません。このことは製薬会社と彼らの特許権に立ち向かわねばならないことを意味しています。」

MSFとHIV/エイズ治療
MSFは1990年代にHIV/エイズ予防と治療サービスの提供を開始した。2000年には、タイ、南アフリカ、カメルーンでのプログラムにARV治療を導入した。

関連サイト

MSF必須医薬品キャンペーン
必須医薬品キャンペーンに関する日本語のサイトです。

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必須医薬品キャンペーンに関するより詳細な情報が掲載されています。(英語)

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マラウイにおけるHIV治療プログラム(仏語)

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