海外派遣スタッフ体験談

社会インフラの整わない地でマラリアと栄養治療:熊澤 ゆり

2018年03月16日

熊澤 ゆり

職種
アドミニストレーター
活動地
ナイジェリア
活動期間
2017年7月~11月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回のトルコの活動を終えて、心身とも自分の調子を取り戻し新たな活動をしたいと思っていたところに、今回の派遣の情報をいただき、今までの経験が生かせそうだと思いました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

語学力の向上や健康の管理などをしていました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

今回はプロジェクトでの財務・人事管理の仕事でした。以前にも同じポジションで活動したので、やるべきことはほぼ同じで、管理のソフトウエアも使い慣れていたので特に大きな問題もなく仕事ができました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

ジャクスコ南東にある<br> ヨベ州ダマチュルの栄養治療センター<br>
ジャクスコ南東にある
ヨベ州ダマチュルの栄養治療センター
ナイジェリア北部ヨベ州、ジャクスコの病院が活動の中心でした。この地域は、隣のボルノ州から過激派組織「ボコ・ハラム」の攻撃を逃れてきた人たちが多く住んでいるだけでなく、もともと医療機関、学校、水資源など社会的なインフラへの投資が充分にされず発展していない地域です。プロジェクトは雨期の深刻なマラリアに対応するものでした。

マラリアの治療を始めてから、来院する患者さん、特に子どもたちに栄養失調の症状が多かったため、栄養プログラムが追加されました。また地域でのマラリア予防や病院での治療の啓発活動、地域の保健センターのスタッフへのトレーニングもしていました。
 
外国人派遣スタッフは活動責任者、医師2人、看護師2人、啓発担当、ロジスティシャン、アドミニストレーターの合計8人のチームでしたが、「フライング・ポジション」と呼ばれる、ナイジェリア国内の他のプロジェクトも含めて特定の活動を支援するスタッフも短期で活動していました。
 
私の任期中は栄養プログラムの担当者、臨床検査の担当者と感染予防担当者の3人が、3週間から2ヵ月ほど派遣されていました。私はチームの中で、アドミニストレーターとして支出や支払いの実行・管理、リクルートを含む人事管理、そして外国人派遣スタッフの宿舎の手配、首都への移動時の飛行機の予約などを担いました。
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

活動拠点の病院があるジャクスコではスタッフ用の宿舎が確保できなかったため、そこから車で1時間以上かかる町のホテルが宿舎兼事務所でした。

医療チームは毎朝8時に病院へ出かけ、夕方5時ごろ戻るスケジュールでしたが、ジャクスコの病院では電話やインターネット等うまく使えないため、デスクワークが多い私は残ってホテルで仕事をする日が多かったです。勤務時間は一応8時~午後5時ですが、必要に応じて夜または早朝に仕事をすることもありました。昼休みは午後1時半ごろからでした。銀行や税務署にも週平均2回ほどは出かけていました。

ジャクスコの病院へ行くのは病院スタッフとのミーティングや人材の採用試験、面接等のときだけで週1~2回程度でした。安全規則でジャクスコへはMSF車両が隊列を組んで出かけなければならないので、病院へ行く日は他のスタッフ同様8時に出発し5時ごろホテルへ戻りました。病院では食事が出ないので、皆手軽に持っていけるクッキーなど持参し、仕事の合間に食べていました。

勤務時間外はスーパーや市場へ買い物に行ったり、読書や、インターネットの接続が良い時は家族・友人にメールを書いたりしていました。

Q現地での住居環境について教えてください。

今回はホテルが宿舎となっており、スタッフはシャワー・トイレ、エアコンやテレビの付いた個室をもらっていましたし、ホテル側が、敷地内にMSF専用の台所と食堂の場所を無料で提供してくれていましたので不自由はありませんでした。敷地はそれなりの広さがありましたので、敷地内でランニングや縄跳びなど簡単な運動ができました。安全規則で街を歩くことができなかったので、敷地内を動けたのはありがたかったです。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

ナイジェリアはアフリカの中でも発展が著しい国と言われていますが、ヨベ州のジャクスコは各種インフラが不十分で、いわゆる遊牧民もいて貧しい地域でした。こうした地域で、たとえ栄養プログラムで栄養状態が改善して病気が治ったとしても、患者さん、特に子どもたちが退院後きちんと栄養の整った食事ができるのか懸念していました。

地域の失業率もかなり高く、任期中に医師や看護師、看護助手など何度か人材の募集をしましたが、1枠の募集に100人近くの応募があることも度々ありました。経歴書を見ても学校卒業後何年も雇用の空白のある人が多く、働く場が限定されているのがよく分かりました。

MSFのプロジェクトは短期の予定で、またマラリア治療、栄養改善といった医療に限定した活動をしたわけですが、人びとの生活を全体的に向上できるようナイジェリア政府や他団体と連携する必要性を感じました。栄養プログラムについては他のNGOに引き継げましたが、長期的な改善という意味では、自分たちの限界を改めて感じました。

Q今後の展望は?

心身の健康を整え、充電することです。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

現場にいると、仕事の場所と生活環境を自分で選ぶことができないので、仕事とプライベートの区別があいまいになってきます。また、日々思いがけない問題にも対応しなければなりません。その中で意図的に自分自身をリフレッシュさせる時間を短時間でも作ることが必要です。自分自身の意識のコントロールを意図的にすることや、どこでもできる運動や趣味を持っていると良いと思います。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2017年2月~5月
  • 派遣国:トルコ
  • プログラム地域:ハタイ
  • ポジション:アドミニストレーター
  • 派遣期間:2015年11月~2016年8月
  • 派遣国:中央アフリカ共和国
  • プログラム地域:バンギ
  • ポジション:財務コーディネーター
  • 派遣期間:2014年3月~2015年6月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:サヌア/アンマン/ジブチ
  • ポジション:財務コーディネーター
  • 派遣期間:2013年11月~2013年12月
  • 派遣国:フィリピン
  • プログラム地域:レイテ島ブラウエン
  • ポジション:アドミニストレーター
  • 派遣期間:2012年12月~2013年6月
  • 派遣国:エチオピア
  • プログラム地域:アロレッサ
  • ポジション:アドミニストレーター
  • 派遣期間:2012年5月~2012年7月
  • 派遣国:南スーダン
  • プログラム地域:ワオ/ラジャ
  • ポジション:アドミニストレーター
  • 派遣期間:2011年1月~2011年9月
  • 派遣国:ケニア
  • プログラム地域:イジャラ県
  • ポジション:アドミニストレーター
  • 派遣期間:2009年10月~2010年10月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:サヌア
  • ポジション:アドミニストレーター

この記事のタグ

職種から体験談を探す

医療の職種

非医療の職種

プロジェクト管理の職種

活動地から体験談を探す

国・地域