医療の技術革新とは?

MSFの医療チームは世界各地で活動する中で、多くの病気の治療に必要な治療薬や診断法、ワクチンなどの優れた医療ツールの不足が人びとに及ぼしている影響を、毎日じかに目の当たりにしている。何らかの診断ツールや医薬品が利用できる場合でも、それは時代遅れなものであったり、利用する地域の環境に適合しない、あるいは効果が無い場合も多く、患者に適切な治療を施せないことが頻繁にある。

結核は年間200万人以上の命を奪っているが、過去40年以上にわたり新薬が開発されていない。さらに、現在最も一般的に用いられている結核の診断法は、1880年代に開発されたものである。現在、MSFのプログラムを訪れる患者の中には、従来よりも強力な薬剤耐性を持つ結核の感染者が増えつつあるが、どの治療薬が患者に効果があるかを診断する検査は、遠隔地で利用するにはあまりにも高度過ぎる。たとえ優れた診断法を利用出来たとしても、薬剤耐性結核の治療には効き目の弱い薬を最長2年間服用し続ける必要があり、ひどい副作用も伴う。

結核は、医療ツールが不十分であることを示す一例に過ぎない。他にも同様の例が数多く存在する。HIV/エイズに感染した幼児の診断法がない。シャーガス病の患者を特定する簡単な検査法がない。HIV/エイズの治療に用いられる基本的な抗レトロウイルス薬(ARV)の中には冷蔵保存が必要なものもあり、自宅に電気が通っておらず、冷蔵庫なども持っていない患者にこうした薬を投与することはできない。ヒ素が基本成分の薬を用いるアフリカ睡眠病の治療には苦痛が伴うが、より効果的な治療法が未だに存在しないため、多くの患者はこの治療を受けざるを得ない、などである。

現在の研究開発モデルの失敗

利用する状況環境に適合ったした、効果的かつで安価な医療ツールが不足している理由はひと1つしかない。それは、現在今日の医薬品医療製品開発の資金調達方法に起因する。製薬会社は、研究開発への投資費用を回収するために医薬品を高額で販売するうえし、特許を独占を通じてしてその高い薬価を守るという方法をとっている。現在、医療分野のにおける研究開発システムはこうしたこれら製薬会社に依存しており、これが非常に大きな弊害をもたらしている。つまり、一部の医薬品は依然としてが多くの患者のにとってまったく手の届かないところにある状況が続いているのみならずままにあるだけでなく、貧困者が感染するケースが多い結核や小児HIV/エイズなどの病気は、より大規模で利益の上がる市場の対象となる病気とは異なり、あまり関心ももたれなければ研究への投資も行われないというわけである。

実際、世界の医療研究費の90%がは、世界人口のわずか10%未満しか影響を受けない健康問題にのために費やされている。1975年から2004年の間に、世界で市販された新規の化学物質は1556種類あった。このうち、熱帯病や結核の治療にかかわるものは、わずか20種類、つまり1.3%にとどまった。しかしながら、熱帯病や結核は疾病負担全体の12%に相当するのである。