モーリタニア:マリ人難民の栄養失調と死亡率が深刻な水準に

2013年01月19日掲載

マリで政治危機が発生してから1年、軍事クーデターによる情勢不安と、トゥアレグ族の反体制グループやイスラム主義組織が北部で活動を続けている影響で、大勢の人びとが退去を余儀なくされてきた。そのうち約5万5000人が、モーリタニアのムベラ難民キャンプで過酷な生活を送っている。国境なき医師団(MSF)による栄養状態の調査と死亡率の後ろ向き調査(注:因果関係を検討するための疫学的調査法)で、栄養失調率・死亡率ともに深刻な水準であることが明らかになった。モーリタニアにおけるMSFの活動責任者、カール・ナウェジに、難民キャンプの状況が警戒水準に達してしまった理由を尋ねた。

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ムベラ・キャンプの現状は?

MSFの栄養治療センターに入院している子どもとその母親

A.このキャンプは、マリ国境から数kmの砂漠地帯に設置されました。MSFが行った栄養調査では、最初の難民たちが到着した2012年1月以来、栄養状態が改善されていないことがわかっています。

また、全急性栄養失調(GAM)の子どもが17%、重度の急性栄養失調の子どもが4.6%との医学的データもあります。これは、キャンプの環境の過酷さを示すものです。

死亡率調査では、2歳未満の子どもの死亡率が緊急事態を示す水準を超えていることがわかりました。モーリタニア国内のほかの地域の2~3倍に相当する数値です。とても看過できません!

最も緊急性の高い医学的問題とは?

下痢と重度の脱水症状で搬送され、MSFの治療を受けた少年

A.主に子どもたちが、マラリア、呼吸器感染症、下痢で亡くなっています。特に、5歳未満の子どもではしかの予防接種を受けているのはわずか70%です。

5歳未満の子どものリスクが最も高いのです。以前から衰えていた免疫系が栄養失調とはしかでさらに消耗し、肺炎や下痢などの合併症を引き起こす悪循環に陥るケースが多く見られます。

そこで、集団予防接種をいち早く開始する必要があります。生後6ヵ月から15歳までの子どもの95%以上に接種できると見込んでいます。

栄養失調の原因は?

A.キャンプで配給されている食糧は難民の食習慣に合っていません。動物の乳と肉が彼らの伝統的な食事ですが、それが食糧配給に含まれていないのです。そのため、配給された穀物を転売し、子どものためにわずかな量の乳や肉を購入する母親もいます。一部の家族は、家畜の世話と必要な食糧の確保のため、マリに戻ろうとさえしています。難民の苦境を表す一例です。

状況悪化の恐れは?

A.難民への援助が早急に改善されなければ、悪化するでしょう。食糧支援は、幼い子どもの死亡率低減を後押しするものでなくてはいけません。急性栄養失調から大勢の子どもの命を救うには、食糧支援の再検討と刷新が必要です。各世帯の所得創出を促す活動や、遊牧を行っていた人びとへの家畜の支給などが考えられるでしょう。

ただ、その間にもマリの状況は悪化の一途をたどっています。軍事介入が見込まれており、マリの人びとが帰国を非常に不安視しているのも無理のないことです。いつ帰国がかなうかは明確ではありませんが、今回の危機的事態で既に多くの人びとが苦しめられています。難民の集団入国も途切れなく続いています。だからこそ、難民の生活の質を向上させる、長期的な解決策の案出が重要なのです。

MSFはどのような活動をしていますか?

A.2012年3月に、栄養対策プログラムと医療プログラムを開始しました。いまは診療所2ヵ所と医療施設1ヵ所を運営中です。また、南西部のファサラとバシクヌーにある公営の医療施設2ヵ所の支援も行っています。2012年中に提供した診療は約4万5000件、治療した重度栄養失調児は約1000人にのぼります。

今後は、最もハイリスクな子どもたちを見つけるため、キャンプ内の健康教育チームを拡充し、いっそう力を注いでいく予定です。バシクヌーの村では外科施設立ち上げの準備も進行中です。この外科施設があれば、産科合併症の女性を、200km離れたネマの病院に送らなくとも治療できるようになるでしょう。

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