教育の機会を奪われ、拉致・監禁も......「一晩中泣いていた」ロヒンギャの苦悩なお

2018年06月06日掲載

ミャンマーを逃れ、バングラデシュの難民キャンプで暮らす母子
ミャンマーを逃れ、バングラデシュの難民キャンプで暮らす母子

国境なき医師団(MSF)のスタッフとしてミャンマーで活動していたジャシムさん(仮名)。イスラム系少数民族ロヒンギャである彼は、昨年8月に故郷ミャンマーで起きた弾圧によって難民となり、バングラデシュに身を寄せている。

「私はここで死ぬ」……初めての感情がこみ上げた夜

私たちロヒンギャは、祖国ミャンマーで常に差別され、何もかも制限されていました。その暮らしがどんなに過酷だったか、想像できるでしょうか。

仏教徒は教育を受けられますが、イスラム教徒の子どもには教師がつかず、自分たちで先生を雇っていました。それでも、出身地のベンガル語で勉強しろと言われるのです。2012年以降は、入試に合格しても、ロヒンギャは大学に行けなくなりました。

私が学校で勉強できたのはごく短い間でした。退学させられたのです。バングラデシュで英語を習い、ミャンマーに帰国しました。通訳として人道援助団体で働くのが夢でした。

2012年、MSFがラカイン州北部マウンドー郡にあるプロジェクトで通訳者を探していると聞いて応募。すぐにMSFの心理ケアチームのリーダーになり、その後HIV移動診療チームに加わって、地域の保健担当者に対する研修をサポートしました。

MSFの看護師に付き添われながらキャンプ内を歩くジャシムさん
MSFの看護師に付き添われながらキャンプ内を歩くジャシムさん

2014年、事件が起きました。14歳の長男がブローカーに誘拐され、人身売買業者に売られたのです。息子は34日間、ボートの上で飲まず食わずで過ごし、タイに着くと電話をかけてきました。人身売買業者は2000米ドルを要求してきました。「支払わなければ、息子を漁船に送って二度と会えなくなるぞ」と脅されました。

息子はタイで監禁されていました。1日に与えられるのは水500cc、少しの米と小さな魚だけ。人質が逃げないよう、わざと弱らせるのです。見張りは銃を持っていました。監禁中に多くの人が亡くなり……奴らは遺体をジャングルに投げ捨てていたそうです。

なんとかお金をかき集め、ようやく解放されました。現在、息子はマレーシアで無事に暮らしています。

ミャンマー政府とイスラム教徒との対立で、私も安全ではありませんでした。当局は私を捜索し、3度も家に来たんです。2017年のある日、川に面した自宅から、20人以上が暴行されているのが見えました。その光景に恐怖が募り、同じ年の9月、私は家族を連れてミャンマーを離れました。

ナフ川を越え、バングラデシュにたどり着いたロヒンギャ難民(2017年9月撮影)
ナフ川を越え、バングラデシュにたどり着いたロヒンギャ難民(2017年9月撮影)

バングラデシュに通じるナフ川を目指して、真夜中に小川を渡り、ブッシュを進みました。周りには治安部隊が大勢いました。音を立てないようにゆっくりと、1時間半ほど、トゲだらけの茂みを歩きました。物音を聞きつけられたら撃たれていたでしょう。

ナフ川を渡る20人乗りのボートには、100人を超える乗客がいました。難民受付センターのある島へたどり着き、翌日に難民キャンプのあるクトゥパロンへ出発しました。それは大変な道のりでした。膨大な数の難民が家財を運び、子どもたちは泣き叫び、食べ物はなく、誰もが疲れ切っている。道には大行列ができ、路上でそのまま横になる人もいました。

あの日、これまでの人生で一度も味わったことのない、悲惨な思いがこみ上げました。「私はここで死ぬんだ」と。一晩中泣いていました。

国境を越えバングラデシュに避難するロヒンギャ難民(2017年8月撮影)
国境を越えバングラデシュに避難するロヒンギャ難民(2017年8月撮影)

幸い、難民キャンプにいる親戚がいて、シェルターに泊めてくれました。手狭でしたが、少なくとも屋根があり、路上で寝泊りする必要はなくなったのです。その後、自分たちの仮設住居を建てました。

キャンプ生活は楽ではありません。人口過密で、どこも汚れています。生活必需品が行き渡らず、移動も思うようにはいきません。誘拐や殺人事件も起きています。犯人は分かりません……。でも何より心配なのは、子どもたちの教育です。キャンプでは公的な教育は受けられません。あの子達の未来は台無しにされています。

ラカイン州マウンドー郡での弾圧を逃れたロヒンギャ難民の少女
ラカイン州マウンドー郡での弾圧を逃れたロヒンギャ難民の少女

妻はいつも昔の暮らしを思い出しています。2年前にミャンマーで家を建てたとき、全財産をつぎこみました。状況が落ち着いたら、ぜひ帰宅したい。でも今、帰ろうとする人は誰もいません——まだ大勢が避難してくるような状況で、帰ることができるでしょうか?

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