日本人看護師がガザで過ごした緊迫の3日間 患者の苦しみは今も

2018年05月24日掲載

アル・アクサ病院に救急車が到着し患者が運び込まれる(5月14日撮影)
アル・アクサ病院に救急車が到着し患者が運び込まれる(5月14日撮影)

多くの一般市民が発砲を受け負傷している中東パレスチナのガザ地区。2018年3月30日、パレスチナ難民の帰還を求める抗議行動「帰還の行進」が始まって以来、ガザとイスラエルを隔てる境界線付近ではデモの参加者がイスラエル軍に銃撃され、国境なき医師団(MSF)が活動する病院でも多くの負傷者を治療している。4月1日以降、ガザにあるMSFの病院では24時間体制で負傷者を治療し、800人以上のけが人を受け入れた。

ガザ市民の抗議行動は、在イスラエル米大使館のエルサレム移転によって激しさを増した。MSFは対応を強化し、5月14日だけで30件の外科手術を行った。ちょうどこの期間にMSFの手術室看護師としてガザで活動し、今も現地で治療に当たっている佐藤真史看護師に話を聞いた。

想定しつつも、大変な状況をひしひしと…

ガザで活動中の佐藤看護師 ガザで活動中の佐藤看護師

手術室看護師として5月6日にガザに入り、ガザ市内の3ヵ所の病院で、国境付近で撃たれた人の治療を行っていました。傷を負って2~3日経った人が多く、傷を清潔に保つためのドレッシングなどの処置も含めて1日4~5件の手術をしていました。

5月14日、MSFの別の医療チームが活動しているアル・アクサ病院で大勢の負傷者を受け入れたため、その日自分が勤務していた病院からも医療スタッフが急きょ応援に行くことになりました。ガザ市民が負傷している状況は以前からわかっていましたし、米大使館の移転の話もあって激しい抗議が起こると想定はしていたものの、いよいよ大変な状況になった、と感じました。普段は冗談を言い合っている現地スタッフも、この日はどこか怒っているような、悲しんでいるような雰囲気でした。

あふれる患者、1部屋で2人同時に手術も

アル・アクサ病院で臨時に設置された患者用のベッド アル・アクサ病院で臨時に設置された患者用のベッド

14日、私は勤務していたPFBS病院で、チームで手術をしていました。この日、アル・アクサ病院では大きな部屋に手術台を2つ置いて、2人を同時に手術するような大変な状況だったそうです。廊下にも患者さんがあふれかえっていたと聞いています。

翌日の15日、私もアル・アクサ病院へ合流しました。病院自体はごった返していましたが状況はずいぶん安定し、1人の患者を1つの手術室で対応できるようになっていました。けがは足が中心で、骨折の創外固定や血管をつなぐ手術などを行いました。日本では銃で撃たれたけがなどあまり見たこともなかったのですが、似た症例を思い浮かべながら対応しました。この日は結局、病院に泊まりがけで対応することになりました。

足の切断を覚悟した患者さんが…

アル・アクサ病院の手術室(5月14日撮影) アル・アクサ病院の手術室(5月14日撮影)

現在、状況はすでに落ち着いて緊急事態というほどではありません。でも、患者さんにとってはこれで終わりではなく、術後に何度も処置が必要になります。手術をしたら、今度は身体の一部から皮膚をとって皮膚移植をしたり、感染症を起こさないように処置したり、術後のケアを怠れば、傷が悪化して結局は足を切断しなければならなくなることもあります。1度の手術で治療が終わるわけではなく、まだ続いていくんです。

20代後半くらいの男性の患者さんがいました。最初に運ばれてきたときは片足を撃たれて、かなりひどい状態でした。肉が腐ったような匂いもして……うまくいかなければ切断することになるかも、と思っていました。幸い、手術のおかげで状態はだいぶよくなり、処置を重ねるうちに傷もきれいになりました。当初、彼はとても暗い表情でした。不安だし、しんどかったんでしょう。でも先日の手術のときにはニコニコして、スタッフに「また来たよ」と、人懐こい笑顔を見せていました。傷がよくなって元気も出てくる。患者さんのそういう姿は大きな励みになります。

今も大変な思いをしている患者がいる

状況が落ち着いても、患者の治療は終わらない 状況が落ち着いても、患者の治療は終わらない

5月14日からの3日間は、世界から多くのマスコミがかけつけて報道しました。でも、今はもういません。ニュースは新しいことを追いかけるのだと思いますが、ガザには今もまだ苦しんでいる患者さんがたくさんいます。これから一生、障害を背負っていく患者さんもいると思います。

日本の皆さんには、目新しくなくてもこういう現実があり、今も大変な思いをしている人びとがいることに、関心を持ってほしいと思います。MSFも、少しでも患者さんがよくなるように、これからも活動を続けていきます。

  • ※一部、日付と病院名を修正しました。(6月6日更新)

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