同じ立場だから、苦しみを分かち合える——避難者の絶望を癒すカウンセリングの現場から

2018年04月17日掲載

ジャシムさんと3歳の息子オスマンくん
ジャシムさんと3歳の息子オスマンくん

「心のケアが必要な人を見つけ出すことも私の仕事です。国境なき医師団(MSF)で受けられるサービスを皆さんに知ってもらえるように努めています」

こう話すのは、ジャシム・ハメド(32歳)さん。2014年にイラク中部・ミクダディヤの自宅から避難した。現在は避難民キャンプで生活を送り、MSFのカウンセラーとして働いている。

「2014年7月、自宅付近で頻繁に銃撃や爆撃があり、大勢が亡くなっていました。それで、私は家族を連れて町を出たんです。逃げる途中、何世帯もが殺されるのを見ました。私たちのすぐ後ろを走っていた車2台は空爆に巻き込まれ、乗っていた一家全員が命を落としました」

度重なる爆撃でゴーストタウンと化した町
度重なる爆撃でゴーストタウンと化した町

以来、イラク国内の避難キャンプを転々とした。なかには水も電気も通っていないキャンプもあった。最終的にたどり着いたのが、ここアルワンド第1キャンプだ。

「当時、末っ子のオスマンは生後10日でした。この子が生き延びられるとは思っていませんでしたが、ありがたいことに、ここで無事に3歳を迎えることができました。弟は行方不明です。学校を卒業するために地元へ戻ったところ、誘拐されたんです」

キャンプでの避難生活は4年目を迎えた
キャンプでの避難生活は4年目を迎えた

キャンプ内で活動する他のNGOでしばらく働いた後、MSFの求人に応募した。現在は、イラク国内からの避難者を対象としたグループカウンセリングの運営に携わる。

爆撃で家も仕事も失った。凄惨な場面を目撃し、家族・友人を亡くした……長年の紛争を通して、子どもも大人も心に深刻な傷を負っている。

MSFは心のケアをイラクでの活動の中核に位置づけ、専門資格を持つ医師・心理療法士・カウンセラーのチームを配置。心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ、重度の不安など中~重度の患者をケアしている。

2014年から2015年にかけて破壊された家々。がれきのまま放置されている
2014年から2015年にかけて破壊された家々。がれきのまま放置されている

「避難生活は大変なことばかりですが、特に経済的な苦労は大きい。心に悪影響を及ぼしています。希望を失い、『私の人生は終わった。もうだめだ』と漏らす人もいます」

戦闘を逃れ、避難キャンプに身を寄せる人たちの多くが帰宅できないままだ。破壊された自宅の再建費用はまかなえない。

「コンテナ暮らしに馴染めないという声も聞かれます。家にいるようには感じられず、『まるで監獄にいるようだ』と」

アルワンド第1キャンプからの眺め
アルワンド第1キャンプからの眺め

慣れない避難生活や家計の心配に加え、先行き不透明な情勢への懸念もある。この地域では再び紛争が始まり、人びとは恐怖を募らせる。

「人びとは孤立し、怒りや不安、ストレスを抱えています。子どものなかには、攻撃的な態度やおもらしなどの兆候が見られます」

国境なき医師団 日本さんの投稿 2018年4月12日(木)

MSFはイラク中部ディヤーラ県に位置するアルワンド第1・第2キャンプで、心のケアのほか、慢性疾患の診療やリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の診療を行っている。2018年2月、アルワンド第1キャンプで個別心理ケア診療213件、グループ心理ケア診療287件を実施した。

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