失った足、消えた命。シリアの町に残された地雷が子どもの未来を奪う

2018年04月16日掲載

仕掛け爆弾で負傷した姉妹

「やっと家に帰れる」。シリア北東部で、過激派武装勢力「イスラム国」と政府軍との戦闘が収束し、避難していた市民は自宅へ戻り始めている。しかし、ラッカ県、ハサカ県、デリゾール県では学校や農地など、いたるところに地雷や仕掛け爆弾が残っている。犠牲者の多くが子どもたちだ。早急な地雷除去作業が求められるなか、国境なき医師団(MSF)が支援するハサカ県の病院に、爆発によって負傷した子どもたちの姿があった。

「足が痛いと泣くんです…もうないのに」

片脚を切断した長女のラミスちゃん 片脚を切断した長女のラミスちゃん

「5人の娘たちが搬送されたと言うんです。屋上で遊びながら薪を選り分けていたら、毛糸玉に何かが隠されていて、それが爆発したと」

そう語るフマイドさんは、2人の妻と10人の子どもとデリゾール県ディバンで暮らしていた。武力衝突が起きて町から避難し、状況が落ち着いてから1人で自宅の様子を見に行くと、不審なものは何も見あたらず、家族を連れて戻ってきた。それから2ヵ月後の2018年2月5日、5人の娘が仕掛け爆弾で重傷を負った。そのうち4歳のセダールちゃんは両脚を、13歳の長女ラミスちゃんも片脚を切断した。

「診療所へかけつけ、娘たちの姿を見て胸が張り裂けそうでした。看護師もどうしてよいか分からない様子で、娘の1人は違う血液型で輸血されていました。私はたまらず、医療スタッフに『なんとかしてくれ!』と怒鳴りました。娘が死にかけている。このとき初めて、1人のスタッフがどうにかしようと、ジャケットを脱いで娘の脚に巻きつけました」

シリアでは、専門的な知識を持った医師や看護師が戦争で避難し、その場にいる人がとにかく処置をするしかない。人びとが必要な医療を受けられずにいる状況だ。フマイドさんは続ける。

「娘たちは、応急処置や手術を受け、家に連れ帰っていいと言われました。でもディバンには戻らずハサカ県に来ることにしたのです。2台の車を用意しましたが1台が道中で壊れてしまい、4時間以上かかってようやくたどり着きました。検問も、急患だとわかったのか無事に通過できました。この病院を知ったのはハサカに入るときで、MSFのような団体が支援していて、無料で治療が受けられるとは知りませんでした」

4歳のセダールちゃんは両脚を失った 4歳のセダールちゃん(写真左)は両脚を失った

「セダールを見てやってください。膝から下の脚はありません。それなのに、もうない足に痛みを感じてとまどい、泣くんです。お医者さんたちは娘たちに本当によくしてくれます。そうでなければ、ダマスカスに連れて行っていたでしょう。この子たちのためなら、不可能を越えるつもりでした」

ディバンでは、フマイドさんは治療が必要なときは別の町の病院か民間の診療所に行っていたという。だが、「イスラム国」が来て町を封鎖すると誰も町から出られなくなった。医療施設は空爆で破壊されたり、閉鎖したりしている。再開して複数の診療科がある施設もあるが、まともな機器はない状態だ。

「ディバンに空き地を所有しているので、もしMSFがそこに診療所を建てるなら提供します。地雷をどうにかしてください。除去する人を連れてきてください。子どもたちの命がかかっています」

無邪気なビー玉遊びが惨劇に

腹部に重傷を負ったアリさん 腹部に重傷を負ったアリさん
一緒に遊んでいたナビル君は亡くなった

ライラさんの5人の甥は、デリゾール県クバルの耕地で羊の世話をしていたとき、地雷か仕掛け爆弾が爆発した。5人はハサカ県でMSFが支援している病院に運び込まれた。5歳のナビル君は既に息絶えていた。10歳のハレド君は頭蓋骨を骨折し、12歳の兄アリさんも腹部にひどいけがをしていて、緊急開腹手術が必要だった。8歳のマルワン君と13歳のレドワンさんも軽いけがをした。

「空爆みたいな音がしました。みんなに聞こえるくらいのすごい音です。何が起きたのか、すぐにみんなで駆けつけました。信じられませんでした。1人は脳みそがはみ出ていたのです。子どもたちはビー玉で遊んでいただけなのに……」

「子どもたちを車の後部座席に乗せて、15kmほど離れたハワスの診療所に連れて行きました。アル・カスラにも診療所がありましたが、医師はいなくて、看護師もほとんどおらず、まともな機器もないので軽いけがしか治療できないと聞いていました。公立病院は改修が進んでいると聞きましたが、実際には壁にペンキを塗り始めただけです」

「子どもたちはハワス診療所で応急処置を受け、包帯を巻いて点滴をぶらさげたまま、おじがハサカ県に連れてきました。着いたときには夜の7時か8時になっていました。このおじは、MSFの病院のことを少し知っていました。無償で治療してくれるし、外国人の医師もいると。私たちはレンタカーで後を追いました。この旅に2万7000シリア・ポンド(約5600円)を払いました」

5人の甥のうち、腹部をけがしたアリさんと軽傷の2人は1週間で退院した。頭にけがをしたハレド君も、専門の医療機関で神経外科手術を受け、家に帰ることができた。ライラさんは「最近、似たような話を10件も耳にしています」と語る。

ハサカの病院では4ヵ月余りの間に133人が地雷や仕掛け爆弾による負傷で治療を受けた。半数は子どもだ。
ハサカの病院では4ヵ月余りの間に133人が
地雷や仕掛け爆弾による負傷で治療を受けた。
半数は子どもだ。

「即死だった人もいます。クバルの町はここ5ヵ月ほど落ち着いていますが、イスラム国が埋めた地雷だらけ。たいていは玄関の門の近くに埋められていました。何かに隠されていることが多いので、特に気をつけていました。専門の団体に地雷を取り除いてほしい。もう3月で、春です……。爆発は怖いけれど、羊を野原に移して草を食べさせてやらなければいけない時期なんです」

  • (文中の名前はすべて仮名です)

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