パレスチナ:兵士が突然、家に......(上)

2013年04月08日掲載

パレスチナでは、イスラエル軍や入植者による嫌がらせや移動制限が"日常"となっている。また、パレスチナ人の分派間の暴力的な争いも頻発している。その結果、心の健康を害している人が多く、特に子どもへの影響が深刻だ。国境なき医師団(MSF)の心理ケア・コーディネーターであるマリア・クリストバルに、イスラエル占領下で育った子どもたちを心理・社会面で支援する際の困難を聞いた。

パレスチナ:兵士が突然、家に……(下)はこちら。

記事を全文読む

徹底した監視体制下の生活

イスラエル軍が初めてヨルダン川西岸地区を占領した1967年以来、同地区には大規模な軍隊が配置されてきました。地元住民を管理下に置くために考案された複雑な制度は今、西岸地区とイスラエル側とを隔てる壁の向こうにまで拡大しています。

パレスチナの人びとは毎日のように、検問所・抜き打ち検査・道路封鎖という一連の流れを切り抜けなくてはなりません。しかも、軍の監視塔から、常に見張られているのです。

一方、イスラエルによるこの地域への入植(国際人道法に基づけば違法なものですが)は、雨後のたけのこのように広がってきました。西岸地区で最大の人口を有するヘブロンには複数の入植地があります。そのうちの1つは古くから町の中心で、800人の入植者がイスラエル軍の厳重な警護を受けています。

パレスチナの人びとにとって、イスラエル軍や入植者からの嫌がらせ、移動制限、パレスチナの分派間の暴力的な争いが"日常"になっています。そのために、恐怖、絶望、焦燥感にさいなまれる人が大勢います。心の健康への影響も深刻です。特に子どもの場合、その影響の表れ方も深刻になりがちです。

自宅に武装兵・催涙ガス・軍用犬

MSFは10年以上前から、西岸地区で心理ケア・プログラムを運営しています。患者の半数以上が、紛争に関連する暴力にさらされた経験を持つ子どもたちです。

最も多い例はイスラエル軍による住居への踏み込みです。国連発表では、週平均60件以上発生しています。兵士は夜間に非常線を張り、住民の家に押し入って活動家を捜索するのです。

住居への踏み込みは攻撃的かつ暴力的なことが多く、武装兵、催涙ガス、軍用犬が投入され、家財が破壊されます。捜索された世帯の誰かが拘置所に連れて行かれることも少なくありません。こうした出来事で家族が経験する屈辱や無力感は非常につらいものです。

精神的に痛めつけられる子供たち

心理ケアの一環で子どもが描いた絵には、
兵士、爆弾、流血などが描かれている

MSFの心理ケア・プログラムの対象となっている子どもたちも、その多くがこうした住居への踏み込みを経験しています。その結果、孤独感、夜驚症、恒常的な警戒心、攻撃的な行動など深刻な影響に苦しんでいます。

おねしょをしたり、言動に変化が生じたりもします。常に緊張が続き、疲労、鈍痛、疼痛(とうつう)、睡眠障害、食欲減退といった身体的な不調が引き起こされることもあります。子どもとその家族にとっては一大事だと思いますが、これは自然な反応なのです。ただ、治療が遅れれば、発育にとって取り返しがつかない影響を及ぼす恐れもあります。

子どもたちは、イスラエル軍による住居への踏み込みの目撃者というだけでなく、横暴な行為の直接の被害者です。イスラエルによってパレスチナ自治区に課せられた軍法に従えば、満12歳以上は刑務所に収監される可能性があり、16歳以上は成人として扱われます。拘留・取調べ・収監中の未成年者が、イスラエル軍から深刻な虐待を受けている証拠を、国連児童基金(ユニセフ)などの機関が公表しています。(つづく)

関連情報